ラグビー界の関心が、これから宮崎に集まる人たちに傾く中で、すでにシーズンを終えたチームについてのコラムを上げた。

 

このチームの勝利を書く上で何をテーマにするか――そう考えた時に、ピッチの上で起きていた現象を考えると、実はプレーオフ前にアップしたトッド・ブラックアダー、リーチマイケルのインタビューを軸としたコラムに、その要点はかなり語られている。

 

あのコラムの中で彼らが語っていたことの一部が達成されたのが、Finalでの〝下剋上〟だったと、あらためて感じさせる戦いぶりだった。

 

では、結果が出た後は…。フォーカスすべき候補を幾つか思い浮かべた挙句に、結局「10」についてのおはなしに決めた。すこし定番? とも思ったが、それは、決勝翌日の「アワード」での、彼とのやり取りにインパクトを感じて決めた。

 

 

 

 

 

来日前、つまり昨秋のサンドニまでは、能力の高さを認めながらも、この「10」は個人的にはそこまでオキニでもなかった。だが、毎週のように直接観続けることほど、そのプレーヤーの秀でたものを実感させられる機会はない。シンパシーを感じるのも認めざるを得ない。これは野武士で輝いたベリック・バーンズ然り。

 

魅せられたのは、実は持ち味のパス、ラン、キックを駆使したアタックではなく、防御の献身さ。キゥイならではの戦況をいち早く読み取り、他の選手より先に行動を起こす才覚を、しっかりと危機察知能力でも生かし、素晴らしいフィールディングからカバーディフェンスを見せる。準決勝後のぶろぐでも紹介した、自陣ゴール前の窮地を救う16秒間で2発刺さったタックルが象徴的だ。この16秒の至極の防御は無理かもしれないが、彼が今シーズン見せた献身さは、そのアタック能力に比べれば日本の選手誰もがマネできるプレー。つまり、日本選手はまだまだ学ぶべきものが残されてい

る。

 

 

▲かなりピンボケの試合後の一枚。あまりにもいい光景だったので

 

 

そして、アワードでの「酒」のはなし。この小さなゲームメーカーが、溢れるように持ち併せる才能とスキルだけで世界最高レベルの「10」に君臨するのではないことが、僅か数分のやり取りでしっかりと理解できた。酒を起点とした、深い人間関係を築くことの重要性の話だ。そこらは、しつこ過ぎるほど行数を使ってしまったコラムでどうぞ。

 

付け加えると、この10番がチームとの絆をここまで作れたのは、間違いなく35歳のスキッパーの存在があったからだろう。リッチーの中には、彼がようやく十字軍のシャツに手をかけた時代、ハミルトンで暴れていたこの男の記憶もあるだろう。そして、間違いなくこの男が持ち併せる、キゥイと日本をミックスしたような人間性。人懐こく、すこしいい加減で、それでも実直-。こんなキャラクターが、世界最高の「10」にも、耳を傾ける価値のあるリーダーと認めさせたはずだ。

 

 

▲府中市への優勝報告で原田衛副将、立教大ラグビー部主将だった高野律雄市長

記念撮影するリーチ。このキャプテンの存在がなければ、モウンガの貢献も…

 

 

スキッパーの話は、先に触れたプレーオフ前のコラムで散々書いたので、今回は極力割愛して10の物語りになった。

 

次回予告のようでいやらしいが、週明けには、同じチームの、サイドラインの外側からチームの再興をプッシュした〝ボス〟に話を聞いてくる。