当事者皆さんには失礼ながら、だいぶ〝根っ子の先っぽ〟のほうを取材してきた。

 

書きながら「本来なら行政側の考えも書くべき」という認識ではあったが、予定していたコラムのボリューム=行数などのバランスを考えると、そこまで盛り込む余地はないとの判断で、このような内容に。機会があれば、行政側にも踏み込みたい。

 

 

 

 

板橋区協会の主張だけで判断すると、コラムでも書いたように「絵空事」かも知れない。だが、ここに日本のラグビー界が抱える「スタジアム問題」を反映させると、ことは〝書くべき〟テーマにステップアップする。

 

今回のネタのように、市井のラグビ-好きの小さな思いが、壮大な夢に変貌し、大きなヤマを動かすこともある。昭和の時代に芝生でラグビーが出来る「ローデムパーク」を自力で作った関川さんたち然り。その思い、夢は、いま息子さんが尽力する「キズ―チフィ―ルド」へ受け継がれる。

 

秩父宮の建て替えや、2019の遺産となったスタジアムのケースに比べれば、たしかに「大きなヤマ」ではい、ちっぽけな夢かも知れない。だが、こんな名もなきラグビーフィールドの上では、日々、間違いなくラグビーが生み出され、続けられている。

 

板橋区協会の思いを微力ながら応援したいと感じたのは、彼ら(不惑倶楽部)の「ラグビーができるグラウンドがほしい」という欲望が、それだけに止まらず、「大学ラグビーの聖地を」という高台まで引き上げられたことも影響している。何かが変わるには、非常識で型破りな妄想が必要だ。世間体や、妙にものわかりのいいバランスばかり気にする発想から、いかに脱却できるか。社会や〝常識〟を変容させるには、小匙程度のアナーキーさが必要だ。

 

区協会では明言は避けたが、板橋区には河川敷以外にも「100m×70mプラス」の敷地はありそうだ。ここからは各方面からの入れ知恵だが、取材でお邪魔したラグビースクール体験会会場にも近い城北中央公園(旧立教大グラウンド)や、既存施設の見直しの声もある高島平団地周辺地域、再利用が検討される広大な敷地を持つ工場跡地等々。住民意識としては、大きなショッピングモールや医療機関でも建てた方がよほどいいという声も挙がるだろう。そこを、どうスポーツ施設と結びつけることができるのか。

 

If you build,he will come.

そこに作れば、彼はやって来る

 

何やら呪文めいた言葉は、W.P.キンセラの名著「Sholess Joe」の冒頭に書かれている一文だ。後に映画化された「Field Of Dreams」は有名だが、このheは映画でも描かれたSholess JoeことJoe Jacksonであり、ケビン・コスナー演じる主人公の父親との和解という親子のモチーフでもある。だがその一方で、映画を観ると、スポ―ツというフィールドで「場所」があることが、人が集まってくるための根源的な要素であることも感じさせる。

 

コラム文末でもしたためたように、協会、チームも力を合わせることで、行政も巻き込んだモールを〝ゴール〟へと押し込むことはできないか。青臭い理想論でもあるが、やるべき価値もあるだろう。

モールを押し切れなくても、パイルアップで敵ボールからのリスタートだ。

 

Field Of Dreamsを夢見る限り、No Sideの笛が鳴ることはない