35日ぶりに都に戻って来た。

 

結構ローカルな場所での滞在も多かったので、朝の大都会にやや戸惑う。

皆さん忙しく、相変わらず順番待ちは情けないほど浅ましい。

 

ここからはサンドニオンリーの試合。マルセイユの竜と大型ネコ科動物も見ものだが、プール戦のクオリティーならこちらのカードだろう。

 

泊まりは主にサンドニ。開幕戦の日に、急遽決めた清潔感たっぷりの安宿(失礼!)を再訪だが14日は流石にここも満室だ。無謀にも宿泊先はまだ決めていないのだが、まず宿に戻ったらダメモト直接交渉。それでもダメならプランBでいく(仏時間13日17:00時点のおはなし)。

 

朝のサンドニ商店街を歩いたが、パリの街中より遥かにいい。優雅な公園も、洒落た並木道もないし、広々としたカフェのテラス席もない。でも、活気があって、皆、すこしでも豊かになろうと一生懸命生きている。

 

 

▲今日も元気なサンドニ市場。肉でも魚でも野菜でもなんでもあるでぇ

 

 

この日はメンバーアナウンス(つまりFRA、SAの会見)よりも、グラウンドを選んだ。サンドニでのシャムロックのキャプテンズラン(主催者側は「チームラン」と呼ぶ)。負けたら引退のジョニーはイケそうだし、バンディはご機嫌。チーム状態は良さそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

このチーム、ここ数年は黒ジャージーを倒すことで実力を証明してきた。本番で前回王者を倒したことで、「8強止まり」という呪縛も今回は突破しそうな勢いだ。

 

そして再び黒衣の15人との戦い。本物の優勝を狙えるチームになるには、ここで真価を証明するには相応しい相手かも知れない。向こうのコーチングスタッフに自分たちの前HCがいれば尚更だ。シュミトさん、アイルランドを知り尽くしているし、必ず徹底的に分析してくる。

 

ここからが本番の一方で、試合数の激減で、すこし寂しさも感じる決勝トーナメント。今週はだいぶ寄り道をしながらパリへ辿り着いたが、来週はどうする、どうなる? 勝ち上がりチーム次第という思惑もある。

 

先ずは、明日土曜のシャムロックvsシルバーファーン、そして安息日のル・ブリュとボカのヘビー級の対決を楽しもう。

 

そして、こんなタイミングなので、すこし器のおはなしでも。

 

誰もがご存知のスタット・ド・フランス。

1998年FIFAワールドカップのために作られ、2007年のRWCの主会場に。客席はラグビー使用時で81000席ほど。世界トップクラスの大型スタジアムだ。

 

 

 

 

このスタジアム。中継などで目にする機会は多いが、せっかくなので詳細を見てみよう。

 

まずスタンドの構造だが、一般的には3層構造とされている。しかし、よく見ると1層、2層は、ただ段差があるだけだ。言い換えれば、一層の最後列の後ろに、1階分高い位置から〝2層〟が後方へと伸びている。もちろん、このような形状でも2層と呼ぶのは誤りではないが、2層が屋根のように1層に覆いかぶさる構造ではない。

 

 

▲コレだと1層、2層、3層の構造がわかるかなー

 

 

▲こちら1層から2層

 

3層部分の最前列付近は、2層の後方席に被さるようにせり出している。だが、写真では見にくいかも知れないが、そのせり出し部分はおそらく10席(列)に満たない。

 

 

▲これが2層、3層だけど、すこし被さっているのが分かる?

 

 

つまり、ピッチから3層最後尾までの距離を考えると、相当後方にあるということだ。陸上トラックの一部が仮設スタンドになるので、通常の総合競技場よりはピッチと客席が近い造りだが、これだけのスタンドだと臨場感はあまり期待しない方がいい。日本代表終焉の地となったスタッド・ドゥ・ラ・ボジョワール(ナント)、アルゼンチンがサモアと戦ったスタッド・ジェフロワ・ギシャール(サンテティエンヌ)のような急勾配の席のスタジアムとは大きく異なる構造だ。

 

言い換えれば、サンドニはとにかく大量のチケットを売るスタジアム。後者は、ここまでの何度か触れてきたように、観るのにお薦めの会場だ。これからラグビーファンになってほしい人たちに観戦させたいなら、絶対後者をお勧めしたい。8万大観衆の声援も多くの人にインパクトを与えるが、時が経てばそれも薄れていくものだ。

 

屋根については、外観でも判るようにこの器の象徴のような巨大な板がスタンドを覆う。だが、あまりにも高い位置にあるために、相当吹き込んでしまう。最近のスタジアムだと、屋根自体をワイヤーで引き上げる技術が進歩したため、もっとスタンドに覆いかぶさるような構造だ。今回ならニースやマルセイユがそうだ。サンドニの場合は、2層にある我々の記者席は結構後方なため濡れないで済む。このスタジアムは、雨ならお安い2層、3層の後方に恩恵があるかも知れない。

 

 

 

 

もう一つ、このスタジアムの特徴でもあるのが1層スタンドの一部の通路だ。前方から後方へと幅が広がっていくことで、客席から通路に出てくる観客の渋滞を回避する狙いがある。中継などで見る度に「本当に効果があるのか?」と天邪鬼のために思ってしまうが、実際に階段上部から見下ろすと、その通路の広さがよくわかる。最上部(最も通路に近い列)で、少なくとも3mを超える幅はありそうだ。この広さは、間違いなく通路に溢れる観客の渋滞緩和に役立つはずだ。

 

 

 

 

一方で、スタンド裏側の通路を見ると、日本のスタジアムよりも無機質な造りだが、広大なコンコースを作ることで、ファンの混雑を回避する意図がわかる。ここで、観客席への出入りや、ビールやスナックの購入、そして生理現象と、さまざまな目的で徘徊するファンを混乱なく移動させる。

 

 

 

 

おそらく明日、明後日は通路の幅も分からないほどのファンに占領さるであろうフランス・フットボールの殿堂。まぁ、個人的に今回取材で訪れた器でお薦めするならスタッド・ドゥ・ニース(アライアンツ・リヴィエラ)だろうか。

 

午前中のアイルランドに続いて、午後には〝ル・ブリュ〟フランス代表が公開練習。当然ながら午前中とは比べようのないメディアが押しかけ、アントワーヌの一挙手一投足に視線が注がれた。

 

 

 

 

チームは、ディフェンディング王者との大一番とは思えないリラックスしたムードで練習。15分のみなので、非公開の時間に何が起きたかは知らんけど。

 

もう1つ、どうしようもない発見をお伝え。

 

どのラグビー場も世界共通なのは、ハトさんの素敵な食事場になること。これは外苑前もサンドニも変わらない。だが、フランスでハトの天敵を知ることになった。

 

写真はすこし見にくいいが、最近のテレビ映像でも使われる「ホークアイ」だ。

 

 

 

▲ホークアイvsハトさんの戦いは続く▼

 

 

 

本来は中継よりも分析の機材として重宝されるハイテクマシンだが、いまやワールドカップクラスなら多くのスタジアムに据えられている。いわゆるティア1クラスのチームのナショナルスタジアムでもマストアイテムの先端技術だ。

 

そして、訳せばまさに〝鷹の目〟というテクノロジーが、なんとハトさんは大嫌い。選手が練習を初めても人のないエリアで図々しく地面を突ついているのに、ホークアイが動き出すとスタジアムの外へ飛び立ってしまった。

 

その後、10分、15分でハトさんも戻ってきたが、ホークアイとは距離を置いて絶対に近づかない。あまり詳しくは分からんが、あのカメラのレンズが、彼らにとってまさに猛禽類の眼光なのか? とにかくハトさんを追い払いたい方は、ホークアイの購入をお薦めします。たぶん数千万円かそれ以上だろうけど…。