3位決定戦。雨だ、風だ、雷だ! と自然の猛威に晒され中断すること48分。お隣神宮での、雨に弱いはずの競技による伝統の一戦が普通に続けられたのは色々今後の課題はあるかも知れないが、なんとかフルタイムで決着はついた。その結果、リーグワン発足から過去の3季は全てファイナルに進んだ野武士が4位に沈み、西の鉄人が2018-19年シーズンのトップリーグ制覇以来6シーズンぶりのトップ3に返り咲いた。

 

互いに幻のトライありという後味の悪さはあった。15-17のビハインドで迎えた後半25分の鉄人のノーグラウンディング、野武士の逆転と思われた後半34分のノックオン→ノートライ。鉄人がノートライ判定後の敵陣ゴール前タップスタートからしっかり逆転したのに対して、野武士は残り時間の少なさもあって、仕留め切れなかったのが5点差という結末になった。

 

もちろん勝負を分けたのは、他にも理由がある。

勝者からみれば、一つの象徴的なプレーが後半17分にあった。ノートにはこう殴り書きした。

 

「57min ワサ セービング!」

 

野武士が4分前の〝エース〟マリカ・コロインベテのトライ(ゴール)で14-15と迫る中で、ミッドフィールドのイーブンボールに凄まじいスピードでセービングに入ったのが〝ワサ〟こと38歳の#9日和佐篤だった。勿論、その時間帯からも野武士もスコアチャンスを何度も掴み、実際に一度は17-15とリードを奪うPGも獲得している。だが、この火の出るようなセーブが、逆転無双の野武士の反撃を数分遅らせ、結果的に5点のビハインドを守り切った要因になった。

 

雷中断のとばっちりで、3決戦の後に設けられた決勝前日会見を優先したため、この38歳のハッスル38歳のハナシは聞けなかったが、この日のような伸るか反るかの死闘のときこそ、経験豊富な「オジン(失礼!)」の役割があると痛感させられたプレー。鉄人にはこの38歳に加えて、34歳でフルタイム献身的に動き続けるLOブロディ・レタリック、気の利いたパスでアタックラインを操る〝ティム〟ことCTBラファエルティモシーと、頼りになるチームオジンが居並ぶ。彼らの勝負どころという状況での体を張ったプレーが、チームを鼓舞し、戦うためのテンションを緩めない。

 

対する落ち武者になってしまった野武士は、序盤から僅かながら無理なパス、ハンドリングミスで、攻撃権を手離すシーンが目につく。もっと無理せず、余裕と忍耐力を持ちながら攻撃を続ければ、まだまだ粗さがある鉄人の綻びを突ける機会があったと思われるが、どうしても気持ちがゴールラインに向いてしまっているような印象。若干メンバーリストに〝手を入れた〟影響が、いつもの余裕の無さに繋がったように感じたが、皆さんどう観ただろうか。

 

正直にいうと、失礼ながら今季の鉄人は、地力としてはトップ4よりすこし下位だと感じていた。このレベルのチームのスタンダードを考えると、フィジカリティーや攻撃力は十分に渡り合える一方で、プレーの精度、遂行力という部分ではどうかと感じてきた。先に触れたオジングループと新しい世代がミックスされたのが今の神戸。「有り余るパワーと同時に、どうしても粗さがあるチーム」。僭越ながら、そんな見方をしてきた。すこし意地悪に書けば、4強常連のサンゴリアスの苦闘、そしてQFでレヴズ自慢のスクラムを〝戦う課長〟山下裕史らFWがガッチリと受け止めたことが、3位ジャンプアップに繋がったと感じている。

 

その粗さを残す中で、スタメンで半数の「オジン」以外の若手が準々、準決、3決という一発勝負の修羅場を経験して、尚且つ準決以外で勝ち試合を体感出来たことが、来季以降への大きな財産になるはずだ。勿論、3位で臨む来シーズンのシード(組合せ振り分け)でも恩恵はあるだろう。古豪・神戸の本当のトップ4以上のバトルは、来季から始まる。

 

個人的には存在自体疑問を持つ3rd Finalだが、十分に見応え、ゲームや選手の〝ヨミ応え〟のある80分だった。その一方で、この土曜日は3決戦の後に決勝前日会見も準備されていた。冒頭に触れたように、長い〝空白〟のとばっちりもあって、試合後の取材対応と、前日会見が重なってしまう異常事態。秩父宮のミックスゾーンでの取材を泣く泣く諦めて、国立会見室での前日会見へ赴いた。以前にも何度か触れたように、防御のスピアーズvs攻撃のBルーパスの様相だが、会見のHC、スキッパーは揃って「自分たちのラグビーが出来るか」を焦点に挙げた。

 

 

興味深いのは、互いに指揮官が決して短期間とはいえない時間を使って、チームの文化やストラクチャー、スタイルを築き上げてファイナルに辿り着いたこと。効率ではなく、じっくりと土台を創り、勝つための肉付けをして、最高峰の舞台に戻って来た。

 

2025年6月1日国立。チケットセールスは5万枚を超えている。フルキャパシティ67750席の器としてはあと一歩だが、実は夏の世界陸上等の準備で、使用不可の席もあるための数字でもある。使用可能な座席からの換算では、かなりの席が埋まることになるシーズンファイナル。この舞台が、一昨季のスピアーズ、昨季のルーパスから、さらに分厚い戦闘装備を肉付けした両雄による、過去最高の80分になると期待して、15:05のキックオフを待つ。