コロナちゃんに支配されつつあるこのご時世ですが、13日の金曜日に画期的な取材が行われました。といっても、個人的には、これが『当たり前』だと考えてますけどね。それは、テレビ電話を使ったサンウルブズの、クルセイダーズ戦へ向けた取材対応です。LINEとスカイプを使って、ブリスベン滞在中の選手に日本国内でごろごろしてる記者諸兄が取材するという、感染率0%の取材でした。
この日は、元トヨタ自動車のFB竹田宜純くん、早大4年のSH齋藤直人くん、天理大3年のCTBシオサイア・フィフィタちゃんの3人が取材対応に登場です。北半球から、じわじわとコロナちゃんが南下していく中ですが、ブリスベンはまだ穏やかで、竹田くん曰く「(海外滞在が長くなったことで)困っていることはないですね。日本食も街に出ればありますし、チームはすごくいい雰囲気でやらせてもらってます。(街中も)マスクしている人みてないですね」とフツーに日常生活ができていることを教えてくれました。
で、竹田くんといえば、帝京大時代は、無敵のチームの不動のFBに君臨して、多くのファンが将来は桜のジャージーを期待した選手。卒業後は名門トヨタ自動車に招かれたような逸材ですが、昨年11月によもやの退社を決めてサンウルブズ入り。トヨタの人事部を勤務を蹴っての選択には驚かされたものです。
この大決断について、こういう機会にと質問がでたのですが、竹田くんは、こう語ってくれました。
「ラグビー選手として、もっと出場機会がほしかった。ワールドカップ(RWC)日本大会で、(帝京大)同期の中村亮土(サントリー)ですとか、大学で一緒にやっていた先輩後輩がすごく活躍していたので、いい刺激をもらって、チャレンジしたいと思ってました。そこで、サンウルブズというチャンスを与えてもらったので、それはありがたいなと、すぐにチャレンジしたいと伝えました」
RWCが、こういう選手の歩んでいく道まで変えるほどのエネルギーを発散していたことを改めて感じさせる発言です。そう考えた選手は少なからずいたはずです。でも、大きなリスクを理解しながらも、3年後のRWCに挑戦するために、いままでとは異なる道を選んだ選手は、そう多くはいないはずです。この竹田くんの選択を前向きに受け止められる理由の1つは、竹田くん自身も触れている中村亮土くんの存在でしょう。
亮土くんのプレーを初めて見たのは、彼が鹿児島実業高3年のときに出場した花園でした。当時、新聞記者だった小生にとっては、九州勢は取材対象外(西日本のチームは大阪の記者が受け持つため)でしたが、試合会場を移動中に、偶然彼のカウンターアタックを見て足が止まりました。「九州、とくに鹿児島には、こういう天性のアスリートのような選手がいるもんだ」と、近くにいた高校ラグビー関係者に名前を聞いたときに、初めて「ナカムラ・リョウト」という名前を知ったのです。
もちろん帝京大時代も大きな期待を受ける選手でしたが、サントリー入社後は、所属チーム、日本代表でも期待通りという活躍はできませんでした。でも、2019年RWCへ向けた選手強化の一環としてプレーしたサンウルブズでの経験が、彼の本来持っていたポテンシャルに磨きをかけたことは間違いないことです。昨年のスーパーラグビー(SR)期間のある日、サンウルブズの千葉・市原ので練習を覗きにいくと、亮土くんが居残り練習をしていたのですが、それはお手伝いのスタッフが持つタックルバッグに亮土くん1人が何度もタックルをし続ける、かなりプリミティブなメニューでした。でも、こんな一時代前のしごきのようなハードメニューは、なかなか見られないご時世に、亮土くんは自分から取り組んでいたのです。
このメニューを見ていて感じたのは、選手はいつか、どこかのタイミングで、自分を追い込むことが必要だということです。ただ、SRの試合にでて、世界トップクラスの相手と直接ぶつかり合うだけじゃなく、その舞台に立つのに必要な〝正当な準備〟を、どこまでできるかが、一流選手になるための分水嶺だと感じたものです。
話が中村亮土物語に傾きましたが、帝京大時代、亮土くんにも負けない能力を見せ、ダイナミックなアタッカーとしては〝亮土以上〟とも思わせた竹田くんの決断だからこそ、期待感が沸きます。いま、大量に日本でプレーする外国人の中で、プレー時間が減っている状況よりも、実戦経験を増やして、自分の能力を磨き、高めようという決断に拍手を贈りたいし、最後の最後まで3年後のフランスでの活躍を諦めないで、なおかつ、自分を追い込んで、自らのリミットを突破してほしいものです。「必ずできる」ではなく「必ずやるんだ」という気持ちで、3年後に向けてチャレンジしてほしいですね。
その竹田くん、いままで味わったことのなかったSRでのプレーについても語ってくれました。
「試合をやる前は、テレビで見ている世界で、レベルが違うだろうなという感じはあったんですけど、練習を重ねて、ブランビーズ戦に出させてもらったときに、意外と日本人選手でもできるなというところもありました。僕は緊張で何回もミスしてしまいましたけど、フフ」
滑り出しとしては最高でしょう。世界最強リーグですからね。確かにミス、防御でもギャップを突いてきた相手を止めきれない場面などもありましたが、いままでトップレベルとはいえ、日本の大学、社会人リーグを舞台にプレーしてきたことを考えれば、この先に期待したいですね。
サンウルブズも、当然のように外国出身選手との厳しいポジション争いがあります。でも、その中で、竹田くんがどこまで自分に磨きをかけることができるかは彼次第です。もし、自分のポテンシャルのリミットを外すことができれば、盟友中村亮土が、あの夢舞台でみせた、世界に通じるようなタックルやアタックに匹敵するパフォーマンスができるはずです。
エディー(ジョーンズ)さんに現役時代の話を聞いたことがあります。「クラブの練習にいくときは、どんな日であっても、練習前の自分よりも成長して家に帰ろうと思っていた」。それでも、エディーさんは州代表までしかなれなかったのです。
能力がない選手は、どんなに頑張っても日本代表にはなれません。でも、竹田くんは、才能というGiftと持っている選手です。これは両親からの贈り物であり、もし存在するのなら、神様からの贈り物です。それを、輝かせるか、どこまで輝かせるかは、竹田くん自身に突き付けられた運命のようなものです。
どんな運命を竹田くんが掴むのか。期待して見守りたいですね。
