勿体ぶって町の名を伏せていたが、おじいさんとコーカソイドの町から3時間南下して訪れたのは、この町。

 

 

 

 

そう。トゥール―ザンと共に「チャンプ」の称号を持つクラブ「スタッド・ロシュㇾ」こと〝ラ・ロシェル〟の本拠地だ。

 

以前、この町を経由した夜行バスに乗ったときのことだ。深夜でほとんど何も見えない中で、全く光を感じないエリアを海だなと判断。どうやらラグビーだけではなく海沿いの良さげな町であることは感じていた。

 

あまり無理してまで足を伸ばす気はないが、トゥール―ザン、カストルと、クラブの本拠地に泊まったのだから、敬愛するローナン・オガーラが素晴らしいチームを創ったこの地も一度は来てみたかった。

 

距離はそう近くないが、ナントを中心にしたロワーヌ地域まで来たので、パリへの東征前に、思い切って南へ寄り道した。ちなみにラ・ロシェルの所属するのはヌーヴェル=アキテーヌ地域。ボルドーやアジャン、ポーもこの地域だが、ここもオクシタニ―同様の南仏ラグビーマッド地帯と考えていいエリアだろう。

 

まず駅に降り立って圧倒された。この規模の町に、こんな壮麗な駅舎があるのか。町で一番デカいのか?おそらくカテドラルより立派だ。そんな駅を背にダウンタウンに向かうと、やはり期待通りの美しいハーバータウンが待っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

トゥールーズほどの規模はないが、とにかく豊かさを感じる町だ。大西洋に面して交易や商業で多くの金が流れたのだろう。決して煌びやかさという感じではないが、中心地の古い町並み、その町に張り巡らされているアーチ状の路地や、港湾施設、そしていまの時代は、おびただしいほどのセーリング用のヨットが、この町の豊かさを物語る。今回尋ねた町でも、カストルと並んで魅力的な町だ。歴史的な重みはカストル、ハーバー特有の心地よさと華やかさならこちらという印象だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

18時近くの到着だったため、その日は市街を徘徊して町の雰囲気を吸収して、ハーバーからの夕景をアペリティフ代わりに独りディナーに及んだ。この日は、珍しくアパートではなく、よくあるチェーン系のエコノミーホテル。フランス版東横インのようなもんだ。今回の旅では、アルゼンチン取材のためのナントに続き2度目だろうか? でも、圧迫感のない広さ(20㎡くらいか)広めのダブルにライティングデスク、しっかりお湯の出るシャワー(今のフランスでは常識か!)と寝るには十分快適だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中心地、ハーバーを望むエリアに、とにかく無数のレストラン、ビストロ、バーが並ぶ。こんな夜はテラスでシーフードと白ワインというのが旅の定番だが、おじさんはそんな優雅なディナーは求めない。街中のファスト

 

 

 

 

この店も、近くの学生がテイクアウトというのが定番のようだが、1人で切り盛りする店主の腕は確かだ。店に入って、こんなやり取りをした。

 

「ラムのディッシュはないの?」

 

「ないね。ウチはチキンとビーフだけだよ」

 

東京と同じで、フランス各地のケバブ屋も、そのほとんどがチキンだ。すこし落胆したが、ここまでチキンケバブが多かったこと、そしてケバブのためのローストマシンがなかった(すでにこの日は片付けたのか?)こともあって、キョフテを注文。どこでも同じような相場だが、サンドは6、7€、ディッシュ(お肉、野菜、パン諸々の定食)9、10€。日本のおじさんには、サンドでもボリューム十分だが、このディッシュで盛られる野菜欲しさに9€を払う。

 

そして、先にも書いたように、一見、日本で見られるケバブ屋とも変わらない、つまりイラク、イランなどの移民や出稼ぎお兄さんの料理のようだが、キョフテに仕込まれた香辛料の味わい、〝副菜〟として欠かせないフムス(フンムス)も、ひよこ豆の豊かな香りが料理の味を引きたてる。フムスをすり鉢状にして、その中に垂らされたオリーブオイルも効いている。

 

 

 

「ウチはね、肉も何もフレッシュなのを使うんだ。そこらの店とは違うからね」

 

 

 

 

すこし誇らしげに話すオーナーだが、ケバブやサンドを作るときの集中力が、あながち眉唾でもない気にさせる。料理の満足感のおかげもあってか、先ほど書いたチェーンホテルも快適だ。ただし、現地時間3:30からのJRFU理事会ZOOMブリーフィングで一度起きないといけないのだけは憂鬱だが…。(続)