▲アークスブルーに染まったバックスタンド。リーグワンではこういう光景が日常に?

 

 

▼リーグワン・ディビジョン1 2022.1.15 東京・秩父宮ラグビー場

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ 19-9(10-6) NTTコミュニケーションズシャイニングアークス東京ベイ浦安

 

微かながら寒気が緩んだ15日。楕円球のフィールドでも刻々と陽性者が増えて、リーグワン側で15日発表の数値で所属選手・スタッフの感染者数はPCR検査総数1706件中陽性者は119人に。陽性者の割合は前週の0.018からおよそ0.07と前週の4倍近くに増えている。リーグ側でも、近々、感染拡大を踏まえたメディアブリーフィングも準備し始めている。この問題は改めてコラム等で書こうと思うので、まずはゲームに触れておきます。第2節は、まずNTTコミュニケーションズシャイニングアークス東京ベイ浦安vsクボタスピアーズ船橋・東京ベイの〝湾岸ダービー〟から。

 

ま、チーム名を書く度に「長すぎ~」とつくづく思うけれど、一言でまとめれば、このリーグが、まだまだアマチュアチームで構成されているということの証明に過ぎない。チーム名の長さとは異なるが、リーグワンが日本ラグビーを本当に変革していくリーグになるのであれば、スーパーラグビー並みに各チームの省略イニシャルが全て異なるくらいの配慮はしないといけません。

 

で、湾岸ダービーです。

 

試合前に注目していたのは、浦安のFW第3列のワークレートと、東京ベイFW第2列の破壊力のどちらが上回るのか。言い方を替えると、浦安が東京ベイ両LOを軸とした強烈な圧力の中で、どこまで自分たちのアタックテンポで球出しが出来るかの勝負に注目していた。

 

ブレークダウンの仕事人、浦安のFLリアム・ギルと、東京ベイのLOデーヴィッド・ブルブリンクルアン・ボタの合計404㎝コンビのバトルは、リーグワンの全てのバトルの中でも注目の戦いだったが、結果からいうと〝点〟の戦いを制圧した東京ベイに軍配が上がることになった。

 

シドニーから戻ってきたロブ・ペニー監督が指揮する浦安は、敗れはしたがやはりいい。ボールを大きく動かすラグビーが開幕、第2節と楽しめた。そこに、派手さはないが精度の高い引き出しを沢山持つSOオテレ・ブラック、ハイボール、ランと相変わらずの超人的な身体能力を見せるド派手なFBイズラエル・フォラウら新加入のアタッカーが、アタックラインのアグレッシブさを増幅させている。ここにCTBショーン・ゲイツ主将が入ると、グラウンドの横幅一杯を2パス、3パスでボールが渡るようなスペクタクルなラグビーが楽しめるわけだ。もちろんアタックのバリエーションも魅力に満ちている。

 

開幕節では、あの神戸を相手にアタックテンポを掴めた浦安。東京ベイ戦でも、なんとかテンポを作れるかという期待感はあったが、ゲイツ主将が「自分たちはハイテンポで、スピードのある、スキルを生かしたラグビーをしていきたい中で、クボタは僕らのテンポで出させないところは上手かったと思う。9番のところで球出しを結構乱されるところもあったので、テンポをスローダウンさせるという部分では、クボタに上手くやられてしまった」と振り返るように、自分たちが求めるテンポアップは出来なかったことで、開幕2連勝が遠ざかることになった。

 

それにしても、東京ベイの〝点〟での圧力は途轍もない。先ほども触れた巨大LOコンビを中心に、FLピーター・ラブスカフニのタックル&ジャッカル、NO8ファウルア・マキシのボールキャリー、そして190㎝、127㎏の〝戦う布教師〟PRオペティ・ヘルの馬力が、強烈なパワーハウスになっている。ベンチスタートだったFLバツベイ・シオネも、38歳とは思えないフレッシュさと力強さを披露。結果的にPG失敗に終わったが、浦安の選手に反則を犯させてPKを勝ち取った後半31分のブレークダウンでのプレッシャーは目を見張るプレーだった。前半、浦安・ギルが自陣で見せた目を見張るジャッカルによるターンオーバー、PK獲得が無ければ〝接戦〟ではないスコアになっていたかも知れない。

 

東京ベイの勝利を支えたもう1つのポイントは、浦安の15番対策だろう。神戸戦でも圧倒的なハイボールへの強さを見せつけたフォラウだったが、東京ベイは敢えてフォラウにキャッチさせるキックも選択してきた。しかし、そのキックは単純に蹴り込んだものではない。完璧な高度、距離で、味方のチェイサーがハイボールを競り合う位置に確実に落とすことで、フォラウが捕球できても、簡単にはカウンターを仕掛けられない状況を作り出し、浦安最強のブレークダウンに巻き込んで、強烈なアタッカー1人を封じ込んだ。ここは指揮官であるフラン・ルディケ・ヘッドコーチの手腕と同時に、現役時代、トップリーグ最高のハイボールキャッチャーとして完璧なキック処理を見せ続けた田邉淳アシスタントコーチのサポートがあったのではないだろうか。

 

 

このフォラウの封殺と、点でのバトル制圧の2つで、クボタは1周遅れの開幕ゲームを勝利で終えた。次節では、開幕2連敗と予想外のスタートを切った神戸との敵地戦。優勝を争うためには総力戦を挑んでくるはずだが、東京ベイにも新たな追い風がある。おそらく、だが、すでに来日して所定の隔離期間を終えようとしているHOマルコム・マークス、昨季トップリーグでのレッドカードによる処分が明けるSOバーナード・フォーリーのメンバー入りが濃厚なのだ。昨年末の練習を見る限り、フォーリーのコンディションは万全だ。試合勘次第だが、この百戦錬磨のアイスマンの繰り出すパスが、チームのアグレッシブさをさらに引き出す期待感は高い。

 

東京ベイは、プレ-ズンを含めてコロナ陽性者を出していないチームだが、いつ、どこで、誰が感染するかは誰にもわからない。報じる側、ファンは、対戦する2チームが次週も無事に準備を進め、30人がピッチに立つことを祈るしかないが、この日の秩父宮のように、キックオフを迎えれば、感染の不安を忘れさせ、吹き飛ばすような痛快な試合を見せてくれるのは間違いない。