最終戦のおさらいをアップした。

5試合すべての総括という意味合いもあるのだが、若干フィジー戦にフォーカスを当てて。

 

というのは、やはり1試合毎の進化、深化がどうしても気懸りだからだ。

 

 

 

 

結論から書けば、国内最終戦を終えた段階で、チームの熟成度は、そこまでhappyな状態とは感じない。試合後の選手たちからは、かなりポジティブな言葉が聴けたが、どうだろう。

彼らはフィジー戦の終盤のトライや、要所要所で見せたテンポのあるアタックに、いい手応えを掴んでいるようだ。だが、こちらが高い理想=トライを奪うまで攻め込む、ゲームを逆転するまでに持っていく、そんな結果を期待するのは欲張りだろうか。

 

割り切れば、フィニッシュまで持ち込むのはワールドカップ本番で出来ればいい、いまは1か月後に結果を出すための術を、1つ1つ確認している段階だという考え方もナシとは言えない。だが、昨秋のテストウィンドウが終わって、そして新年を迎えて思い描いた9月10日、トゥールーズでのキックオフまでの強化のカレンダーだと、対戦相手もそこまで最高クラスではない夏の代表戦では、完成度を高めたチームを見せる必要があるだろうと、朧気ながら思い描いていた。

 

その思い描きの中には、23年大会は19年以上に対戦相手の日本に対するマークが厳しいこと、サンウルブズを失ったこと、パンデミックによる日本特有の強化の出遅れ感を取り戻すことという現実があり、19年以上に厚みを持ったスコッドでW杯に臨むには、より一層早い時点での仕上がりが必要だという思いがあったからだ。

 

ちなみに、いつも声高に批判はしないがジェイミーは、敗戦会見でサンウルブズを失ったことにも言及している。フィジーが日本とは対照的にフィジアンドゥルアとしてスーパーラグビーに参戦していることに触れたときのコメントだ。

 

「(フィジーのスーパーラグビー参戦)そこも大きな要素の一つだと思っています。2019年に私たちが成功したのは、毎週毎週スーパーラグビーでプレーして、高い強度、スキルスピードの中で試合をすることが出来たからだと考えています。今日のフィジーにはドゥルアのメンバーも、ヨーロッパでプレーする選手も沢山いましたね。日本としては、2019年に比べて、そういう強化が出来なかったということは問題があったと思っています。 ただ自分たちはしっかり出来ることをハードに練習して、トレーニングをしっかりしていくということに関してはやってきてきたと思いますし、前にも話したが、タフな大会があった方が自分たちにとっては良かったと思っています」

 

サンウルブズも然りだが、パンデミックについても、文字数の影響もあってコラムでは踏み込まなかったが、準備不足の背景には日本代表がコロナ禍を未だに引き摺っていると感じている。世界のトップ8を争うレベルの国々で、日本は飛び抜けてゲーム機会を失ったのは間違いない。アルゼンチンなども痛手を受けたが、日本にはラグビー・チャンピオンシップによる出遅れの挽回はなかった。

 

どんなエリアに、負の恩恵があったのか。選手と戦術の熟成だ。例えばSO。大袈裟にいえば、このポジションほど実戦経験が選手の成長に欠かせないポジションはない。相手とのスペース感覚を、実戦での自分vs相手、動かす選手vs相手防御という距離とスピードの中で、イメージとリアル両方で知ることで、指令塔は相手をどう崩すか、プレーの最適な選択肢を学ぶ。天才以外はね。それはキックの使い方でも変わらない。

 

だが、19年以降に代表に招かれたSOはどうか。李はそこそこプレー時間を貰えたが、山沢拓也、中尾隼人は十分とは言えないプレー時間の末にチームを離れた。投資無ければリターンはない。つまり、19年大会時点から23年のテーマとして浮上していたチームの厚みを作るための投資は、なかなか取り戻せないまま、ついに国内戦を終えた。1勝4敗で。

 

新たな収穫は長田智希なのは間違いない。マジシャンとのゲームでは、ランメーターで両チーム1位(128m)、防御突破7回はジョネと同数で1位。脇道に逸れるが、タックル回数でのムーアの1位タイ(16回)、コーネルセンの2位(14回)は期待通りの数値で、本番への明るい数値だ。

 

長田だが、そのスタッツが、彼のフランスでの「正解」ではないように思える。それは、次回のコラムで書く予定だが、人を生かすためのプレーが彼の役割に求められる大きな要素だからだ。そこは、まだまだ2019から12番を背負ってきた男に及ばない。そこを、残る3週間の強化でどこまで身に着け、世界最高の舞台でパフォーマンス出来るのか。ハードルは低くはないが、クレバーな選手。楽しみであり、夏の宿題のようなものだ。

 

数値の話に傾いたので、ついでにもう一件。ポゼッションは日本の52%に対して勝者は48%。テリトリーは同様に41%と59%。完敗の割に数値はまぁまぁ。顕著なのはパス回数の202対126とランメーターの485対664。ラン回数が125対112と近似値なのに、パスが多く走行距離は少ないのは、やはり有効なアタックが不十分と解釈するが、いかがだろうか。

 

パフォーマンス、数値の両面で、あの町に張り巡らされた水路が美しいトレビソで、変化と収穫を期待したい。

 

まずは、15日のメンバーが先か。近々、メンバー選考についてのすこしふざけたコラムもアップすることにしよう。