いよいよFrance2023である。

すでに、日本代表はトゥールーズ入りしているが、小生は、開幕戦に合わせての現地入りという段取りだ。フランスvsニュージーランドの取材申請は「OK」の連絡がきている。過去最高クラスにレベルの高いオープニングマッチだ。

 

19年は日本vsロシア(!)、15年はイングランドvsフィジー、そして11年がニュージーランドvsトンガと、振り返れば開幕戦はホスト国が若干与しやすい相手とのカードが定番だった。そりゃ、オープニングマッチでホスト国の代表チームがコケれば、大会の勢いもつかない。そこそこ力はあるが、よほどのヘマでもしなければホストが優位というカ―ディングが続いてきた。そんな流れの中で、今回のマッチングは主催者側が思い切ったなと評価したい。まぁ、フランスのどの世論でも、オープニングマッチでのブラックジャージーを嘱望していただろうが。

 

そんな注目の開幕戦すらキックオフを迎えていない段階から、こんなものを書き始めたのは、諸々準備段階から面倒な大会になりそうだという思惑もある。それは追々に。もちろん、自分自身の備忘録代わりでもある。

 

タイトルは、お判りのように、かの俳聖の名著からパクらせていただいた。

 

「月日は百代の過客にして、行きかふ年も又旅人也(月日は永遠の旅人であり、来ては過ぎてゆく旅人のようなものだ)」

 

 

 

 

教科書でうんざりふるほど目にしてきた序文だが、あらためて読み直しても銘文だと感心させられる。そんな心持ちで旅に出る古の俳人の思いは、令和の三文ライターも、すこしだけ相通じるものがある。芭蕉の旅への感性は、いまを生きる人間よりも鋭い。

 

そして「オック」は、古くはフランス南部で使われていた言語であり、「オクシタニア」と呼ばれてきた一帯が、今回のFrance2023取材の旅の主要地域ということで、かなりのこじつけでタイトルに決めた。

 

現在もトゥールーズが首府のオクシタニ―地域圏という自治体があるのだが、オクシタニアは、「ニア」で察することが出来るように、ローマ時代から呼ばれていた地域名。現在のオクシタニ―よりも広範のボルドー、マルセイユ、ニースも網羅した広域を指している。今回の旅の主要エリアを含むだけではなく、かの村田亙の活躍で名高いバイヨネーなども含んだ、いわゆる南フランスの楕円マッド地域と、ローマ時代のオクシタニアが不思議なほどにオーバーラップしているのだ。ローマ時代の〝フットボール〟は、もしかしたら楕円球だったりして…。

 

旅程は、デューク東郷と某独裁国家の情報部・保安部を警戒してあまり明かしたくはないが、現状では開幕戦ぎりぎりの6日CDG(パリ・シャルルドゴール空港)着。旅はこれからである。芭蕉のマスターピースも、書き出しには旅立つ前の心境を記している。旅の序章としては、まぁいいかという判断で、今日から書き始めることに。

 

そんなことで、第1回の〝細道〟は、旅の準備編から。これからは、フランス国内を右往左往という旅程でもあり、あまりラグビー以外をダラダラ長文で書き綴るのも「?」なので、コンパクトなものになりそうだが、おそらく次回のアップは日本時間だと7日未明以降と、すこしブランクが出来そうなこともあり、第1、2回をまとめてというボリュームだ。

 

旅の準備の第一歩は「いつ行くか(帰るか)」から始まった。勤め人の時は、上司との話し合いで、いつから現地取材を報じるかで決まる。これは取材対象=日本代表の活動予定、経費などを総合的に判断して具体的になる。それが、自由人だと自分の判断次第。もちろん経費の問題は結構大きいが、勤め人を辞めて初めてのRWCが日本開催だったことで、今回は自分自身のスケジュールの確定で思い悩まされた。

 

2007年と似たようなスケジュールを組んだジャパン。イタリア北部トレヴィ―ゾ(以下トレビゾ)でのプレキャンプはかなりの誘惑があった。なんせ、食い物が上手い。フランスが美食などと称されるが、庶民レベルでの食事なら、断然こっちだ(つまりUK同様にカネを出せば美味いモノが食えるのがフランス。ただし朝のパン屋のクロワッサンは別物だ)。

 

アルプスも近いイタリア北部地域では、日本のファミレス風〝ベンチシート〟のような座席の町外れのレストランでも味は抜群だ。実は、そんな店が老舗パスタメーカーのアンテナレストランだったというオチもあったが、おそらく麺にはコシが欠かせないことを理解しているのはイタリア人、日本人の共有するDNAだ。

 

そして、もう店は無くなっているかも知れないが、トレビゾ駅前の、爺ちゃんと、孫娘風チビちゃんが手伝う店頭売りピザも悪くない。爺ちゃん煙と汗まみれ、ピザを包む新聞紙がギトギトに油まみれという代物だったが味は間違いない。ピザ屋のハス向かいのジェラート屋のピスタチオ風味が、口直しに最適というコンビネーションも有難かった。

 

水路が張り巡らされた、ローマ時代の城壁に囲まれた旧市街も素晴らしい。小一時間で行けるヴェニスは、半日でもうウンザリだが、このベネトンの城下町は、夜中の散歩で、ふと街角で足を停めると、どこからともなく小さな水路に流れるせせらぎの音が、ガサツな日本人記者の感性も癒してくれる。

 

細道が脇道に入りかけてしまったが、その古都の魅力をしても最終判断ではトレビゾを断念。理由は、コスパも大きいが、8月前半の時点での、現地での代表取材対応の乏しさだ。1週間、2週間の滞在で、毎日ではない、数分の対応じゃ、これも結果的にコスパの問題だが、早乗りする価値は低い。ギトギトピザは心残りだが…。

 

この段階で、目的地は開幕戦のパリor日本が初戦を迎えるトゥールーズという二拓となった。

 

そうなると、悩む要素はかなり限定されてきた。今回は、勤め人だった時には出来ない選択を優先しようという思惑なので、なるべく日本代表に縛られすぎない取材を頭の片隅で考えていた。そのため、どの試合を申請するかも、日本のプール4試合はもちろんだが、同時に日本戦以外のカードも出来る限り申し込んだ。

 

ご参考までに、申請した試合は下記の通り。

 

9.8  フランスvNZ(サンドニ)

9.9  ▲イングランドvアルゼンチン(マルセイユ)

9.10 日本vチリ(トゥールーズ)

9,15 ▲ニュージーランドNZvナミビア(トゥールーズ)

9.16 ウェールズvポルトガル(ニース)

9.17 ▲日本vイングランド(ニース)

9.20 イタリアvウルグアイ(ニース)

9.21 フランスvナミビア(マルセイユ)

9.22 アルゼンチンvサモア(サンテティエンヌ)

9.23 ジョージアvポルトガル(トゥールーズ)

9.24 ▲ウェールズvオーストラリア(リヨン)

9.27 ウルグアイvナミビア(リヨン)

9.28 日本vサモア(トゥールーズ)

9.29 ▲ニュージーランドvイタリア(リヨン)

9.30 アルゼンチンvチリ(ナント)

10.1 南アフリカvトンガ(マルセイユ)

10.5 ニュージーランドvウルグアイ(リヨン)

10.6 ▲フランスvイタリア(リヨン)

10.7 ウェールズvジョージア(ナント)

10.8 日本vアルゼンチン(ナント)

 

20試合を申請しているが、これはプール戦のみ。どの大会でもプール終了時点、つまり8強が決まった時点で、決勝トーナメントの申請が始まる。ちなみに「▲」は申請用のウェブサイトで「In Progress」、まぁ審議中という状態なのだが、申請担当者とのメールのやり取りでは、誰かが申請を辞退しないと取材出来ない、いわば「キャンセル待ち」のような状態だというニュアンスを受け止めた。実際、In Progressの表示になってから3週間前後になるが変化はない。ちなみに、過去の自身の申請で、自国の試合を〝弾かれた〟のは経験のないことだ。

 

20試合は過去の大会でも多い申請だが、これは先にも触れた「自由人」になったことが影響している。勤め人時代は日本代表ベースの取材のため、多くの「いい試合」「観たい試合」を諦め、ジャパンの練習や会見を優先してきた。今回も、日本戦の記事依頼はあるのだが、その中でも、練習よりは試合重視の我儘スタンスで申請したために、20というゲーム数になっている。もちろん、地理的な理由もある。日本戦などマストの試合の前後に同会場、周辺会場で行われる試合も申請しているのだ。

 

 

 

 

では、この20試合全てに行くのかといえば、正直100%「Yes」と言い切れない。

 

これも、メディア以外の方はあまりご存知ないだろうが、申請した試合をキャンセルするシステムがある。主催者側はキャンセルなしが理想ではあるはずだが、現実問題としては、1人キャンセルが出れば、新たに取材希望の記者に席を用意できるメリットもある。そのため、主催者側がこだわるのが、No Shoreの削減。つまり、記者には必ずキャンセルの連絡を組織委員会にするように強く求めらている。17日のニースも、より多くのキャンセル申請を期待するしかない。

 

雑多に書き綴ったが、そろそろフライト時間が近づいてきた。

次回はフランスでの文章になる予定だが、フランス道中で徒然に思うこと、この旅の厄介さ、不平不満も含めて記していこう。

 

帰国便のDepartureは、ワールドカップ王者が確定して3日後の10月31日。果たしてどこまで書き続けることが出来るやら。あまり期待せずに楽しんでいただければありがたや。