▲なかなかヘボ写真では表現できないが、朝9時過ぎにようやく建物の間から陽光がグラウ

ドを照らすナント。日中のようにみせるが、黄金色の光の中でキッズの嬌声がピッチに響く

 

 

昨日(フランス時間6日)から滞在のナントでのおはなしを。

 

ナントは3泊を予定。6日にジャパンのメンバー会見が、試合会場のスタッド・ド・ラ・ボジョワールで行われ、7日はウェールズvsジョージア、そして8日の決戦と滞在するが、日本戦ではなく7日の部屋が取りづらい。

 

そろそろ小まめに宿を変えるのもうんざりしてきたので、「3連泊」を前提に宿を探して見つけたのが、小さな町のアパート。日本戦の夜も、選り好みしなければナント市内に70€程の部屋もあっただけに、7日の夜がなんとも恨めしいが、前回のカストルのような拾い物もある。西に広がるブルターニュ地方の宿にも惹かれたが、ナントへ1駅(ただし20分強)という利便性でこちらを選んだ。

 

それにしても、日本戦じゃなくウェールズ戦の夜とは。よほど多くの赤竜たちがドーヴァー海峡を渡って、黒海周辺地域のキリスト教国とのゲームに大挙してくるのか…。

 

滞在したアンス二という町。本当に小さな町で、駅の南側に比較的古い町並みがあったが、我が宿がある北側はひたすら住宅街。取材を終えて町に着いた金曜日の19時だと、ほぼ死の町となっていた。平日なのに、調べるとスーパーも3件閉店時間を過ぎていた。

 

 

▲ナントではないがなんとも鄙びた感のあるアンス二駅

 

 

▲駅前にポツンと一軒あるのがパブ。一見おとぎ話

のおうち風だが、おじさんたちのおとぎの国です

 

 

▲駅から15分強と荷物があるとすこしきついアンス二のアパート。

設備は、LDKと10畳以上のベッドルーム、そして屋外のワン

り広いテと、今回のフランスで泊まった中では最高クラ

ちなみに背後にキッチンと奥のベッドルームの右手がバスルーム

 

 

食事が出来るようなレストラン、ビストロ、ケバブ、バーガーなどファストフードを含めて10店に満たない。旧市街の中に奇跡的に開いていたスーパーで、かろうじて水分と夕朝程度の食材を買い込む。

 

パン類は中東系のものしかないので、徘徊途中で発見した見慣れない販売機に賭けた。それがこのバゲット自販機。撮影したのは翌朝のランチ購入時のものだが、1本(1斤?)1€25で、そこそこのモノが出てきた。とはいえ普通のブーランジェやスーパーなら1€以下でも買えるバゲットが、出来立てでもなくこの値段は少々テクノロジー代が追加されている。早速夕飯に、マッシュルームスープと一緒にレンジでチンして食すと、悪くはないが、味を考えれば割高な物件だ。

 

 

 

 

▲朝の撮影ついでに定番のクロワッサンをお昼用

こもクリスピーさとバターの香りは大満足

 

 

7日はジャパン公開練習→取材対応→ウェールズvsジョージアというメニューのため7:00起床でナントへ。練習会場がかなり郊外だが、ナント駅からトラム1で一本(でも17駅かかるけどね)、しかも駅から徒歩120歩程度にあるスポーツコンプレックスという都合の良さなので、ま、いいか。ちなみにここから試合会場のボジョワールも同じトラム1で一本だ。

 

このトラム1。前回のナント滞在でも使ったが、車内アナウンスでよく耳にするのが「フランソワミテラン」という言葉。もちろん第21代共和国大統領の名前(通常日本表記はミッテラン)だが、ナントとミテランとの関連は無学のためよくわからない。練習会場にいた大会スタッフに聞いても「ナントとの特別な関係や、駅名になった理由は分からないが、フランスでは高名な政治家の名前を(公共機関に)つけるのはよくあること。だからじゃないの?」と話している。

 

 

▲トラム路線図はほぼ万国共通。5つの路線が走るが、

もうすこし工夫すると乗り継ぎがもっと効率的に?

 

 

 

 

フランスに政治介入する気はないが、路線図を見ていて皮肉に思うのは、この国の高名な社会主義者が始発(終着)駅のトラムで、その終着(始発)駅にラグビー場という現実。搾取される側の代弁者として大統領にもなった人物と、搾取する側が培ったスポーツを結ぶトラム。しかし、ミテランの経歴を紐解くと、根っからの社会主義者かと思っていたが、実家は経営者だという点では搾取する側にいたのかと勝手に納得した。

 

この試合前日の練習会場では、未来のガエル・フィクーたちに出会った。

 

日本代表の練習&会見会場となったグラウンドにすこし早めに着くと、朝からラグビースクールの練習が始まっていた。すこし驚いたのは、4人が走りながらのパス練習で、ミスがあるとコーチが全員に腕立て伏せやスクワットをさせていたこと。そもそもフランスに〝連帯責任〟なんていう発想があるのかと思わず笑ってしまったが、コレを世界で初めて発案したのは誰なのだろうか…。

 

 

 

 

すこし真面目に練習を見ていると、さすがフランスというやり方も。パスは、投げる子が《レシーバーへ向けて放る》習慣が植え付けられている。というより、それが当たり前のようだ。日本で複数選手が攻撃ラインを作りパス練習をすれば、走るコース、パスを受ける選手のポジション、距離と全てが形通りに行われるめ、パッサーはレシーバーが「ここにいるはず」という前提でパスを投げる。もちろん指導者は相手を見て投げろと指示しているだろうが、その前提に「型」がある。

 

だが、フランスの子供たちは個々でラインはデコボコ、フラットな位置に立ってサポートする子もいれば、出遅れて随分深い位置を走っている子もいる。そのそれぞれのポジションを、しっかりとパッサーが目視してからパスをするのがフランス流だ。一見すると日本と同じような練習しているが、そこにも「個」の国と「組」の国との違いがある。


2対1のメニューも興味深い。攻撃2人、タックルバッグを持つ防御1人、実はその後方にもう1人のディフェンダーがいるので、正確には2対2なのだが、最初のドリルでは、簡単に攻撃側の1人が走りながら1人目の防御を引き付けて仲間にパスして、後方の防御との2対1は個々の判断で勝負するというものだ。この2回目のアタックが、おそらくチビッ子に自分で見て、判断して動く(もしくは動かす)という学びを植え付ける。

 

コーチも、徐々にメニューのテンポを速めることで、子供たちにより短い時間に判断、行動する習慣を落とし込む。途中からは、最初のディフェンダーも積極的に動くようにさせて、さらにアドリブ度が高まる中でドリルが進んでいく…。ここまで見たところで「代表公開練習始まりまーす」というアナウンスで、凡庸なメニューに切り替えざるを得なくなった。凡庸というのは、代表チームには失礼な言い回しだが、メディアに公開する15分程のメニューは、戦術やメンバー構成という点では全く何も推察出来ない当たり障りのないものという意味で、まさに凡庸としか表現できない代物だ。

 

後ろ髪を引かれる思いで代表の練習グラウンドへ移動したが、あのチビッ子の中から次のアントワーヌやガエルが生まれてくるのだろうか…。

 

朝陽の中で黄金色の輝くピッチの上で、あどけなく笑い、絶叫しながら楕円球を追うゴールデンエイジの姿が眩しかった。