このぶろぐを読むのは、セミファイナルウイーク開幕の朝でしょうか?

賞味期限1、2日というものを、キックオフ前の深夜に書いておいた。

 

いよいよシーズン佳境の4強決戦だが、16日にはワイルドナイツ、イーグルス、17日にはブレイブルーパス、サンゴリアスと対戦カードごとにそれぞれ30分ほどオンラインでメディアに対応している。

 

まず、18日に対戦する2チームから。圧倒的な強さでリーグを1位通過したワイルドナイツ。監督のロビーさんに自信のほどを聞くと、こんな話をしてくれた。

 

「選手たちに話したのは、自分たちのベストを尽くしてほしいということ。シーズンスタートからこの日のために準備をしてきたということも話したし、選手は先週(最終節か?)もハードワークをたくさんしてくれました。なので、そのハードワークのリターンが欲しいですね。努力した分 見返りを取りに行こうというところです」

 

見返り。いい言葉です。このチームには特に。ゲインラインを容易に越えさせない分厚く、しぶとい防御、そしてボールを奪ってのカウンター。この必殺パターンは、このチームの伝統だが、アタックに転じたときの切り返しからの速さ、そして分厚いサポートは、昨季以上のクオリティーをみせる。

 

そして唯一の全勝でここまで勝ち上がってきた大きな要因は、集中力か。

今週アップしたコラムでブレイブルーパス戦の数値を紹介したが、自陣で反則を犯さず、敵陣で相手のミスを誘う。この集中力が、他チームの追随を許さない。単なるラインブレークやボールキャリーという数字では語れない奥深さを感じさせる。

 

一応、参考までに、こちらのコラムも張っておきますが、フォーカスはリーグ戦の振り返りと、準決勝を飛び越えてファイナルに当ててしまっている。それほどに、今季の「1位」は強い。

 

 

 

 

 

坂手淳史主将の言葉もいい。

 

メディアからは、何かに取り憑かれたようにイーグルスの〝秘策〟について聞かれ続けてきたが、こんな対戦相手へのリスペクトを語っている。

 

「イーグルスというチームとして、近年力を伸ばしているという印象が大きいです。トリックプレーだったりに目がいきがちですが、ゼネラルなプレー、ボールキャリーやサポートとか、 選手層だったりもよくなってきているので、そこに脅威を感じています。 トリックプレーをしてきても来なくても、しっかりアジャストしていく準備をウチとしてはしている」

 

小手先のプレーではない、沢木監督とチームが毎シーズン積み重ねてきたチームの底力を、このリーダーは、自分自身の目でしっかりと見極めている。チャレンジャーにとっては、こういう眼差しを持った対戦相手はやり難いはずだ。

 

では、そのイーグルスはどんな腹積もりだろうか。注目?の沢木敬介HCだ。

 

「まずは、先制パンチを相手に喰らわせるような状況を作れるようにやってます」

 

この指導者らしい科白にブレはない。今季2戦2敗、圧倒的な実力を発揮し続ける相手のイメージを聞いてみた。

 

「パナは、ただずっとボール持ってるだけじゃ崩せない。なので、いかに崩れるタイミングをしっかり見計らっていくか。そうプレイしないといけないと思いますし、自分たちがアタックの形をうまく機能させられるバランスになれば、まぁ崩せるチャンスもあるかなと思いますね」

 

その崩れるタイミングを見逃さずに攻めるためにも、理想をいえばSHファフ・デクラークが必要だったが、この判断、見極めは指令塔・田村優くんに任せることになりそうだ。そこに第2指令塔を担うFB小倉順平、そしてボールキャリーで〝槍〟となるCTBジェシー・クリエルが、どこまで機能するのかに期待したい。

 

スタッツを見てイーグルスが興味深いのは反則数。昨季リーグ戦での順位で比べると12チーム中3位と変わらないが、181個から143個へと大幅に減らしている。リーグを総じて反則数が減っているのはコラムでも触れたが、このリーグ1、2を争うアタッキングチームが、ディシプリンのエリアで勝つための要素を身に着け始めているのは注目したい。チームは熟成期の門戸をようやく開き始めたという段階だろうか。

 

CTB梶村祐介主将も冷静に相手を見つめている。スピード勝負をしたいイーグルスには、間違いなく自慢の防御力で、接点にプレッシャーをかけてくるだろうワイルドナイツに対して「ブレイクダウンは、すべてボールキャリーから始まる。なので、まずはそこでしっかり1人ひとりが個人で相手のことをブレイクスルーしていきたい。後は、相手はいいジャッカラーが揃っているので、いかにセカンドマンが戦えるか重要」。このコメントを、いかにリアルに実現できるかが、ゲームを過去の2戦以上に戦えるかのポイントになるかも知れない。

 

日曜のゲームに目を向けると、こちらも直接対戦では2戦2勝と、2位ブレイブルーパスが優位に立つ。

 

参考に張り付けたコラムも、ルーパス目線で書いたものだが、散々インタビューさせていただいたトッドHCにあらためて、こんな質問をしてみた。

 

「以前聞いたときも、選手層、リーダーシップ、一貫性に力を注ぎ、チームも成長していると聞いたが、今季そこが出来てきているのは積み上げてきた時間が理由なのか、それともリッチー・モウンガらトップ選手の加入が影響しているのか」

 

指揮官は迷いなくこう語っている。

 

「従来から当然リーダーシップを育てるプログラムというのはやってはいましたが、今シーズンのチームで特に昨季までと違うのは、選手たち自身が、自分たちでどういうゲームをしたいかというところに責任を持って推進しているというところです。今シーズンも、途中までは主にコーチが引っ張っていくようなことも多かったが、終盤からは逆に選手たちが自分たちで引っ張っていこうという姿勢が見られるのです」

 

 

 

 

コーチからの指示で動くのではなく、選手が自分たちの意思や判断を持ち、チーム作りを進めている。ここは、コラムの中でリーチ主将が語った部分と同じだが、一時の低迷から浮上したブレイブルーパスが、ようやく「勝つチーム」というステージに踏み込んだという印象だ。リーグ戦では、まだまだ不用意だが致命的なミス、反則など、ワイルドナイツとの差を感じさせる要素もあったが、選手の意識の高さなどは、最強チームと同じステージに踏み込んでいるように感じる。あとは、どこまでブラッシュアップできるかという段階だろう。

 

では、今季3度目の〝府中ダービー〟で初勝利を目指すサンゴリアスは、どんな思いで挑むのか。

 

まず、適切な判断と感じさせたのは、メンバー編成だ。

SHは控え選手なしの齎藤直人独り。流大のコンディションが不十分で無理をさせられないのが最大の理由だが、このメンバリングが評価できるのは、ベンチメンバーのFW、BK比だ。FW6人に対してBK2人と、過去2度の対戦でも重圧を受けたFWをボリュームアップしているのだが、田中澄憲監督はSH の代わりにFWを1人追加したのではなく、SHの欠員の位置にBK選手を入れたという。つまり、流くんの出場可否に関わらず、FWは最初から6人をリザーブに入れようと決めていたのだ。

 

3週間前のブレイブルーパス戦を観ても、27-36という最終スコア以上に序盤戦からサンゴリアスは接点で重圧を受け、自分たちのテンポでのアタックが出来ない状況だった。ここを、勝負の主導権争いが続く前半途中までの時間帯で流れを引き寄せるには、接点や、その起点ともなるセットピースで、相手の重圧にどこまで受け止め、自分たちの求めるテンポでボールを動かすことが出来るかが生命線になる。この試合の勝負ポイントは、1人しかいないSHやスピードではなく、接点でどこまでチャレンジャーが戦い、相手の重圧に抗うことが出来るかだ。

 

 

 

 

そこで惜しまれるのは、やはり流大の不在だ。田中監督は「ワールドカップの時も、流が怪我をして(齎藤が)9番を背負って戦ってきた。今までなら(齎藤)直人がフィニッシャーとしてテンポを上げる役割だったが、そういう経験もあってゲームの流れだったり、どっちに主導権があるかという判断などをゲーム中に考えるようになったと思う。流はパスだけじゃなくてキックでもゲームをコントロールするのが上手だが、直人もそういうところを意識して今シーズンはプレー出来ていると思うので、その辺については問題がないかなと思います」と斎藤直人への期待を語ったが、本音はどうだろうか。

 

数日前に単独インタビューをしたリーチマイケル、そして、今週とあるところで立ち話をした、元東芝&日本代表SH藤井淳も口を揃えて、流大の不在は勝負に大きな影響を及ぼすと話す。スキルでは国内トップクラスの齎藤直人でも、勝負どころでの、どのラックからは四の五の理屈なしに超速のパスでボールをSOに持たせるか、ここは一拍置いて大丈夫なのかという瞬時の判断、嗅覚、視野の広さでは流大に及ばない。このベテランSHの不在、そして契約延長は決まったが実戦復帰は難しいFLサム・ケイン、長期離脱のショーン・マクマ―ンといったブレイクダウンで重要なパーツになるコア選手を欠く中でトップ4まで勝ち進んできたこと自体は賞賛に値する。

 

後は、ボールキャリーで威力をみせるCTB尾﨑泰雅、イザヤ・プニバイが、どこまでルーパス防御を崩し、復帰組のチェスリン、そして松島幸太朗、尾﨑晟也の〝是政フェラーリトリオ〟がインゴールに辿り着けるかが勝負になる。