うちの部には、
「ひげ」
というシンプルな通称を持つ男がいる。
ひげの「長さ」ではなく、「密度の高さ」を評価されその名が付いたのであるが、
本人はいまいちそこの所を理解していない。
その通称で呼ばれると、
「このツルツルの顎にそのあだ名はおかしいだろ!」
などと言って、剃りたての顎を突き出してくるが、
密度の高い紙やすりを手で触ってみると、意外にもツルツルなのと同じように、
彼の自称ツルツル顎に木でもこすりつけていたら、
光沢のある素晴らしい作品が簡単に出来上がるであろう
と俺は思う。
ひげくんは現役で入学してきた2年生であり、
1浪した俺とは、1つ年下ながらも同期である。
しかしそのひげのせいで、
年相応に見られることは皆無と言っていい程無い。
というかひどい時は、30代に間違われることもある。
そんなひげくんと2人で大会会場を歩いていた時のこと。
他学部の2年生が1人で荷物番をしていた。
学部は違えど、いつも近くのコートでテニスをしているので、
俺達2人とは顔の知れた仲である。
前を歩いてきた俺に気付くと、ういーっすとばかりに手をあげる。
俺もそれに応えて通り過ぎようとしたのだが、
あろうことかそいつは、
俺の背後から現れた(生えてきた?)ひげを見た途端、
急に立ち上がり、
「ちわっす!お疲れっす!!」
いやいやおかしいだろ!
俺との扱いの差!
気付け気付け!2年のひげだよ!
他学部2年生「あれ・・・?ひげって2年生だったっけ・・・?」
ひげ「そうだよ俺らタメだよ!ていうかこの前普通にタメ語で話してたじゃん!」
とか言ってじゃれ合っている2人。
よく考えたらこいつら俺より年下じゃん!
どうせなら俺で間違えてくれよ!!
・・・意味もなく、ひげのひげを恨んでしまった。 hiro
