(写真提供:東芝ブレイブルーパス東京)

 

 

東芝ブレイブルーパス東京が18日に発表した来季新加入選手の中に、異色の〝隠し球〟がいる。防衛大を今春卒業した岩渕誠が、2カ月のテスト期間を乗り越えて正式に入団を勝ち取った。新潟高校時代はサッカー部。楕円球と出会ったのは防衛大1年という遅咲きで名門チームの一員になった。

 

2000年4月20日生まれの23歳は、182㎝、90㎏のサイズでCTBを軸にWTBにも挑戦する。まだ本人と直接会えてないために、今回は7月18日に行われたチームの定例会見での関係者のコメント、つまり伝聞での紹介になるが、チーム提供の写真を見ると、なかなかバイタリティー溢れる風貌だ。直接会っての取材が楽しみだ。

 

いまや毎シーズン大挙して海の向こうからやって来る外国人トップ選手の影響で、日本人選手の入団枠は狭まる一方だ。そんな中で、大学のトップクラスのリーグでもプレーせず、ラグビーを始めてわずか4シーズンで、日本で5番目に強いチームに採用されたのは驚きだ。

 

門戸を開いたのが東芝というのがポイントだ。日本ラグビーを支えてきたこの名門チームは、過去にも異色の選手を採用してきた。福島の日大工学部でラグビーを始めた大野均を日本最多の98キャップにまで鍛え、順天堂大学院でハンマー投げのトップ選手として活躍していた知念雄(現三菱)も桜のジャージーを掴む選手に育てた。

 

薫田真広GMは、異色の防衛大からの新戦力入団までの経緯をこう説明する。

 

「自薦のような形ですね。最初はプレーも映像でしか確認出来ていなかったのですが、非常にポテンシャルはあるなと感じました。彼自身が(自衛隊に)任官するという話も当然ありましたが、より高い環境でラグビーをしたいという本人の希望もあって、卒業してから2カ月間東芝でテスト生としてずっと見てきました」

 

自ら売り込んできた元自衛隊幹部候補生。映像を見ての直感から、実際に練習に参加させて観察した薫田GMは、さらにその可能性を感じ取った。

 

「2カ月間、グラウンドで彼のスキルとか、性格、練習に取り組む姿勢、それと社会人としての人間性などすべてを評価したときに、このチームに必要なのかなと感じました」

 

サッカー部上がりのキック力も大きな武器。体重もチームに参加しての2カ月で5㎏増やしたという。同GMは「まだまだ体を作っていかないといけない部分は当然あるが、キッキングスキルとフィットネスは非常に高い。今のBKに求められているプレー回数の多さとか、加速のした状態でのリピート率の高さ、そういうものは持っていると思います」とそのポテンシャルを指摘する。

 

 

 

 

正式に社員選手となっての課題は「フィジカル面、特に上半身の強化をしながら、リーグワンのスキルに合わせていくというところ」(薫田GM)だという。

 

「向上心があり、賢いプレーヤーなので、そのあたりは自分自身で自覚しながら伸びていけるかなと思う。そういう伸びしろは非常に感じます」

 

防衛大では、圧倒的なエースという存在だったという岩渕だが、新天地では、スキル、フィジカル、そしてラグビーナレッジと、まだまだ歩き始めた幼児のような存在だろう。だが、薫田GMはじめチーム首脳の目に狂いがなければ、ダイアモンドに大化けする可能性を秘めた原石だ。