週末のおさらいを書いた直後に、ポリネシアから素晴らしいゲーム中継が届いた。

 

少々ディレイで観戦したが、優勝候補に競り勝っての開幕2連勝。次戦の相手トンガAとの戦績、彼らの実力を見ても、桜の蕾たちは2大会、4シーズンぶりの王座を大きく引き寄せた。

 

今シーズンからU23編成という条項が明示されたため、プレーをみると相手のウォリアーズも若干若さを感じさせるチームではあった。だが、さらに若いU20ベースの桜の蕾の戦いぶりは評価するべきだろう。

 

立ち上がりから一気にギアをフルスロットルに上げたオープンラグビーに、大久保直弥HCの思いが滲む。〝ボス〟に当たるエディーからの直接の進言はないと聞いたが、それでも元日本代表のフィジカルリーダーは「超速」を体現するようにスピード勝負に賭けてきた。ポッドを使い接点で連続フェーズを作るより、ボールを大きく動かし、スピードを駆使してギャップを突くラグビーを徹底。このスタイルでは強みをみせるFB矢崎由高(早稲田大②)が、この試合では、いきなり左ワイド展開から相手防御を駆け抜けた。

 

このスピード感溢れるアタックに、アンストラクチャー大好きなウォリアーズも応戦したが、前半のジャパンが主導権を握る展開の中で評価するべきは、スピードアタック以上に防御だったという印象だ。

 

フィジカルや個々のサイズで世界トップクラスのフィジアンたち相手に、ダブルタックルはもちろんだが1対1でも立ち向かい、接点で戦えたのは大きい。タックルポイントも、日本伝統の膝下ならフィジー得意のオフロードで繋がれまくったはずだが、腰骨のラインに刺さるような絶妙の高さへのヒットが効いた。あれ以上に高ければ、強靭なフィジアンの上半身に弾かれ、状況次第ではハイタックルを取られるリスクがあったが、20歳前後の大学生たちはスキルをしっかりと仕込まれていた。

 

もちろんフィジアンの身体能力に、何度も突破され、乗っかられたシーンは少なくなかったが、ボールをリサイクルされても、1対1のヒットで確実に相手の球出しを遅らせることで、次のフェーズでの致命的なブレークを回避していた。ここのコーチングは、現役時代フィジカルコンタクトで体を張って世界に挑んできた指導者の個性も反映されていたのだろう。この試合に関しては、目の覚めるようなアタックの連続以上に、この前半指導権争いの中での防御を称えたい。

 

そして、アタック面では、こらから「ジャパン」と名乗るチームが忘れてはいけない強みを蕾たちが見せてくれことも価値があるゲームになった。立ち上がりからの目の覚めるようなフルスロットルの連続アタックで、終盤に猛攻を重ねながら南太平洋の大男たちは、明らかに足が落ちていた。それが、最後まで諦めずに攻めたヤングジャパンの逆転の伏線になったのは明らかだ。昨秋のフランスも含めて最近のシニアジャパンもあまり見せられない、スピードと展開力で相手を消耗させる戦いを、実質20歳以下の選手たちが体現してくれた。

 

後半は、ウォリアーズにライン防御でプレスを掛けられて、思うようなスピードで勝負できなかった現実は、この世代以外も含めた課題になるのだろう。まだ姿を現さない新生エディージャパンも含めて、相手から重さや大きさでしっかりと重圧をかけられ、フラットなアタックラインがプレッシャーを受けると、どうしてもスピード勝負に陰りが生じる。このような状況から、いかにキックも駆使して自分たちの流儀を押し通せるのか、再びギアを上げられるのか。日本ラグビーの宿題ももらった勝利だった。