サンテティエンヌのおはなし以降、サボっていた細道。ジャパンvsサモアの大一番前日というタイミングで、そろそろ更新しましょ。
このおサボり期間、小生は22日のサンテからトゥールーズへ強行軍で舞い戻り、翌23日14:00キックオフのジョージアvsポルトガルへ。ジョージアの肉感的なラグビーはもちろんだが、16日のニースでウェールズ相手に魅せたポルトガルのハイワークレートと、大航海時代のような冒険心に満ちたラグビーは、この試合でも期待通り。ロス・ロボスは、完全に極東のおじさんの心を掴んだ。
そんなロボスの白熱の戦いの余韻に浸りながら、プレスルームで宿を探し、トゥールーズ・マタビオ駅からJRフランスに飛び乗った。
45分揺られて辿り着いたのは、ローマ時代の城塞都市。細かくいえば、駅から広がる新市街(といってもかなり歴史はありそう)からオード川を渡ると「シテ」と中世の城塞都市がが丘の上に築かれている。
▲シテの麓は、カフェやレストランが並ぶ商店
街。店を冷やかしながら登ると城塞が待ち構える
写真でも判るように、古の時代のままの都市が残されるフランス屈指の歴史的遺産は、国内外の観光客を惹きつけ続ける(ようだ)。
確かに、数百年前の石畳にレンガの壁に挟まれた、まさに〝細道〟を登っていくと、中世(ローマ時代はすこし大袈裟?)に迷い込んだようにも感じる。歴史的な遺跡を保存しようという地域の情熱も、このフランス屈指の観光地の変わらぬ人気と魅力を支えているのだろう。
だが、一言でこの都市を表現すれば、こんな言葉が頭に浮かぶ。
南仏版3年坂
坂道、ごった返す観光客、そして生活感の薄い商店やカフェ。
受け入れる側も、訪れる側も「観光」という言葉の範疇の中に存在する。
▲駅からはこんな観光列車(?)も。乗客は観光のつも
りだろうが、実は彼ら自身が観光の見世物になっている
▲買っても絶対押し入れで眠ることになるお土産たち。万国共通
これは個人の嗜好だが、今回残念ながら訪問を断念したイタリア・トレヴィゾと比べると、その生活感の名さ、町の人たちの暮らしや息吹を感じるには、カルカッソンヌはそこまで惹かれる街ではない。
幸いなことに、小生は2泊したアパートが、新市街とシテを分けるオード側に架かる橋のたもとだったために、ふらっと行くにはイージーだったこともあり、昼を挟んだ2時間ほどの散策で丁度よかった。隈なく城塞都市を歩けば半日か、それ以上かかりそうだが、どこを見ても歴史的な街並みと、観光客と、観光客相手の商店という意味では、小一時間観れば十分だ。
▲カルカッソンヌの我が家はなかなか良かった。写真の手前がキッチン&バスルーム
ま、土産ばなしか、細道のネタにはいい2日間だった。トゥールーズに残って、エアバス工場の見学ツアーという候補もあったが、この先、訪れるチャンスがあるかという観点では、カルカッソンヌで良かったのだろう。
▲城壁の外側の外周道路から眺める新市街こちらもお散歩にいい
▲観光地では、居心地のいいスペースは単価の高い
レストランに占領されがちだが、ここのサンドイッチ
でも寛げるカフェは合格点。木陰でだいぶPCを叩けた
▲どこかのHCも副業中?
なんだかんだとケチをつけたが、城塞内の聳えるサン・ナゼ―ル・バジリカ聖堂は必見の価値はあるだろう。壮麗なステンドグラスも魅せられるが、従来は雨樋のために作られたガーゴイルや、様々な彫刻に、設計者と石工の創意工夫とデザイン力には惹きつけられる。この表情を、こんな造形を、どんな思いで、どんなメッセージを込めて鑿を打ったのだろうか。
その一方で、駅前にそのまま水路があって、日曜日のボート係留場の前では、アマチュアなのか、多くの歌自慢、演奏自慢が次々と臨時で設けられた舞台に上がり、多くの市民が午後のひと時を楽しんでいる。日本にくらべると、時間の使い方が遥かに豊かではある。
フランスでの滞在は3週目を迎えた、小言や不安が山積している。「社会」と呼ばれる人が暮らすためのシステムが崩壊しているとも感じるが、彼らが数百年をかけて築いた、時間と空間の使い方には学ぶべきものが、まだまだあるようだ。
カルカッソンヌ最後の夜、ふと気づいて宿の外の橋に出てみると、煌々とライトアップされる古都が浮かび上がった。こうやって、遠景を仰ぐのがこの城塞都市のベストな見方なのかも知れない。
▲こうやって眺めるのがカルカッソンヌのベストな見方かも…
そんな思いの中で、25日夕方のトゥールーズでのジャパン会見へと、再び電車へ乗り込んで〝カルカッソンヌの細道〟を終えた。