▲会見スタンバイ前のヤマハ発動機・大戸主将(左)と、おちゃめな山本くん。 

オンラインで久しぶりにクボタ立川主将と対面してめちゃ嬉しそう♡

 

 

24日に行われるトップリーグプレーオフ2回戦で激突するクボタスピアーズ-ヤマハ発動機ジュビロ(東京・江戸川区陸上競技場)が合同オンライン会見を開催。

クボタはCTB立川理道主将、PR北川賢吾、ヤマハはLO大戸裕矢主将、PR山本幸輝の4選手がディスりあり、笑いありの前哨戦を繰り広げた。

 

とりわけ熱い舌戦を演じたのがPRの2人。

このPRというのは不思議な〝生き物〟で、ラグビーすべてのポジションの中でも、自分たちの仕事にこだわりを持ち、ライバル意識も強い一方で、敵味方関係なく仲間意識も尋常ではない。

チームの飲み会でも、敵味方同席の試合のアフターマッチファンクションでも、PR連中だけが、いかつい体を寄せ合い、何やら真剣に、そして楽しそうに話し合っている風景は、ラグビーの日常でもある。

 

今回のオンラインでも、2人の巨漢は、PRならではのバトルを見せてくれた

 

 

 ▲こちら北川選手は終始マイペース。後は黙って押すだけだ!

 

 

おそらくは、プロレス同様の八百長、いや失礼〝ストーリー〟が事前にあったのだろうと推察できる。

 

山本が近畿大から8シーズン目、北川は同志社大から6シーズン目と実績を積む2人だが、実はともに関西大学リーグ時代から、お互いが直接組み合う対戦はなかったという。

今回は初めてのガチ対戦となりそうだが、前哨戦では〝お約束〟通り、2年後輩の北川が最初にジャブを繰り出した。

 

「因縁はないですけど、同じ関西大学リーグというのもあります。ジュニアジャパンでも一緒だったんですが、なんかチョイチョイ張り合ってくるので絶対に負けたくない」

 

この先制打に、関西人の山本が待ってましたとカウンターを食らわす

 

「4回生のときに近大が創部して初めて同志社に勝ったんですよね。そういったところも気持ち入れて、試合中ガンガンスクラム押していくんで、皆さん注目してください。あざっす」

 

九州男児の北川も負けてない

 

「僕が出た試合で近大に負けたことは、たぶんないと思いますね。ちょっと記憶ないですけど、へへへ」

 

さらに、山本が打ち込んでくる

 

「北川選手の印象は、結構ポーカーフェースというか…PRにしては珍しく涼しい顔して組んでくる。今回の試合では、押されて『やっちまったな』という顔をさせたいと思ってます!」

 

もう、ノーガードの打ち合いだ。

北川もノってきた

 

「幸輝さん、ちょっと押せたら、なんだか大声出したりとか、言い方悪いんですけどムカつくんですよね。だから今週の試合では、そうはさせないぞと思ってます」

 

山本パイセンも負けてない

 

「僕を調子に乗らせるんじゃないぞ、とだけ言っておきたいです」

 

最後は、2人ともこう意気込んだ

 

北川 「コーキさんには(これ以上)言うことないです。今週ぜったいに押すんで」

 

山本 「十分僕の気持ちは伝わったと思うんですけど、今シーズンいちばんのエナジーを持ってくるので楽しみにしてください!」

 

こんなディスリ合いを、もう記者もチーム広報もほったらかしで、楽しそうにやり合っているのが彼らの生態なのだ。

体も、コトバもぶつけ合うことで、スリスリと敵も味方も摩擦を高めるのが大好き。

 

それがPRだ。

 

だが、ヤツらは、ただの面白おかしい太っちょではない。

繊細で、自分たの仕事に誇りを持ち、同業者への愛とリスペクトを忘れない。

 

山本は、初対決となるであろう後輩を、こう評価している。

「ずっとスクラムを押されないというか、いい姿勢で組んでいるなというのはずっと思っている」

 

北川も「やはり1番の中でトップレベルに強いと思っています」 と敬意も警戒もしっかりと持っている。

 

立川、大戸両主将が共に「セットプレーがカギになる」と口を揃える、スクラム勝負の2回戦屈指の好カード。

8人の意地と誇りかけたバトルを、スタジアムで、中継で、ぜひ楽しんでほしい。

 

このような楽しい〝第1ラウンド〟を見せてもらった今回の会見。

去年の2月までなら、われわれメディアは、練習取材に赴き、そこで選手や監督の話を聞いて記事にするのが〝日常〟だった。

だが、コロナの時代のオンライン会見だからこそ、双方が試合前の週に会話をしながら取材に応える機会が生まれている。

そして、これは広報担当を中心とした両チームスタッフの思いが実現させた機会でもある。

 

クボタの岩爪航広報は、舌戦の後にこう語ってくれた。

「ウチのチームとしては、カード的にも注目されると思ったので、この試合を盛り上げたかった。試合を見る方が、より楽しみになっていただければいいかなと思って、今回ヤマハの林(優子)広報のほうに相談させていただきました。クボタだけ書けとはいいません。ヤマハさんも書いていただいて、両チームがこの試合で盛り上がって、見る方がより楽しみになっていただければいいかなと思います」

 

ヤマハ・林広報も「メディアに取り上げていただく機会が、コロナの影響もあって、試合当日もそうですけど、ものすごく減っている中で、特にヤマハは立地的にも県外の方に来ていただくのもなかなか難しい状況でしたので、すごくいい企画を仕掛けていただいた。監督、選手にも相談したのですけど、皆すごくポジティブな返事をしてくれて良かった」

 

今回のPR対決。結果的に大当たりの人選だったが、クボタでフロントローとしてプレーしてきた岩爪広報の仕込みなのだ。

「両チームの広報がスクラム大好き、PR大好きということで…あ、これ書かないでください」と苦笑する岩爪広報に、林広報も「誰も興味ないですね」と自嘲したが、このような情熱が新たな可能性を生み出すものだ。

 

もう1つ、タネ明かしをしておくと、林さんが以前はクボタでマネジメントスタッフをしていたことも、船橋-磐田の連係プレーが上手くいった伏線になっている。

クボタは4月に入ってから、試合へ向けたオンライン会見に着手している。

ちなみに、トヨタ自動車は2月の開幕から、毎週のようにコーチ、選手3人がオンライン会見を続けている。

 

リーグは終盤戦に向かっている中で、もちろん状況が許すのであれば対面取材を歓迎したい。

だが、感染が収束へ向かってない段階では、このようなアイデアをさらに多くのチームが考え、挑戦して、さらなる発信につなげてほしいものだ。

 

世論は、おそらく負けたら引退のヤマハ発動機FB五郎丸歩に注目が集まるのだろう。

取材も殺到しているようだ。

だが、この好チーム同士の好カードは、1人のスターにフォーカスを当てるだけでは、あまりにももったいない。

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どこを切り取っても、最上級のラグビーを堪能できる〝おいしい試合〟。

 

まずは、山本vs北川のディスリ合いで勃発したスクラムバトルを楽しむことにしよう