▲練習後に取材に応える古田真菜。ベストに近い布陣を固めて雪辱に挑む

 

 

先週は静岡での女子テストを浮気して菅平で避暑していたので、アイルランドのキャプテンズランを初めて視察。

ウォームアップの数分を公開して、練習本番はクローズ。そして終盤15分ほどを再び公開という段取りだったが、選手の動きもスケジュールも〝秩序〟を感じるチーム。時間管理がかなりキッチリしており、メニューの組み立ても男性中心のコーチングチームがしっかりと準備しているようだ。1つのプログラムから次へ、効率的に進んでいく準備が練習用のコーンの配置などから伺える。

 

しかも、ウォームアップの時間には、男性スタッフの1人がスタンドのフェンス回りを、ぶらぶらと一周して、フェンス前後などを見ながら、ゴール裏に聳える伊藤忠ビルの窓を、結構細かく眺めている。もちろん、このおじさん、散歩しているのではなく、スパイ対策。このような試合会場での前日練習時の行動パターンは、「世界一」の男子代表の影響もあるのだろう。ワールドカップ出場は逃したが、組織としてのオーガナイズには学ぶべきものがある。

 

練習後には主将のLO二コラ・フライデーさんが取材に応じた。

初戦を57‐22と快勝して迎える最終戦だが、スキッパーは冷静だ。

 

「先週の勝利はうれしいが、私たちにとってはまだ課題がたくさんあるという意識です。日本が2戦目に気合入れてくるので、まったく違うゲームになることも予想そしていて、たぶん厳しいゲームになるのは間違いない。日本を分析すると遂行力、それに加えてスピードもある。スキルも非常にいいものがあるし、ブレークダウンでも怖い相手。ボールに対してもとてもクイックな印象なので、そこらへんがでてくるとエキサイティングな試合になると思う」

 

 

 

 

日本の女子ラグビーの将来を考える上でも気掛かりな、同国協会が今月に発表したプロ化について聞くと、こちらも冷静にこう語ってくれた。

 

「そういう動きは選手には嬉しいことで、やっとそういうところまで来たんだなと感じます。その一方で、すごく大きなステップ、変化になるので、この先何かしら難しいことがでてくると思っています。でも、アイルランド協会が最善を尽くすと聞いているし、そうなってほしいので、いい方向の行くのではないかと思っています」


練習メニューの中枢を見られなかったが、最も大雑把にそのチームの実力を測る〝物差し〟となるキックを見ると、おそらくチームで一番長いプレースキックを蹴れそうな選手は、10mラインからのキックがポストまで届いていた。レベルが高いチームと判断できる距離だ。

 

パス練習を見ていて感じるのは、高いスキルを持っている一方で、8-10mほどの距離だと〝お辞儀〟してしまう時も多い。ボディーバランスがしっかりと保てている体勢ではいいパスも放れている。パスについては、やはり手のひらのサイズ、腕の長さ、懐の浅さの影響もあるのだろうが、男子のスキルに比べて、捕球したボールを一拍溜め込むようにしてからスルーすることで遅れが生じる。ここに、シャローディフェンスのスピードを上げてプレッシャーをかけたいところだが、静岡での第1テストをオンラインで見る限り、そこまでの重圧はかけれないままジャパンは敗れた。

 

明日の試合で期待したいのは、静岡は欠場したCTB古田真菜の先発スタート。すでにしっかりと実績のある選手だが、5月のオーストラリア戦、7月の南アフリカ戦と、タックルが際立っていた。

 

その古田女史。府中で行われた23日の練習では、自分のパフォーマンスについて、こんな自己評価をしている。

 

「南ア戦は第1テストで、自分が強いヒットをされて弾かれていたところがあったので、第2戦では、すこしでも低くいって、相手を前で止めれるように意識した。そこが修正できたのでよかった」

 

初戦で上手くいかないことでも、次の試合で修正して、インパクトを残すことができるのが、彼女がクオリティの高いプレーヤーとしてこれからも成長していける可能性を孕んでいる。昨季はオーストラリアの首都キャンベラのブランビーズでプレーした古田さんだが、この経験も自身を大きく成長させたと考えている。

 

「海外でプレーしたことで、相手に対してどう(コンタクトを)やっていこうというのを考えるチャンスが増えたというのは、自分の経験値としては上がった部分と感じています」

 

リーグも活性化する〝ダウンアンダー〟の女子ラグビーだが、4試合が続くテストマッチは、彼の地でのリーグよりレベルが高いと実感している。

 

「南アフリカに関しては、フィジカルは向こうより強い印象です。アイルランドは上手さも加わってくるので、それに対してディフェンスが少しでも後手を踏んでしまうと食い込まれてしまうと思う。そこに対してチャレンジした上で、相手より前に出たい。そこが、私がやりたいと思っている部分だし、チームでもやっている部分なので、意識していきます!」

 

女子は、7人制チャレンジ大会で期待に応えた7s代表でも、須田倫代さんがチームを鼓舞するような果敢なタックルで勢いをもたらしたが、15人制でも古田さんが、同じような役割を担う。彼女のタックルが、静岡では燻っていたジャパンの闘争心を、もう1段階高いステージで着火させることが出来れば、先週以上に喰らいつけるシーンを見ることができるかも知れない。

 

協会も積極的に「サクラフィフティーン」という愛称を使う女子15人制日本代表。イメージ戦略や、どの競技でも乱発するニックネームに文句をつける筋合いはないが、個人的には、あまり積極的に使わない。

日本のラグビーは、ほとんどの種目に先駆けて〝ジャパン〟という名称で、愛着と尊敬を込めて呼んできた。強いて固有性を持たせるなら「〇〇ジャパン」。いまの女子代表ならレスリージャパンと敬意を込めて呼びたい。

 

▲格好いいラッピングの女子代表バス。だが、多くの人は何のチームか「?」

 

 

JRFUでは、男子同様に、専用のラッピングが施されたチームバスも用意した。残念なことに、ラグビーの知識がない大多数の人が見ても何のラッピングか分からないデザインだという現実は一部協会スタッフも認識はしているが、このバスを一目見て「ジャパンだ!」という時代が訪れるのはいつだろうか。

 

未来を思い描く前に、先ずはテストだ。

前週に比べると、古田さんを筆頭にFL齊藤聖奈、長田いろは、FB松田凛日と、適材適所に実績のある選手を配したレスリージャパン。期待のキックオフは27日19時だ。