昨夜のJRFU理事会ブリーフィングでは、興味深い発表もあった。

岩渕健輔専務理事によると、リーグワン、大学などのトップアスリート以外の選手に対して二重登録を認めることが理事会で承認されたということだ。

 

説明を聞いてすぐに頭に浮かんだのは、以前にコラム、ぶろぐでも紹介した湘南アルタイルズのようなチーム、そして取材以外の領域で、現在すこしお手伝いしている中高世代の子供たちのプレー環境へもたらす影響だ。

 

本来アルタイルズのようなチームは部活と並走する存在なので、実は大きなプラス、マイナスが起こるわけではない。ただし、他高の部員が、何らかの理由で、このユニークなチームに加わるための敷居は若干下がるのだろう。参加するニーズがどこまであるかは置いておいて。

 

同時に、他の地域でも、わずかに発生し始めた高校世代の「クラブ」にとっては、参加者数を広げる助けにはなる。ただし、気を付けるべきは、深刻な部員不足、大会参加校減少に喘ぐ高校ラグビー部にとっては、危うさも孕んだ決定でもある。

 

花園でキラキラ輝く、いわゆる強豪だけ見れば何ら変化はない高校ラグビーも、花園には出場しても1回戦、2回戦で敗退するレベルのチームですら、大きな地殻変動に苛まれている。最たる例が、この冬の花園で最も印象に残った香川・高松北に起きた出来事だ。

 

すでに1月のコラムで書いたことなので、ここで、このチームに起きた悲しい出来事を長々と書くことは避けるが、1つの例題として考えると、常に部員不足に苦しむチームにとって、学外のクラブでプレーする在校生が部活にも参加出来れば歓迎するべきことだ。だが、現実問題として、このような高校生が高松北や、他の部員不足が気懸りな高校に何人いるのかを考えると、飛躍的な変化は期待できない。

 

その一方で、高校の部活で部員数などの理由で十分に試合が出来ないと感じている選手が、同時に参加できるクラブチームに力を注いでいく流れが出来た場合、もし高校クラブチームの大会などがこの先充実していけば、従来の部活がどこまで健全な運営を継続できるかが不透明になる恐れもある。1つ間違えば、部員の流出という事態が起きる危険性を孕んでいるのではないか。

 

ブリーフィングでの質疑で思わず吹き出しそうになったのは、「強豪校で試合に出られない選手も改善の余地があるのでは」という質問だった。部員がいなくて試合が十分に出来ないチームが全国規模で拡大している現状の中で、敢えて「名声」のあるチームに自分の意志で進んだ選手よりも、目を向け、手を差し伸べる子供たちがどれほどいるのかに気付く必要がある。JRFUが公表している年度別の競技人口をみれば、問題は明らかなのだが…。

 

「悪いシナリオ」について、ここまで書いてきたが、重要なのは、この新たな制度がもたらすプラス材料をうまく生かしていくことだ。先にも触れた現在すこしだけお手伝いしている中学生は、様々な理由で高校に進学すると部活が十分に出来ない境遇に置かれようとしている。大好きになったラグビーを高校進学後に続けるには、部活以外でラグビーに打ち込むしかないのだが、住まいや、通学(距離、時間)、そして若干持っているハンディキャップなどを考えると、その情熱を受け入れてもらえるチーム(クラブ)は驚く程限定的なのだ。

 

その一方で、今回の改正が、もし複数のチームでの活動に、より参加しやすい環境を作ることに繋がれば歓迎するべきだろう。ただし、現在許されるのは高校ラグビー部、プラス他のクラブ(部活以外)1チームという条件だ。もちろん、大会等への参加はいづれか1チームだ。

 

いづれにせよ、まだまだ第1歩という改定だ。これから柔軟性を、より迅速に進めてくことを願うしなかい。そして、現行の変更以上に柔軟性を持った「出来ない」ではなく「出来る」というルール作りが欲しい。

 

ハナシは今回の規約改定からは離れるが、先にも触れた高松北のケースは、来年度からでも修正するべきだろう。

 

断っておくが、賛否はあるとしても、このような現状の難しさは、大半の高校指導者は現場感覚で熟知している。各校、各地域で、それをどういう方向へ動かしていけるかに腐心しているだけだ。

 

1月のコラムでも書いたように、現行ルールでは非常識と思えるとしても、14人や15人、さらには17人の部員で挑む高校生たちからハナゾノを取り上げるようなルールは改善するべきだろう。雁字搦めの規約に大きく柔軟性を持たせないと、彼らの夢や思いを受け止められない。あらゆる組織には「中長期の問題」が好きな人が多いが、これは毎年卒業する選手がいる高校では、来年の子供たちをどうするのかという直近の緊急課題だ。