決戦前日は、ファイナリスト2チームの監督・HC、主将が登壇して、会場となる国立競技場での会見が行われた。

 

オンラインでの参加も可能だったが、対面して聞きたいこともあったので、明日もお邪魔するデカい器に足を運んだ。

 

最近〝悪化(と評していいのやら…)〟の傾向が続く、イマイチ質問が殺到しない会見スタート。そんな様子(本音は〝新聞記者〟にどんどん質問してもらいたいのだが)をみて、最初に両指揮官に、こんな質問をしてみた。

 

「スタッツではワイルドナイツが他チームを圧倒して、ブレイブルーパスが続いている。だが、ラグビーは数字で勝つわけじゃない。どんな部分に優位性を持って、決勝を戦い、勝つのか」

 

先ずはリーグ戦1位、そしてルーパス率いるブラックアダーHCの恩師でもあるワイルドナイツのロビー・ディーンズ監督が話し始める。

 

 

 

 

「まず、優位性はないと思っている。自分たちがここまでやり遂げてきたことについては、自信を持っているが、通過してきたものと決勝戦でクオリファイするべきところがある。それは運で獲り切れるものでもありません」

 

ロビーさんにしては比較的シンプルなコメントだが、全く数字は関係なく、ここまでのゲームも決勝で勝つことには何らプラスにはならないとしながらも、自分たちの積み上げてきたものには、揺るぎない自信も示す。

 

「選手の視点で話すと、自分たちがやり遂げてきたこと、リーグ戦での経験は、この舞台で生かすことができるはず。で、その反面、決勝戦は0-0からのスタートです。自分たちが優位に進めると思って臨むと、逆に痛手を負うことになる。プレーオフというのは、リーグ戦とは別ものだし、勝者が全てを奪い取るゲームです」

 

質問する段階で織り込み済みなのだが、どこに優位性を感じているかに対する明確な返答はナシ。しかし、もう10年近くこの名将を取材してきた身としては不満も異論もない。ロビーさんらしい回答だ。

 

会見でのQAをさらに辿ろう。監督、キャプテンとしてクルセイダーズの黄金時代を築いたブレイブルーパスのトッド・ブラックアダーHCは、こんなコメントだ。

 

「(スタッツは)両チームに強み、弱みが当然ありますが、両チームがしっかりと決勝へ準備をしてきています。なので、決勝が楽しみです。ここまで順調にシーズンを戦ってきて、最高潮を迎えることを楽しみにしています」

 

 

 

 

ロビーさん同様だ。以前にも何度か触れてきたが、インターナショナルレベル、そして特に、この常勝軍団のOBたちは、ゲームに関わることについては、そのほとんどを語らない。何か不用意な一言が、相手に自分たちを崩すためのヒントを与えてしまう可能性は完全に排除する。そんな慎重さが際立っているのだ。

 

ちなみに、この質問への〝答え〟は、既にプレーオフ前のコラムに書いてあるので、暇ならそちらをご参考に。

 

興味深かったのは、ロビーさんが観衆に触れていたことだ。リーグ側でも、すでに5万以上のチケットが売れていることは明かしていたが、57000枚超えも期待されている。過去の最多は昨季決勝の41794人。総観客数も過去最多をマークしたシーズンは、1試合の集客でも最多記録を樹立するのが確定的だが、指揮官は質問されたのでもないことに、こう言及している。

 

「観客は57000人ですか。これだけのファンが見守る舞台に立てるのは嬉しいことです。2019年のワールドカップ日本大会後のシーズンは沢山の観客が集まってくれたが、そこからコロナの影響を受けて日本のラグビーは勢いを失ってしまった。いま、その勢いが戻ってきているのが素晴らしいことです。その背景には日本のラグビーの質が良くなっていることがあると思います」

 

すでに日本での指揮が長いロビーさんだが、協会、リーグ、そして日本の関係者が重要視する観客数に、こうして踏み込んだコメントをしている。ニュージーランドでも歴史的な勝利を積み上げてきた名将にとっても、日本で、国代表でもない2つのクラブが6万人近いファンを集めるという現実を感慨深く受け止めている。

 

リーグワン、前身のトップリーグ、そしてさらに前身の全国社会人大会――覇権を争ってきたこれまでの決勝の中でも最高峰の戦いが期待される2023-24年シーズンファイナル。絶対的な強さで駆けてきた野武士軍団に、2009年シーズン以来の頂点獲りに挑む群狼がどこまで喰らいつくのか。

 

後は5.26 15:05のキックオフを待つのみだ。