『戦う女性たちの世界史』関眞興 日経ビジネス人文庫 5/2読了
必ずしも有名人とは限らないが、歴史の転換に影響を与えた女性を取り上げた本。
これを読んでつくづく思ったのは、私はこういう本を好んで読むから、いつまで経っても歴史が面で捉えられず、線ですら捉えられず、点で見ているんだな、と……。
筆者の言っているとおり、取り上げられているのは必ずしも有名な方だけではないのですが、やはりというかなんというか、世界史の教科書と同じく、いわゆる西洋と中国がほとんど。
中国以外のアジアやアフリカ、南アメリカ他、世界史であまり取り上げられていない国への言及はないなぁというのが気になりました。
そういうところのが読みたい。
あとはジャンヌ・ダルクだと、ジル・ド・レに触れないわけにはいかない気がするんだけど、名前すら出てこないとか。
似たような本をいろいろ読んでいるからこその弊害だなぁ。浅くさらっと、でもいろんな人やことを取り上げている本はとっつきやすいんだけど、もうちょっと掘り下げて読まなきゃいけないな、と痛感。
でもきっとまたこういう本を手に取ってしまうと思う。
『ムーミン谷の彗星』トーベ・ヤンソン 講談社文庫 5/2読了
ムーミンシリーズはこれまで読んだことがありませんでした。なので、刊行順とは別としてこれが実質第1作、と聞いたので手に取ったのですが、私の知ってるムーミンとは違う……。ちゃんと読んだことがないのに知ってるのとは違うゆーても、そんなの知らんがな案件ですが。
私の知っているムーミンは、ムーミンは家族とスノークのお嬢さんたちと友達と毎日愉快に楽しく、そしてときおり訪れるスナフキンと短い旅をして過ごす、というイメージなのですが、あのー失礼ながらこの本のムーミンたちは問題を先送りにし、なんかあったらお母さんが解決してくれる、他は顧みず何はともあれ好きになった子(スノークのお嬢さん)が最優先。という正直お友達にはなりたくないタイプと思ってしまった。
彗星がやってくるというかつてない大災害の予感を目の前にしてパニックに陥ってるからある程度はしょうがないといえばしょうがないんだけども。
刊行順に読んでれば良かったなぁ……と思い、次の本に手が出ない。だって次に準備している本も『小さなトロールと大きな洪水』ってタイトルからして、今回のこの本と同じような系統に感じてしまったのです。
でもやっぱりムーミンシリーズは気になるし、ちょっと寝かせて、刊行順での第一作を手にしてから、先を読もうと思います。
『不死探偵事務所』縞田理理 新書館 5/3読了
この本出てたの知らなかった。ということで、緊急事態宣言が出て本屋さんがあまり開いてなかったので唯一開いていた本屋さんで注文取り寄せしました。注文するのって久し振りでちょっと緊張した。
魔法が普通にある世界。だけど魔法を使う能力を持っている人は限られている世界。魔法を使える方が社会的な地位が高い世界。
主人公のシモンは全く魔法が使えず一発逆転を狙って、探偵のアンブローズ・ネロの命を狙ったが、あっけなく返り討ちにあいネロの奴隷として契約されてしまう。
バディものだと作者さんも言われていたのでそういう目で最初から見ていたら、なかなかバディぽくならなくて頭の中が???てなってましたが、これはバディがバディになって行く話でした。
ここで終わりとのことなんですが、このあとバディとしての話を読みたいなぁと思っちゃった。
私は本を読むときに最低限の情報以外は入れずに読みたい方なので、あまり帯とかも読まないんですが、これ、帯で思いっきりネタバレしてるな。
これまで読んだ縞田理理さんの本とは全然違った感じ……いや、そうでもないかなぁ。これまでは群像劇ばかり読んでたからそう思うのかな。
縞田理理さんの本でどうやらまだ読んでない本もあるみたいなので取り寄せてみよう。
『後宮の烏 4』白川紺子 集英社オレンジ文庫 5/3読了
本屋さんに行ったら4巻が出ていました。3巻までは図書館で借りてたんだけど、図書館もしまっていていつ借りられるかわからないので買っちゃった。
3巻までは、これいつ終わるのかな、この巻で終わっちゃったらどうしようと思いながら読んでたんですが、4巻はそういうあたりはどっしりとしていて、どこまで広がるんだろうなこの話、と思いつつ読んでいます。
巻頭にこの世界の地図も載っていて、頭の中でいろいろ考えるのも楽しい。
烏妃のところに事件が持ち込まれるのは変わらないけれど、烏妃に関わることと烏妃としてではなく彼女自身に関わることが少しずつ深くなって行くのが楽しいです。
ただ個人的には、あまり皇帝とどうにかなってほしいとは思っていないんですよねぇ。
彼女と彼の行先もこの話の大きなテーマの一つになっていくんだろうけれど、この話にあまり色恋を求めていないので。勝手な話だけれど。
それはそれで素敵なことだと思うけれど、大前提として、皇帝の後宮には何人もの女性がいるわけで、そういう状態で一番大事な人ができると他の女性はどうなっちゃうの?なんて考えてしまう。
烏妃と出会ったことで皇帝自身の心も成長していっていると思うし、烏妃も成長していっていると思うし、2人がそうなったとしても必然かなとも思うけど、それでもいろいろ気になっちゃう。
まあ一読者が言ってもどうなるものでもないんですけども。
ともかくも、次の話が楽しみなので早く出て欲しいです。
『夜ふけに読みたい不思議なイギリスのおとぎ話』吉澤康子+和爾桃子 編訳 平凡社 5/4読了
グリムやアンデルセンやラングやいろんな方が編纂してきたおとぎ話や童話と言われるお話たちの中でも、割と初期のままの、つまり原型に近いお話…なのかな。
タイトルには『イギリスの』とありますが、ノルウェーやデンマークのお話も混じってる。逆にアイルランドやウエールズはないのかな。続刊でその辺もあるんじゃないかと思います。少なくとも次の次の巻はタイトルにもアイルランドのお話とあるし。
原型に近い、というのは、どこかの書評でそう読んだ覚えがあるのと、よく知っている話で尻切れとんぼ(と勝手に思ってるだけかもだけど)に終わっているものがあるから。
たとえば「赤ずきんちゃん」は、この本では、おばあさんに続いて赤ずきんちゃんも狼に食べられて終わっちゃう。
猟師が助けてくれる描写どころか、こんなふうにならないように気をつけましょう的なものも何もない。食べられてしまいましたとさ。おしまい。
言い方悪いけど、説教くさい部分とか救いになる部分がないっていうのが、原型に近いんじゃないかと思った理由。
それより何より、赤ずきんちゃんがノルウェーのお話ってことの方にびっくりしましたが。
他にも読んだことがあるお話、読んだことのないお話、どこかで読んだかもしれないお話がたくさん。
「フォックス氏の城」は青髭を思い出したし、「イグサのずきん」はリア王の元ネタとされているみたいだし、それとは別にマレーヌ姫を思い出したし。
いわゆる昔話やお伽話、神話や童話と言われているお話が大好きなので、続刊もその次も読みたいと思います。
『有閑貴族エリオットの幽雅な事件簿』栗原ちひろ 集英社オレンジ文庫 5/5読了
舞台は19世紀末のロンドン。幽霊男爵と陰で呼ばれるエリオットは心霊好き。交霊会という交霊会に顔を出し、かと思えば社交界で浮名を流し、風雅で珍奇なものを集める博物学的な趣味も持つ。
オカルト事件に目がない彼の目的は、インチキ霊媒師たちの嘘を暴くこと。
生者も死者もほとんど同じように見えてしまうエリオットと、彼の助手でそれなりに見えるコニー。コニーは人間扱いされていなかった過去にエリオットに救われ、今ではエリオットを崇拝しているけれど、エリオットもコニーがいることで救われている部分があるんだな。
コニーのエリオットへの心酔ぶりは読んでいてこちらが気恥ずかしくなってしまうところもあるんだけど、しかたがないな、この2人の関係性なら。と思ってしまう。
エリオットはいろんな理由で「まともな」恋や結婚をするつもりがなさそうなんだけど(それでもいつか雷に打たれたみたいに恋をするかもだけど)、彼の友人のヴィクターの恋の話は見てみたいなぁ。当時の時代なりにとても保守的な考えを持つヴィクターが、彼が考えているのとは正反対の女性に惹きつけられて右往左往するのとか見てみたい。本筋からはずいぶん離れるけど。
栗原ちひろさんは前に読んだ悪魔交渉人シリーズもそうだったけど、死と近い話が多いのかな。と思ってたんですが著書を見るとそうでもなさそう。私が見る機会の多かった話が、そういうのが多いのかな。
他のシリーズも読んでみよう。
『ハリー・ポッターと賢者の石』J・K・ローリング 静山社 5/17読了
そういやシリーズを通して読んだことはなかったな、といまさら改めて読むことにしました。とはいえ、この1巻は読んだはずなのに記憶ってあてにならないですね。後半全然覚えてないんだもん。
ハーマイオニーって最初はこんなに嫌な感じだったっけ?とか、スネイプ先生ってこんなに早くハリーのこと助けたりしてたっけ?なんてびっくりしながら読みました。
覚えていないなりに、自分が嫌だと思った部分は覚えていて、それを再確認するのはちょっと辛かったなぁ。
嫌な部分は、おじさんたちがハリーのことを頭っから完全に否定して話も聞かないところ。話を聞いて受け入れられないんじゃなくて話を聞こうともしないのが嫌。キャラクター造形という意味合いでは必要なのかもしれないけれど、私の嫌いなタイプそのまんまで、どうしても受け入れられなかったな。
あと、当時と違って余計なことを考えてしまいました。
寮に振り分けられるときは個々人の性格や資質によるみたいだけど、完全なる善人や完全なる悪人がいないように、全ての人はいろいろな才能や資質が入り混じっていると思うんですよね。
つまり、スリザリンの人にも、ハッフルパフに近い人、レイブンクローに近い人、グリフィンドールに近い人がいるんじゃないかって。もちろん、他の寮の人たちだって、そんなふうに他の寮の資質に近い人もいるんじゃないかと思うんですよね。
そういう人たちは、たとえばスリザリンらしさというものに違和感を抱くことだってあるんじゃないかなって、そんなふうに思ってしまいました。
先の方まで読んだらそういう部分もあるのかもしれないけれど。
というわけで、今度こそ、きちんとハリー・ポッターを読みとおしたいと思います。
『親王殿下のパティシエール2 最強の皇女』篠原悠希 ハルキ文庫 5/21読了
清の乾隆帝の第17皇子愛新覚羅永璘のお抱えパティシエール見習いのマリーのお話。
今回は最初からマリーの頭を悩ますことになる新入りだけど兄弟子が登場したり、永璘も彼の正妃の紅蘭もお気に入りの公主様が登場したりと2巻にして盛り沢山。
新入りだけど兄弟子の王厨師は、当時の男性の価値観でガチガチで、女性のマリーが同じ厨房で働くことがどうしても納得できない。
1巻の登場人物たちもいろいろと不満を持っていたようだけれど、王厨師ほど頑なではなかったのか、それとも永璘と一緒にフランスから清にやってきたからなのか。
ともかく、厨房がマリーにはとても辛い空気になってしまったのは読んでて辛かった。
とはいえ、作中でもあったように禍福は糾える縄の如しというように、マリーの厨房ができたのは、パティシエールとしては一歩前進。
でも清の国の厨師として認められるにはやはり厨房での修行は欠かせないので、その部分においては前途多難。
きっとマリーならばなんとかなるんだろうとは思うけど。
そして今回登場のもう1人の人物の和孝公主が好きです。頭が良くて勝気で美人で男性よりも優秀でもしかしたら皇子たちの誰よりも乾隆帝に期待され可愛がられてきた、という彼女の属性から想像していた女性像とは違っていて、めちゃくちゃ可愛い。彼女には心から幸せになってほしいなぁ。次からも彼女が出てきてくれると良いな。
そんななかなかに強烈なキャラクターに目を奪われていますが、話の中身は結構重い。
男女差別や文化の違い、宗教観がこれでもかと押し寄せてくる。
ただ、男女差別にしろ外国人に対する目にしろ、その当時はそれが当たり前とされていたんですよね。現代に生きる私からするととてももどかしかったり腹立たしかったりするけれど、そんな考え方だったこと自体を否定して、なかったことにしてはいけないと思うのです。
あったことはあったこととしてちゃんと見つめて、これからの私たちはそういったことを無くす方向へ進むということ。
そんなこんなもありますが、これからマリーは、そして彼女を取り巻く人たちはいったいどうなって行くのか、とても楽しみです。
『大名倒産 上・下』浅田次郎 文藝春秋社 5/27読了
越後の小藩・丹生山松平家を継いだばかりの小四郎は、ある日、藩が借金だらけで幕府への上納金さえろくにないということを知らされる。それも、幕府の重職からー。
浅田次郎さんの本は読んだことがなくて、でもななにーのインテリゴロウで稲垣吾郎ちゃんと対談しているのを見て面白そうだと読んでみることにしました。吾郎ちゃんと話している浅田さんが、なかなかに偏屈じいさんで、でもなんだか憎めないというか可愛いところもあって、そして自分の書いた本に自信があるところが気になって。
下手に謙遜することなく、自分の本のここが面白いと言えるのはすごいなぁと。
あらすじを読んでいた段階では、超高速参勤交代とかそういう系統なのかと思っていましたが、ちょっと違う。
まず敵は無茶振りをする御老中だとか、悪徳商人だとか、悪家老だとかそういうのではなく、実は家督を譲って隠居を決め込んだ先代藩主。つまり、主人公・小四郎の父。そして彼に忠実な家老を含めた家臣たち。
先代は借金で首が回らなくなった藩をなんとかすべく、計画倒産を狙っていたのです。
そこで白羽の矢が立ったのが、妾腹で本来であれば後継候補に名前が挙がることすらなかった四男の小四郎。当然、そういう教育を受けたこともなく、江戸城に上がる前に通り一遍の礼儀作法を叩き込まれたくらい。
先代は小四郎とはほとんど一緒に暮らしたこともなく、つまり取り立てて小四郎に対する情もない。小四郎は藩を継ぐ前には借金のことも知らされず、事が露見してからもどれくらい借金があるかもろくに知らされず、要は小四郎は詰め腹を切らせるテイのいい人身御供として選ばれたのです。
その小四郎は生真面目で、藩を継いだ際、近習として取り立てた幼馴染みの友人二人と共に、何とかこの苦難を乗り越えようと奔走します。
大丈夫かな、この人たち、と思ってしまうくらい頼りないスタートでしたが、小四郎の人柄や熱心さに絆され、次第に周囲の人たちも(神様も)小四郎に肩入れしー。
とにかく登場人物が多く、主人公は小四郎ですが、小四郎を中心とした群像劇の要素もあります。
小四郎の兄と兄嫁のエピソードは微笑ましいのですが、兄嫁の父が曲者…かと思いきや。
この兄嫁の父が好きでした。あのー、なんというか、まあいわゆる脳筋ですね。このタイプ好き。
あまりにも登場人物が多すぎ、話がいつの間にかかなり壮大に広がっていったので、続編が読んでみたいと思いました。群像劇のようだと言いつつも、最初から出ている小四郎の近習の幼馴染二人はあまりスポットが当たってない。
他にも、下巻になってから登場した越後の藩の人たちとか、そこから派生した船主や上方商人のことも気になるし、水売りの先の話も気になります。
小四郎がこれからどんなお殿様になっていくのかも、どんな奥方様が来るのかも。
続編、書いてくれないかなぁ。
『ガニメデの優しい巨人』J・P・ホーガン 創元SF文庫 5/30読了
『星を継ぐもの』の続編。
とはいえ、あまりにも久し振りに、十数年振りくらいに手に取った、ような気がする。なので、前作を思い出すのに相当時間がかかりました。
月面で発見された真紅の宇宙服を着た遺骸は、年代測定によると死後5万年を経過していた。
チャーリーと名付けられたこの人物、そして彼が属していたはずの集団は、チャーリーが月で発見されたことからルナリアンと呼ばれるようになった。
ルナリアンの正体を探る調査に携わることとなったヴィクター・ハント、そしてクリスチャン・ダンチェッカーは、チャーリーが残したと思われる日記やチャーリーの携行食料らしきもの、その他様々なものを調べるが、なかなか謎は解明しない。
さらに木星の衛星ガニメデを訪れた調査隊が、宇宙船の残骸と、地球人、そしてルナリアンとは全く体格も何もかも違う遺骸を発見したことで、さらに謎は深まってしまうー。
ハントとダンチェッカーはその謎を解くことに成功しますが、その続編となる『ガニメデの優しい巨人』で、二人はガニメデで発見された遺骸と同種族のガニメアンと遭遇します。
ガニメアンの体格は地球人と較べるとかなり大きく、表題のガニメデの優しい巨人とは、すなわちガニメアンのこと。
そして、なぜ『優しい』かというと、ガニメアンは争いを好まないから。
好まない、というのはまだ控えめな言い方で、彼らには闘争本能そのものがないのではないかと思われます。地球人が人類同士争うことすら理解できない。そんなことをしたらお互い傷つけあってしまうかもしれない、殺してしまうかもしれないのに、どうしてそんなことをするのか理解できないのです。
闘争本能どころか、競争意識すら彼らの理解の外にある。
虚栄心もどうやらないみたいで、ガニメアンについての描写や、彼らが地球人を見て困惑しているところを見ると、たとえば嫌いな人が失敗するのを見て溜飲が下がるというような、自分の嫌な部分が浮かび上がってくる感じがしてとても居心地が悪く感じてしまいました。
とはいえ、それはこの作品自体の魅力を削ぐわけではありません。あくまで、読んでいる私自身がそういう嫌な部分を持っているということ。
ガニメアンはとても優しいし、どうしてそういう種族となったか、という考察も作中できちんとなされていて、このお話自体はとても面白かったです。
地球人とガニメアンの差や、ガニメアンの抱いた罪悪感や、おそらく地球人はそうは思わないんだろうな、と思ってしまうことも含めて、このお話はとても細かいところまできちんと考えられていて面白かった。
このお話は、さらに『巨人たちの星』に続いているので、そちらも読もうと思っています。今度こそ、話を忘れる前に読みたいな。
『錬金術師の密室』紺野天龍 ハヤカワJA文庫 5/31読了
世界に7人しか存在しない錬金術師が強い力を持っている世界。当然、錬金術師を擁する国家は他の国家に対して大きな発言権を持っている。
主人公のエミリアはアスタルト王国王立軍に所属する若き軍人。
彼は、軍務省錬金術対策室室長にして、自らも錬金術師であるテレサ・パラケルススと共に、水上蒸気都市トリスメギストスへと出向くこととなる。トリスメギストスは島が丸ごと大企業メルクリウスの土地で、メルクリウスのお抱え錬金術師フェルディナント三世が不老不死を実現し、その公開式典に立ち会うよう依頼があったのだ。
そのトリスメギストスの三重密室で死体が発見され……。
嬉しくなってしまうくらい色々てんこ盛りの設定ですが、読んでてすごく楽しかった!
作者の方は、ラノベで描いてらした人。最近、早川ではラノベの作者にSFやミステリを書かせているようですね。
ラノベ出身だけあってお話はとても読みやすいし、作者の方はもともとミステリが好きな方みたいで、錬金術師とかエーテルとか出てきますがしっかりミステリしているので、ミステリとスチームパンクの両方が好きな私はあっさりホイホイされました。
テレサ・パルケルススはすれ違う女性が思わず顔を赤らめてしまうほどの美形で、女性に優しく、可愛い子(たぶんその範囲はかなり広いと思われる)にはすぐに甘い言葉をかけるようなタイプ。ただし、女性。
頭がよく能力はあるが、態度と性格が悪いので、軍部からは隙あらば排除しようと画策されています。が、女王の覚えめでたいため、なかなか直接は手が出せない。
エミリアはそんな彼女のお目付役であり、何か不祥事があれば報告するよう情報部から密命を受けており、この任務が成功したら、栄転が待っている。
そんな2人が巻き込まれた殺人事件をどう解決していくか。
今作品は、ミステリとしてきっちり完結していますが、テレサとエミリアという2人がバディになるまでの物語になっています。
もしかしたら続くのかな。続いて欲しいな。
そう思いながら読みました。
「世界に7人しかいない錬金術師」という設定にはまだまだ書かれていないいろいろが潜んでいそう。だって作中で言及される人たち、7人いないよね?
そういうあたりも気になります。
そして私はエミリアちゃんが好きだ! 設定やらなにやら、私が気軽にホイホイされる要素がたくさん詰まっていて、エミリアちゃんのことも先生(テレサ)のことももっといろいろと掘り下げてほしいし、もっといろいろ読みたいです。
続きが出ますように。
以上、2020年5月に読んだ12冊(上・下巻はそれぞれ1冊と数えています)の感想でした。
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とは言っても、緊急事態宣言で映画館がしまっちゃったので、宣言が出る前に滑り込みで見た1本と、連休中に配信で見た1本、あわせて2本だけですが。
『一度死んでみた』
タイトルとポスターを見る限り特に興味はわかなかったんですが、予告で面白そうだったのと、私の見る限り評判がよかったのとで見ることにしました。
主人公は広瀬すずちゃん。堤真一さん演じる父親が嫌いで嫌いでしょうがない薬学部の学生。まったくやる気のないまま、しかたなく父親の製薬会社の面接を受けるシーンから始まります。
すずちゃんはデスメタルバンドのボーカルとしても活動していますが、そちらはどうやら芽が出ないみたい。お父さんは自分の製薬会社に入社してほしいと思ってるけど、大っ嫌いなお父さんの会社になんか絶対に入りたくないと意地を張っています。
そんななか、お父さんが突然亡くなったと聞かされます。
タイトルのとおり、亡くなったはずのお父さんですが、実は一度死んでもう一度生き返ることのできる薬が偶然開発され、その薬を飲んでしまったのです。
しかし当然それは承認された薬ではなく、会社の乗っ取りをたくらむ連中は、一度死んだものを本当に殺したって罪にはならないだろうと急いで償却しようとし、すずちゃんと事情を知る社員とはそれを何とか阻止しようとし……。
死を扱ってはいるけれどコメディで明るいお話。しかもうっかり泣かされそうになったいい話だった。
とても伏線の貼り方がうまい映画だなぁって思いました。え? さっきのこれって伏線だったの!? というのがたくさんあって、単なるネタだと思っていたことがすべて回収されてすごかった!
あと広瀬すずちゃんの歌はよかったです。声可愛かったな。
すずちゃんと一緒にお父さんを生き返らせようとする社員が吉沢亮くん。この二人がみててすごく可愛かったです。
それとキャストが豪華! カメオ出演っていうのとは違うだろうけど、ほんの一瞬、ろくに台詞もないような役で本当にいろんな人が出てくるの。途中からは次はだれが出るんだろうって、そういう意味でも楽しい映画でした。
『ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー』
映画館も閉まってしまい、せっかくなので見逃した映画を観てみようと初めて配信に手を出しました。
面白かった!
この映画はマーベルシリーズとしか知らず(最初はそれすら知らなかった)、予告とか見てもなんとなく素通りしてたんですよね。
アベンジャーズ・エンドゲームでちらっと出てきたことと、あとは2のリミックスの方の予告映像くらいしか知らない。
リミックスのときも、予告をみて面白そうだとは思いつつ、結局見なかった。
面白いという評判も聞いてはいて、だったらリミックスだけでも観に行っとけば良かったなぁ。当時は、この第一作を観ていなかったから躊躇したんですよね。
でも評判がいいという以外の事前情報を入れなかったのが良かったかも。
え? この人こんなキャラだったの? この人こんな背景があったの? って何もかもにびっくり。
ガモーラ以外はなかなかになかなかな脳筋が揃ってて、そこも好きです。
第3作は、ここにソーが加わるんですよね。さらに脳筋度がアップしてほんと楽しみだ。
でもまずはリミックスを観てみようと思います。
以上、2020年4月5月に観た2本の感想をまとめてみました。
なんてこと書いてますが、特にやってないんですよねーおこもりって。私は職種的に引きこもれないので、ほぼ毎日仕事にちゃんと行っています。
ほぼ毎日、というのは、それでも在宅勤務をやりなさいと人事からお達しが出たので、週一くらいで在宅勤務。原則二日に一度って言われてたけど、部署ごとの事情もあるし、うちは週一くらいのゆるりとした在宅勤務でした。
うちの県は緊急事態宣言は解かれたので、もう在宅勤務は絶対しなきゃいけないものではなくなったけど、でも今月いっぱいは週一在宅勤務を続けてやろうともくろんでおります。
どうやら私は仕事が嫌なんじゃなくて、通勤が嫌なんだって気づいてしまったよ……。
帰り途はいいんですけど、家に居ながらにして仕事ができるんだったらそれでいいやん。
まあ6月以降は担当業務が変わるので、そうも言ってられなくなるんですけどもね。
6月以降は仕事が忙しくなって、これまでは残業禁止だったのが、残業しても仕方ないよね、予定分の業務が終わるまで帰れないから(業務が終わったか決めるのは私ではなく他部署)になってしまう。
業務は減らないのに残業禁止ってのも逆ブラックだよなって思ってたけど、今年はいろいろと胃の痛い仕事が続きそうです。いや、いまのスケジュールだと来年もだな……。とはいえ、道筋は今年度中につけないといけないので、まずは今年を頑張らねば。
新型コロナはいまは収束方向ですが、きっと秋以降にまた波が来るんだろうな、と覚悟はしてます。だからきっと今年はあまり大きなイベントはないと思うんですよね。
お仕事頑張って、なんなら残業代稼いで、また来年以降のイベントに備える方向をめざすよ。
そして新型コロナのおかげで変わったことがいくつか。
ひとつは、布マスクを作るようになったこと。
とはいえ、うちにはミシンはないし、私はお裁縫は学生の頃の家庭科の授業くらいしかやったことないので、ガタガタの縫い目ですが、それでもちゃんとマスクの形になるんだよ。すごいよね糸と針って!
最近はちらほらマスクを店頭で見るようになってきましたが、うちの地方ではいまだドラッグストアでは見られない。先日近くのドラッグストアに入ってたのは入ってたんですが、どこで作ったんだこれ?なもので買いませんでした。周りの人も誰も手にとってなかった。
コンビニではユニ・チャームのを見かけたので、一度買いましたが、それからまた出会えない。
街中で見かけるマスクって、ほんとどこのだれが持ってたんだろうね、あれ。ドラッグストアに出回らず、雑貨屋さんやら商店街の空き店舗の前やらで売っているってのが闇を感じますね。
政府がマスクを配るって話が出てからネットに出回ってるのも徐々に値段下がり始めたし、街中で売ってるマスクも見るたびに値段下がってるし、やっぱりあれって効果あったんだなーと思ってます。なんで布マスク配るって言ったから値段下がるんだって言ってる人いたけど、要は株価とか先物取引と同じですよね。情報戦なんですよ。株も先物取引も為替相場も、情報が出たらすぐに動くし、情報が出回ったときにはもう遅い。その頃には仕込みは終わってるし、最初に動いた人たちはもう売り抜けてる。私の知り合いは何度か先物で大損こいてるからその辺の話は何度も聞いた(笑)。
需要と供給のバランスとかいうけど、儲けたい人は実際に需要が動き始める前に商品を仕入れて、スタートダッシュで売ってしまって、市中で本当に取引が始まる頃にはもう撤退してるんですよね。いまごろ街中で出てるのは、つまり情報が遅くて売り抜けられなかったか、儲けようとして仕入れていたのが、政府のマスク配るよ、であわてて出したはいいけど、仕入れ過ぎてたってことだろうなーと思ってます。
閑話休題。
まぁそんなこんなで、ゆるゆるとマスクを作ってます。作ろうかなーって思ってたタイミングで呉服屋さんの前を通ったときにさらしが安く出てたんですよね。おかげで一反あった(ちょっと使った)んで、まだまだ当分作れますね。とはいえ白いのばかり作ってても面白くないなーって思って、いまは裏地をさらしに、表地は100均の手ぬぐいを使ってます。100均の手ぬぐいってお高い手ぬぐいと較べると生地が薄いんですが、そのぶん夏にはいいと思うの。ゴムは手に入れられなかったのでコットンヤーンで伸びる編み方で紐を編んでゴムの代わりに。
いやー素人でも結構何とかなるんだなー。最近はだんだん楽しくなってきたので、どれくらいの目で縫うといいかなんて試してみたりしてる。個人的には1mmくらいで縫うと下手でもガタガタ具合が目立ちにくいけれども、当然ながら時間がかかるんで、2mm~3mmくらいかな。それで一度並縫いで縫って、二度目に隙間を埋める感じで縫うのが、じょうぶさと下手ながらもそれなりのスピードで縫えるのとでいいんじゃないかなーと思ってる。
自分用だけ縫えればいいので、のんびりでもいいし、いろいろ試せるし、これはこれで楽しいです。
洗ってまた使えるマスクが一週間分くらいあるってだけで気持ちにゆとりがあるんですよね。さすがに秋冬にはマスクの流通も復活してるだろうけど、その頃には再度の流行(+インフルエンザも)来ると思うから、また品薄にならないとも限らないしね。経産省のHPに載ってる布マスクの洗い方もチェックしたし、煮沸消毒のやり方も覚えたよ。
そのうちに、ですけど、さらし生地でまた作りたいな。そして白い糸で刺しゅうするの。昔から白い生地に白い糸で刺繍っていうのが好きで、自分でもやってみたいと思ってたんですよね。生成り地に白とかオフホワイトとかもいいなぁ。
もっとうまくなったら、秋・冬に向けてそういうのも作ってみたいです。
もう一つ最近新しく始めたのが、地上波以外の放送を見ること。
ひとり暮らしを始めてからずっと地上波だけでやってたんですが、この際、といろいろ見始めました。といってもまだアマプラとかU-NEXTで配信を見てるくらいなんですけど。そのうちネトフリとDisney+に入りたいですね。ほかにも見たいのいっぱいあるんですが、あんまりたくさん入っても見る時間ないしなー。
とりあえずは、U-NEXTでDOCTOR WHOを見ているので、それが終わったら次のステップに行きたいですね。
DOCTOR WHOはBBCでずいぶん長いことやってるシリーズで、SFになるのかな。SFのネタとファンタジーのネタとホラーのネタが入り混じってる。タイムトラベルあり、オカルトありと自由。それこそ1960年代に始まったシリーズで、中断を経て2005年に復活。
私が見ているのは2005年のシリーズ1。
最初に観たのはスターフライヤーの機内でした。スターフライヤーは各座席にモニターがあって、そこで無料で見られるドラマシリーズとしてDOCTOR WHOがあったんです。はじめは、なんだこれ?くらいで見始めたんですが、この何でもありの世界がめっちゃツボ。
主人公のドクターは地球人ではなくて、死んだとしても復活できる(本当に死ぬこともあり得るけど)んです。復活するときに見た目も年齢も体格も変わってしまう、という設定なので、俳優さんが変わることも最初から織り込み済み。
スターフライヤーで見たのは、たぶんシリーズ8やシリーズ9。そこまでたどり着くのはまだまだ先の話だけど、毎日1話か2話ずつ見ています。見なれたドクターが出てくるのはまだ当分先だけど、そこに至るまでも楽しみ。
ただ、私はすぐに集中が途切れる方なんで、映画はやっぱり映画館で観たいなぁ。近くの映画館は今週から復活しましたが、上映されているのは休館前にやってたものがほとんどなので、また新しいのが封切られたら通いたい。
それまでは配信でDOCTOR WHOと以前見逃した映画を見たいと思います。
1冊目と2冊目は手帳によると3月末くらいに読んでたみたいですが、前回入れ忘れたので4月分にまとめます。
『思考の整理学』外山滋比古 ちくま文庫
前々から気にはなってたけどなかなか手を出せなかった本。たまたまTwitterで筑摩書房さんが「あなたの『思考の整理学』は第何刷?」というようなことをやっていたので、この際、と思い切って手に取りました。
東大・京大生にものすごく読まれているという本。タイトルのとおり、考えること、考えを突き詰めることについてのエッセイになるのかな。自分が学生の頃に出会いたかったなぁ。せめて就職してすぐくらいに。
この年になってあれこれ失敗もしてようやく思い至ったようなこと、それ以外にもなるほどと思うようなことがたくさん書いてある。とはいえ、若い頃の謎の万能感に満たされた頃に読んだとして、あの頃の鼻持ちならない自分が素直に聞いたかどうかはわかんない。
このエッセイには、外山滋比古さんの別の著書に関することがいくつか書いてあって、その中の『異本論』というのがとても気になります。
簡単に言ってしまえば、小説なりなんなりの創作物は、出来上がって誰かに読まれた時から、読者の中で変容し、別の作品となってしまうということ。さうしゃと読者は同じ人ではないし、ならば一つの言葉を取ってみても、必ずしも作者が意図したものと読者が受け取ったそれとが同じ意味を持つとは限らない。だから誰かに読まれた時から、書いたものとは別の物語が生まれていく、ということのよう。
数年前から私もそんなようなことをぼんやりと思っていて、それがこの方のシンプルかつ明快な言葉で言語化されているんだな、となんだか嬉しくなりました。『異本論』を始め他の本も読んでみたいです。
この本の最初は、学校で教えられたことをきちんとこなせる成績のいい人をグライダーに、自分で考える力のある人のことを飛行機に例えて説明しています。高いところから飛び立ち風に乗って飛ぶ(自力で飛び上がることはできないけれどそれなりの高度を保って遠くまで行くことはできる)グライダーと、自力で地上から飛び立つことのできる飛行機の違い。
この本、第1刷は1986年なのにいまでも全然古びていない内容が、シンプルで明快でわかりやすい言葉で語られているので、すっと自分の中に入ってくるのです。
『レディーズ・メイドは見逃さない』マライア・フレデリクス コージーブックス
舞台は1911年のアメリカ。主人公のジェインは以前使えていた主人が亡くなり無職になったが、以前の主人の姪であるタイラー夫人の紹介で新たにニューヨークに引っ越してきたベンチリー家に仕えることとなる。いわゆる成金で上流階級や社交界のことは何もわからないベンチリー家の、主に娘二人を世話するメイドとして。
この本を読む前は、たぶん同時代(かちょっと後の時代)のナンシー・アスター子爵夫人に仕えたロジーナ・ハリスンの書いた『おだまり、ローズ』のように、華やかで型破りで痛快な主人とやっぱり型破りなメイドの話かと思っていたんですが、読んでみたら全然違った。
ナンシー・アスター子爵夫人は最初の女性議員だったから『おだまり、ローズ』は当時の社会情勢のことにも触れられているんだけど、あれはあくまで上流階級の目で見たことだったんだなぁ。ローズは使用人だけれど、いま考えてみるとあの本に書かれていたことは「子爵夫人の使用人」の目で見て考えているような感じがする。
『レディーズ・メイドは見逃さない』はまだ女性参政権が与えられる前の、そういった権利を得るために戦っている階層の人たちから見た話。こちらのメイドのジェインは、上流階級にも入り込んでいるしそういう考え方にも慣れているけれど、戦っている人たちが近しい友人にいるからか、どうしてもその問題にも直面する。ジェイン自身はそういった活動はしていないけれど、ジェインの友人はイタリア移民で参政権のことについて活動もしているし、ジェイン自身の境遇も育った環境も華やかなものとは程遠いから。
今回、ジェインが使えることとなったベンチリー家も成金で、社交界で受け入れられているとは言い難く、上流階級は上流階級でいろいろと闇を抱えている。
コージーミステリというにはとても重い背景を背負ったお話だったので、びっくりしました。
ベンチリー家は何とか社交界に溶け込もうとし、ジェインも奮闘しているところ、次女のシャーロットが突然婚約してしまう。しかも相手は、おそらくは幼馴染のタイラー家の娘と結婚するであろうと思われていた、タイラー家と長い付き合いであるニューサム家の長男ノリー。家柄もよく男ぶりもいいノリーとの結婚をシャーロットは心待ちにしていたが、ぽっと出のベンチリー家の娘が、お世話になったはずのタイラー家の娘を差し置いてノリーに手を出した、と周囲の評価は手厳しい。それでもなんとかこぎつけた婚約披露パーティの夜、事件が起こり……。
第一発見者となったジェインはベンチリー家のため、そしてどうしても消えない疑問を解き明かすために犯人を捜しますが、相手はなかなか姿を現さず、事件は思わぬ方向へ向かってしまいます。そして真犯人は……。
もうね、真犯人が明かされるところで、マジかって声出ちゃいました。
私はミステリは大好きだけれど、別に犯人探しをしながら読むわけじゃないんですよね。でも、それでも騙された!って思っちゃいましたね。
重い話ではあるけれど、気持ちよく騙されたので、ある意味とても爽快な読後感でした。
『レディーズ・メイドと悩める花嫁』マライア・フレデリクス コージーブックス
前巻の一年後のお話。前巻でも少しほのめかされていたウィリアム・タイラーとルイーズ・ベンチリーは本当にお付き合いを始め婚約し、その結婚式を間近に控えた時期。
ベンチリー家の長女ルイーズは自分に自信がなくてちょっとしたことですぐに怖気づいてしまうので、ジェインは彼女を幸せな花嫁にするため奮闘している。問題はルイーズの性格だけでなく、両家の母親の意見の衝突、結婚式の衣装から何からスクープしようとする新聞社など、ジェインはそのたびに大忙し。それでも結婚式を行う場所がようやく決まり、その会場となるウィリアムの叔父チャールズの邸宅へ向かう。チャールズはニューヨークの警察委員であり、イタリアマフィアを検挙したことで一躍街のヒーローとなった。
そして結婚式を間近に控えたある晩、叔父の家で働くナニーが殺されてしまう。チャールズは最小限の情報だけを警察に伝え、報道は抑えてなんとかその場をしのごうとするが、ベンチリー氏は彼を説得して、過去の事件で真相に迫ったジェインと新聞記者のマイケル・ビーハンに独自に捜査するよう依頼する(とはいえ、ジェインにとっては命令だけれど)。
この巻はイタリア移民といたりはマフィアの話が事件に深く絡んでいて、ジェインの友人でイタリア系のアナの力を借りたり、イタリア人が多く住む街へ出かけたりして捜査を進めていきます。
そして並行してルイーズの結婚式の準備を整えたり、チャールズの娘のメイベルの様子を見たり、相変わらずジェインは大忙し。レディーズ・メイドって本当に大変。
イタリア人が多く住む街での聞き込みや捜査、イタリアとアメリカの食文化の違い、言葉の違い、生活習慣の違いもいろいろ出てきて興味深かった。
ちょっとS・J・ローザンのビル&リディアシリーズを思い出したりもして。あちらは中国系移民が絡むシリーズだけれど、やっぱり民族の違いが色濃く絡む話が多かったから。
ともかく、そんなこんなでジェインとマイケルはまたも事件を追いかけ、真相に迫っていくのですが、なんともやりきれない部分もあって、これもまたコージーミステリというには少し重いお話でした。
ところで、ジェインとマイケルってどうなるんでしょうね。というか、どうにかなる余地はあるんでしょうか。そういう部分もコージーミステリの醍醐味だと思うんだけど、少しコージーミステリとしては重いこのシリーズでは、そういう部分も少し苦い味わいだったりするのかな、とちょっと心配になりました。
『蛇苺の魔女がやってきた ぬばたまおろち、しらまたおろち』白鷺あおい 創元推理文庫
シリーズ最終巻。綾乃はディアーヌ学院高等部の一年生。この学校は表向きは全寮制の中高一貫教育の私立学校だけれど、実際は魔女(男の人も魔女と呼ばれている)養成学校である。
魔女の定義は、箒に乗って飛ぶことのできるもの。そして学校に通っているのは綾乃のような人間だけでなく、妖魅と呼ばれるものたち。
たとえば綾乃の婚約者の雪之丞は大蛇と雪女のハーフだし、生徒会長は黒鬼、副会長はろくろっ首、他にものっぺらぼうや小豆洗いや赤鬼や人狼や白虎も盛りだくさん。
もちろん学校行事もちょっと変わっていて、目下の一大イベントは夏至祭。綾乃を含む生徒会は大忙しで準備を進め、夏至祭は無事に終わったが、夏休みを目前にして気になるうわさを耳にする。生徒会の面々と行くはずだった五郎丸湖でネッシーに似た生物が目撃されたというのだ。
綾乃はかつて首長竜に襲われたことがあり、雪之丞も心配するが……。
日本のハリー・ポッターのようなお話、と言われることもあるけれど、あれよりはもうちょっとのほほんとしたお話のような気がします。ハリー・ポッターも全部は読んでないからちゃんと比較はできないけれど。
今回のお話は、よく名前を聞く妖魅だけでなくロシアのドモヴォイやバーバ・ヤガー、アイヌのコロボックルやミントゥチも出てきたのが楽しかったな。
ネタバレしちゃいけないところがいくつもあるので詳しくは書けませんが「ぬばたまおろち、しらたまおろち」のシリーズラストはとてもきれいに終わったなぁと思いました。
まさしく、環が閉じた、という感じ。
楽しいシリーズでした。
『さあ、熱いうちに食べましょう』入江麻木 河出書房新社
この方は料理エッセイストになるのかな?
帯の「上皇后美智子さまが著書を愛読し、息子小澤征爾がその味を愛した」というところであっさり手に取ってしまいました。単なるミーハー。
文章はとても読みやすく、すいすい読めます。これまでの著書から選んだエッセーをテーマに沿って並べ、関連する料理のレシピも載っているという本。
東京生まれの彼女は、戦時中にロシア貴族の末裔に嫁ぎます。それまで日本料理と日本家屋一辺倒だった彼女の生活様式は大きく変わり、料理も家も習慣も何もかもがいきなりロシア様式に。しかし婚家の方たちに教えられ、徐々にロシア様式の生活に慣れていき……。
彼女の生家もそれなりに裕福だし、嫁いだ先もロシア貴族の末裔とのことで、戦後の一時期のことを書いたところを除くとあらゆることがきらびやか! 料理、パーティ、旅行、その他もろもろがとてもきらきらしていてあまりにも別世界すぎて楽しくてたまらない。
そして読み進めていくと、帯には「息子小澤征爾」とありましたが、実際は娘婿だということがわかりました。彼がその味を愛した、というのは本当のようだけれど。
ロシアの料理の描写や様々なところでのパーティの様子、香水、服、ロシア正教のイースター、その他いろいろなことを溜め息をつきながら読みました。
だって私はどう頑張ったってこういう生活は無理。
もともとが私には縁のないお金持ちの人の生活というのもありますが、それだけじゃない。
たとえばこの本に載っているレシピは、中には私にも作れそうな、つまりはシンプルな料理だってあるんですが、きっとこんな風には作れない。
昔と違って今はいろいろ便利なものがあって、例えば卵を泡立てるのだっていまは電動の泡だて器があるし、他にも便利グッズはたくさんあるし、電子レンジだってある。
ここにあるレシピはそうではなくて、そんな便利グッズは使わず手間隙をかけて作っていた料理ばかり。
いまのほうが絶対に簡単に作れるはずなのに、それでも私は一番シンプルな料理だってこんな風に丁寧に作ることはできないだろうなと思ってしまう。
入江麻木さんが、30年~40年前までおそらくはごく当たり前にされていたことが私にはできなくて、だからまるでファンタジーを読んでいるような、映画を観ているような、近いけれど遠い世界のお話に見えてしまうのです。
『シトロン坂を登ったら 大正浪漫 横濱魔女学校1』白鷺あおい 創元推理文庫
前作の『ぬばたまおろち、しらたまおろち』のシリーズと同じ世界の、大正時代のお話。
前作のディアーヌ学院は、横濱女子仏語塾という名前で出てきます。まだ学校ができてあまり時間が経っていない頃で、前作で学校関係者として出てきた名前がちらほら。
今回の主人公の花見堂小春は抜け首(飛頭蛮)。個人的には飛頭蛮という呼び名のほうがテンション上がります。
まだ学校ができたてで、小春の学年は女子が3人だけ。クラスメイトの透子さんは家から電車で通っているようです。
小春には新聞記者として働いている年上の甥っ子がいて、彼が小春のもとに持ち込んできたのが、最近横浜で巨大な化け猫が現れたという話。小春の学校にはいろんな妖魅がいるし、先生方には伝手もあるから、情報が集められないかというもの。
そんななか、楽員の近くの空き家に家具が運び込まれ、件の邸宅の住人・若槻家の大奥様-学院の先生であるマダム・ポルティエの知人-が生徒たちを招待してくれることに。
そこで大奥様の孫息子(性格に少々難あり)と彼の知人(やたら人懐っこい自称探偵小説家)と出会い……。
ぬばたまおろち、しらたまおろちは綾乃(と雪之丞)の話だったけれど、こっちはもうちょっと群像劇に近い感じのような気がします。さらっと読みやすいのはこちらの方かな。
このお話も3部作とのことなので、続きを読むのが楽しみです。
『親王殿下のパティシエール』篠原悠希 ハルキ文庫
仏人の父と華人の母のもとに生まれたマリーは、清の皇帝・乾隆帝の第十七皇子・愛新覚羅永璘のお抱えの厨師見習いとして北京で働くこととなる。しかし頼りの永璘は北京についてマリーを自宅に預けた途端、またすぐに家を空けてしまった。
母親から言葉を習っていたマリーは意思疎通はできるものの、細かいニュアンスや言い回しはよくわからないし、文字も読めない。ほかの厨師たちだけでなく使用人たちもマリーをどう扱っていいかわからないまま、マリーはお菓子も作る天心局で働くこととなるが、オーブンもバターも牛乳もろくになく、永璘の後ろ盾もろくに望めない状況で、果たしてマリーは無事に勤め上げることができるのか。
事前情報は特になく、ただきゃっきゃした感じの話が読みたいと思って手に取ったこの本ですが、よく考えたらこの作者なんだから単純にきゃっきゃうふふな訳がなかった。
とはいえ、以前読んだ金椛国春秋と較べると悲壮さはあまりなくて読みやすい。作中に出てくるお菓子が美味しそうなのもあるかなぁ。
オーブンはないし調理器具も中華鍋と蒸し器くらいだし、牛乳もバターもあまり手に入らないし、フルーツもフランスと中国とではまるで違う。そんななかで、それでもマリーが作ってみせるお菓子が本当においしそうで美味しそうで、読み終わったときにはとりあえずビスキュイ食べたいって思いました。
時代は清国最盛期。とはいえ私は歴史は詳しくないので、具体的にどんな感じというのはわからないんだけど、この小説で描かれる永璘の邸や妃たちの描写を見る限りとても美しくてうっとりします。豪華絢爛というのとはちょっと違うと思うんだけど。
これから描かれる清という国の先行きも、マリー自身のことも、永璘や彼の兄弟たちのこともとても楽しみな一冊でした。
『よちよち文藝部 世界文學篇』久世番子 文藝春秋
書評本やいろんな本を紹介する本が好きで、本屋さんで見つけて手に取ってみました。これ、日本文學篇がきっと以前にあったのね。そっちも探そう。
この手の本が好きなのを遡って考えてみるに、そういえば国語便覧が好きで授業そっちのけで読んだりもしてたなぁ、と懐かしく思い出しました。ただ国語便覧であらすじを読んで満足して実際に本を手に取ったりというのは少なくて、よくよく見てみると『よちよち文藝部』で取り上げられている本もほとんど読んだことないんですよね……。
さて、この本で取り上げられているのは。
・モンテ・クリスト伯(アレクサンドロ・デュマ)
・少年の日の思い出(ヘルマン・ヘッセ)
・変身(フランツ・カフカ)
・ハムレット(ウィリアム・シェイクスピア)
・罪と罰(フヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー)
・ゴリオ爺さん(オノレ・ド・バルザック)
・老人と海(アーネスト・ミラー・ヘミングウェイ)
・ドン・キホーテ(ミゲル・デ・セルバンテス)
・高慢と偏見(ジェイン・オースティン)
・阿Q正伝(魯迅)
・神曲(ダンテ・アリギエーリ)
・怒りのぶどう(ジョン・スタインベック)
・教えて訳者さん’(亀山郁夫) ※特定の作品を扱ったものでなく、翻訳者の亀山郁夫さんに取材したもの
・風と共に去りぬ(マーガレット・ミッチェル)
・百年の孤独(ガブリエル・ガルシア=マルケス)
この中で読んだことがあるのは『少年の日の思い出』『変身』『ハムレット』『神曲』くらいかな。あれ、思ったよりは読んでた。
いわゆる名作と言われるものは何となーく敷居が高くて手が出しにくいとずっと思っていたんですが、よちよち文藝部を読むとこれが結構面白そう。
これまで手を出せずに、出さずにいた本が一気に身近に感じられて楽しそうだと思いました。
とりあえず『モンテ・クリスト伯』『高慢と偏見』『風と共に去りぬ』『百年の孤独』あたりを読んでみたい。
『高慢と偏見』はパロディの『高慢と偏見とゾンビ』が先に気になってたんですが、まさかそれまでよちよち文藝部で触れられているとは思ってなかった(笑)。
あと『百年の孤独』はあらすじや世界観を見て、思ってたんと違う……とびっくりしました。ジャンルとしては幻想小説でいいのかな。楽しみです。
それと驚いたのが、訳者さんのことを取り上げていたこと。私は初めて読んだ翻訳ものがつまらなかったんですが、どうも訳が合わなかったみたい。後で別の方が訳した同じ本を読んだらものすごく面白かったんですよね。そんなことがあったりもして、訳者さんというのは私にとってはとても大事。興味なかったジャンルでも、この方が訳してるんなら間違いなさそう、という感じで手に取ったりすることもあるので、取り上げてくれてとてもうれしかったです。
『陰陽師 蒼猴の巻』夢枕獏 文藝春秋
久し振りの陰陽師。久し振りすぎて晴明と博雅にあてられるわ……。
洋の東西を問わずいわゆる昔話や御伽噺の類が好きで、日本霊異記とか山海経とか今昔物語集とかを読んでいた時期があるんですが、夢枕獏の陰陽師はそういう話を引っ張ってきたものが多く、晴明と博雅がどうそれらに関わっていくかというのもこのシリーズの楽しみのひとつです。その場合、晴明と博雅は狂言回しとでもいう立場になるのかな。
この巻では、その役を蘆屋道満が務める話もあって、それが結構好きでした。「仙桃奇譚」というお話。道満が前面に出る話はどこかやるせない話が多いんだけど、この話はそんなことなかったな。
あと面白いと思ったのが、役小角のことが書いてあるお話。「役君の橋」。晴明がいる世界では、道満以外のずば抜けた力のある人が出てくるのは少ないと思うので。このシリーズでは、いつも「ゆこう」と晴明に誘われて、「ゆこう」と博雅が返して話が動いていくのですが、このお話に限っては「ゆくか」と晴明に誘われた博雅が「いや、ゆ、ゆけぬ……」と答えてたの好き。そりゃあ宿直が近ければ遠出できないよなぁ。
以上、2020年4月(一部3月)に読んだ9冊の感想を簡単にまとめてみました。
『メインテーマは殺人』アンソニー・ホロヴィッツ 創元推理文庫
前作の『カササギ殺人事件』が好きだったので、こちらも読んでみました。
とはいえ、これは『カササギ殺人事件』とは全く違うお話。アンソニー・ホロヴィッツ自身がワトソン役として登場します。
アンソニー・ホロヴィッツは現役のイギリスの脚本家で、実際に担当しているドラマや実在の組織、人物のことも出てくるので、フィクションとノンフィクションの境目が曖昧。もちろんそれを狙っているんでしょうが。
探偵役はホーソーンという元刑事でいまは警察の顧問を務めている人物。ホロヴィッツの描写も元同僚のホーソーン評もとても辛辣なのに、ホーソーンはどこか憎めない。同僚にこんな人いたら嫌だけど。
葬儀社を訪れ、自らの葬儀の手配をしたその日に殺された資産家の老婦人。彼女は自分が殺されると知っていたのか?
物語は書き手であるホーソーンの一人称で進んでいきます。事件のあらまし、ホーソーンからこの事件を本にしないかと誘われた経緯、ホーソーンとホロヴィッツの出会い、捜査の経緯。
すべてが過不足なく語られ、謎も手掛かりもすべて提示されていますが、提示の仕方が一見とてもさりげなく、そんなこと言ってたっけ?と遡って見返すとすべてちゃんと書いてあるの。
正直に言って途中少しばかり中だるみしましたが、それはこの本ではなくてなかなかホーソーンに馴染めなかった自分自身のせいだと思う。
けれど後半に行くにしたがってホーソーンの人となりが断片的にとはいえ明らかになっていき、読み手はホロヴィッツと一緒に徐々にホーソーンのペースに巻き込まれていくのです。
このお話は、おそらくは10作ほど続くホーソーンシリーズの第1弾。本国では2冊めも刊行されているそうで、続きが出るのが楽しみ。
『カササギ殺人事件』に出てきたアティカス・ピュントも続編の構想があるそうで、こっちも楽しみです。
ただどちらも読めるのはまだ先のことだろうから、まずはホロヴィッツの書いたコナン・ドイル財団公式認定のホームズ譚である『緑の家』と『モリアーティ』を読んでみようかな。
『ぬり壁のむすめ 九十九字ふしぎ屋商い中』霜島けい 光文社時代小説文庫
図書館で見つけ、霜島けいさんて霜島ケイさんよね?と勢い込んで借りました。霜島ケイさんだった。最近ちょっと見失ってたので嬉しい。
ラノベのときも大きく括ると時代物が多かったし、こっちで書いてるのも納得。
主人公はるいという女の子。母を早くに亡くし、左官をしていた父も亡くし、天涯孤独の身のるいは、三つ目の職場を失ってしまった。さぁどうしようとるいは途方に暮れるが、ふと入った路地裏で働き手を求むという貼り紙を見つけ……。
タイトルのぬり壁のむすめというのはるいのこと。亡くなったはずの父親は、なぜかぬりかべになってしまったから。
といっても鬼太郎に出てくるようなぬりかべではなく、壁にならばなんにでも憑ける幽霊というか妖怪というか、そんな存在。壁にならばなんにでも憑けるというのは、どこの壁にも移動可能ということです。るいがいま住んでいる部屋の壁にも、寺の土壁にも、大名屋敷の蔵の白壁にもどこにでも。
これはいったいなんだろうとるいは頭をひねり。近所の物知りのおじいさんに「壁の化け物ってなんですか?」と聞いたところぬりかべという答えが返ってきたので、便宜的にぬりかべと言っている次第。
るいは妖や幽霊が見える女の子で、そんな力のない人ならば入れるはずのない場所に行ったり見えるはずのない人と会ったりするうちに、ふしぎを商いするというつく文字屋に奉公することになる。というのが1話目の途中までのお話。
このシリーズはすでに第6弾まで出ているようで、るいと父親の作蔵(ぬり壁)、九十九字屋の主人の冬吾、美人で気風のいいナツが妖や幽霊の絡むふしぎを解いて売り買いするお話なんですよね、きっとね。
霜島ケイ名義のラノベよりもこちらの方がずいぶん読みやすい気がします。ラノベのほうはすごくひりひりするような作風だったと思うんだけど、こっちはもっとゆったりと時間が流れている感じがする。妖とか幽霊とか言うと不穏な感じがするけど、もっとやわらかくて優しい感じ。
ラノベのほう、といってもたぶん私が読んでいた封殺鬼シリーズがひりひりしていたんだろうな。
久々にそっちも読みたくなってきた。
でもまずはこのシリーズの続きを読んでみようと思います。
『生きるか死ぬかの町長選挙』シャナ・デリオン 創元推理文庫
『ワニの町へきたスパイ』の3作目。
今回も面白かった! フォーチュンがだんだんシンフルの町に馴染んできたなと思ったけど、よく考えてみると1作目からまだ2週間しか経ってないですね?
そもそもの設定からしてシンフルにそんなに長い期間滞在するはずではないけれど、たった2週間で起きた事件が濃すぎて2週間なんて信じらんない。
アリーが言うようにこのままフォーチュンはシンフルに住んじゃえばいいのにと思うけれど、設定からするとそれは難しいんですよね。
とはいえ、本国ではもう10冊も出てるんだから、何らかの解決方法が見つかっているのかもしれないけれど。
今回出てきたボビーというキャラが気になります。ボビーが出てくると少しばかりカーターに余裕がなくなるような気がするんですよね。
また出てきてほしいキャラだけど、どうなるのかな。
そしておばあちゃんたちのタフさは今回も健在。
今回はアイダ・ベルが殺人容疑をかけられているためあまり動けないけれど、それを補って余りあるガーティとフォーチュンのコンビもいい感じ。
『蒼路の旅人』上橋菜穂子 偕成社
蒼路の旅人というお話はこの一巻で終わりだけど、これは長い長い話の始まりの部分みたいなので、どう感想を言っていいのかわからない。
バルサとタンダのように全く出てこない人もいるし、サンガル王国のサルーナ王女のように、何をしたかはわかってもなぜそうしたかが全く分からない人もいる。
だから何か言おうにも判断材料が足りなさ過ぎて言いようがないんですよね。
南の大国タルシュ帝国が、ついに海運王国のサンガルを支配下におさめるべく大軍を率いて戦を仕掛けてきた。サンガル王国は大軍を迎え撃つが、戦況は芳しくないらしい。新ヨゴ皇国にはサンガルから救援を求める親書が届けられる。皇太子チャグムは、それはタルシュとサンガルが組んだ罠ではないかと疑うが……。
いつのまにかチャグムがずいぶん大人になったなぁと思いました。まだ15歳なんだけど、皇太子という立場上、そして皇太子なのに父親である帝に疎んじられているという境遇から、たぶん急いで大人にならないといけなかったんじゃないかな。
この本のラストの部分、私はすごく好き。それが茨の道でも顔を上げて突き進むと決めたチャグムが、どうか報われてほしいと思うばかりです。
『ハクメイとミコチ 8』樫木佑人 BEAM COMIX
8巻も可愛いし美味しそうだし楽しくてやっぱり好きです、このお話。
このお話を読むといつもごはんが美味しそうと思うんだけど、よくよく見たらあんまり料理そのものの描写ってないんだな。材料を集めたり、料理を作ったりという描写はあるんだけど。なのに美味しそうと思ってしまう。
ごはんを食べるときの美味しそうな表情やそこに至るまでの過程なのかな。
そしてもうひとつ、このお話を読むと手仕事がしたくなる。料理でも裁縫でもDIYでもなんでもいいんだけど、自分の手でコツコツとやることがしたくなる。
丁寧な暮らしというようなものともまた違うんだけど、全部自分で、自分たちで何とかするのが楽しい。でもときには手を抜いて居酒屋でぐだぐだしたり、友達とだらだらだべったり、そういう何でもないことが楽しくなってくるお話。
続きも楽しみだけど、出るのは来年かなぁ。
『嘘月-ウソツキ-1』ミナミ 小学館コミック
まぁぶっちゃけSPYAIRのIKEさんが帯を書いていたから手に取りました。昔からのお友達ということで。
『純愛が切なく歪むダークラブ』という公式のアオリを見る限りきっと好みじゃないんだろうなー辛いかもなーと思いながら読んだわけですが、いやーびっくりした。思ってたんと違うw
設定としては確かに辛いんだけど、絵柄なのかな、主人公以外のキャラのせいなのかな。なんか違うんだよなー。
先輩のキャラと最後に主人公に絡んできた女の子のキャラが好きです。先輩は本当にそのままいい人なのかと考えちゃったり、女の子の壊れたキャラがいいなって思ったり、なんかずいぶん穿った見方をするようになったなとも思ってしまいましたが。
続きは……出たときに考えます。
『大天使はミモザの香り』高野史緒 講談社
主人公はアマチュアオーケストラのバイオリニスト。
ひとりは初めてのアマオケによくわからないうちに勧誘されて入ってしまった男子高校生。
ひとりは本当は美人なのにそれに気づいていない眼鏡女子。アマオケ歴は10年以上だけど、飛び抜けてうまいわけではなく、飛び抜けた個性があるわけでもなく、第2バイオリンであまり目立たず演奏してる。
という感じの二人が主役なのですが、年の差カップルなわけではないし、そうなりそうな兆候もない。そんな二人の視点で描写されるバイオリンのすり替え事件のお話。
私はクラシックは詳しくないし、当然バイオリンのことなんてこれまでに読んだミステリに出てくることくらいしか知らないけれど、このお話はとても読みやすくて楽しかったです。もともと音楽が好きだということもあるかもしれないけど。
バイオリンは、バイオリンという楽器が出来上がったときにすでに完成された形で、初期に作られた名器を今もまだ超えられないというあたりはすごく興味深く読みました。
さらっと読めたんだけど、それは人死にがなかったからかもなぁ。高野史緒さんの書かれる小説はこれまで重厚な風合いのものしか読んだことがなかったので、さらっと読めたこと自体が不思議だった。
バイオリニストの二人も、二人の周囲の人たちも、キャラクター的にもとても好きなので続きがあるなら読みたいけれど、このまま綺麗に終わった方がいいのかなぁとも思うジレンマ。
以上、2020年3月に読んだ7冊の感想を簡単にまとめてみました。
