キックオフが刻々と近づいている中で、桜のジャージーについては諸々報じられているので、今回は対戦相手について。いつもの試合後のコラムの前打ちとして。

 

来日は6シーズンぶり、日本代表との通算成績対戦は1勝5敗となるジョージア代表〝レロス〟。試合会場ユアテックスタジアム仙台での前日練習は、公開された開始15分のほとんどはボールを持たないメニューに終始した。ここらへんは〝世界基準〟のようなもの。その後の日本はほとんどどころか、全てボールなしのメニューしか見せなかのだが、ビジターで残念なのは、前日練習以外一切取材対応をしないなどシオさ加減はこの国らしい。取材に対応できるスタッフがチームに合流していないためという説明は聞いたが、むしろ「やる気」の問題だろう。

 

唯一の救いはこのチームで最も注目する選手の1人、FBダヴィト・ニニアシュヴィリが、同じく注目のNo8ベカ・ゴルガゼ主将と共に練習後の取材に応じたこと。こちらは、リクエストが叶った。代表デビューして4シーズンの21歳だが、その名は世界に響き渡る。もちろん、ニュージーランドにも、おそらく日本にもいない俊足のせいだ。

 

会見では、こんなやり取りをした。

 

よ 「おそらく明日ピッチに立つメンバーの中で最も足が速いはずだが、そのラン能力はラグビーで鍛えられたのか、それとも他のスポーツの影響か」

 

ハ 「それは分からないなぁ。母親か父親に聞いてみないとね」

 

さすが、すり抜けるのが仕事だけあって少々肩透かしを食らったが、コチラも落ちとしてこんな締め方を。

 

「じゃ、お母さんに電話で聞いてみるわ」

 

 

 

 

飄々として、すこし軽い感じはまさにWTBらしいキャラが、対照的に主将のべカは、誠実に、雄弁に思いを語るタイプ。フランスTOP14ポー(セクシオン・パロワーズ)パウでプレーするスキッパーへの質問で、同じフランスで昨季プレーしたNo8テビタの名を挙げると、通訳を待たずに反応していた。

 

「良く知ってますよ。ボルドーベグルでプレーしているいい選手で、ボールキャリーも優れている。明日、彼とフィジカルなチャレンジをするのが楽しみです」

 

ジョージアファン?はゴルカゼという名前に、この国の英雄で同じNo8として活躍したマムカを思い出す輩もいるかも知れないが、綴りがわずかに違う。それでも、似て非なる苗字のお男が、レロスの8番を背負って世界にインパクトを発散しているのは興味深い。

 

スーパーフィジカルなジョージアでも核になるベカだが、やはりテビタの存在は認識し、警戒感を抱いている。発言からは、このエリアでのバトルで優位に立つことが、ジョージアにとってゲームを支配するためには不可欠だという思いも、フィジカルゲームへのプライドも感じさせられた。

 

ジョージアといえばスクラムに命を懸けるようなチームだ。実際にトビリシを訪れたときも、バス停の高さ2m幅3.5m程の巨大な広告がスクラムのどアップというのに、この国のラグビーの真髄を感じさせられた。だが、ダヴィトのようなスピードスターが台頭してきたのと取って代わるように、あのティア1チームも悲鳴を上げるようなプッシュが見られなくなってきているのも現実だ。

 

べカも、スクラムについて振られると「やはり統計的にも、経験的にも、たとえばフランスリーグでもジョージアの選手というとPRが多い。PR生産工場ともいわれています。そんな海外のリーグでジョージアのPRがプレーしていれば、子供たちは憧れるでしょう」とは語っているが、続けてこう指摘しているのが〝いま〟のジョージア代表の姿だろう。

 

「でも、私たちには隣のダヴィトが証明するように、肉体的に強いのと同時に俊敏でスピ―ドのある選手も、フランスで活躍しています。なので、子供がPR憧れるのは嬉しいが、今後は違うポジョンでも活躍する選手いるんだというところを見てもらって、他のポジもいいなと思ってもらえるといいですね」

 

 

 

 

イングランド代表で、エディーの下でコーチも経験したリチャード・コークリルHCは、日本戦への期待感をこう語っている。

 

「エディーは非常に経験豊富な指導者です。一緒に仕事をしたことは自分にとっていい経験ですし、沢山のこと学びました。日本は明日、非常にスピードのある、ダイレクトなプレーをしてくるでしょう。おそらく日本側から見ると、我々はスローなラグビーに見えると思います。そこで、私たちを凌ぐようなボールの動かし方をしてくると思います。でも、我々もしっかりと戦略を持っています。日本の戦略をさらに塗り替えるようなゲームで、明日は日本のやりたいことではなく、自分たちがやりたいプレーをして、勝つチャンスがあると思っています」

 

戦績を見ても日本が優位かも知れない。だが、指導したばかりで、新しいスタイルに取り組んでいる最中の日本だ。伝統のジョージアFWに重圧を受ける可能性もあるし、変貌しつつあるダヴィトを中心とした攻撃力は油断できない。BKに走り負けるようなストーリーは要警戒だろう。

 

そんな指揮官は、レロスの〝いま〟にも触れている。

 

「昨秋のワールドカップで、キャリアの長い選手が沢山引退したので、いまのジョージアは若い選手を加える転換期です。この国の競技人口は多くない。でもその中でU20は非常に優れた強化システムを持っています。ですから明日は、そういう若い選手と一緒になって、試合通じて何をすればいいのかということを理解していきたい。試合でいいパフォーマンスするためにはどうしたらいいのかを、こういう限られたテストマッチを通じて作り上げていくことを学ぶ必要があります。そして勝つにはどうすればいいのかということを身につけていきます。HCとしてやるべきことは沢山あるが、就任した時点で、既にジョージア代表には非常に優れた基礎があった。その基礎を生かしながら、どんどん経験を積んで学んでいきたい。

 

〝基礎〟という言葉に納得させられるのがレロスというチーム。U20がイタリアを倒すなど、この国の中で何かが変わろうとしている。その恵まれた資質を、どこまで仙台で発散できるか。勝敗はもちろんだが、新生ジャパンも含めて両チームのパフォーマンスが楽しみなテストが近づいている。