実りの秋の田園風景をスケッチ | シニアの の~んびり道草

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日頃の散歩や近場のドライブ、時には一晩泊りでぶらっと訪ね歩くことがある。そんな折、おお! これは綺麗だ、これは凄い、これは面白いと感嘆したり、感動したようなことを、思いつくまヽアルバム風に綴ってみる。

『実るほど頭を垂れる稲穂かな。』(岐阜市則松地内で)

私が住む岐阜県西濃地方でも秋が深まり、田圃の稲刈りが最盛期を迎えている。熟した稲穂が緩やかに描く曲線の美と優しさは、私どもの琴線によく響く。新米の炊きたてご飯はいつの時代も、秋の味覚の隠れた王様で、程無く我が家の食卓にも上るだろう。そこで、10月15日に、近郊の稲刈りの風景をスケッチしてきた。

 

 

 

黄金色に染まる、実りの秋の田園風景。(本巣市文殊地内で)

 

かつては手作業での稲刈りが主流だったが、近年は稲を刈り取ると同時に脱穀、藁は細断処理してしまうコンバインが主流となり、“稲刈り後の田んぼ” には何もない状態が普通になった。(岐阜市則松地内で)

 

稲刈作業も機械化が進み、多条刈り大型コンバインで稲の刈り取りと脱穀を行い、その後、大きな乾燥機でモミを乾燥させるライスセンターや、モミを乾燥し出荷まで保管ができるカントリーエレベーターという施設に運ばれる。(岐阜市西秋沢地内で)

 

近頃あまり見かけることが少なくなった、田圃での稲架(はざ)掛け天日干しの風景(岐阜市上西郷地区で)。なぜ、手間と体力が必要な稲架掛けをするのか、いま一つよく分からないので調べてみた。刈り取った直後の籾の水分は20~30%とかなり多い。水分が多い籾はそのままにしておくと、腐ったり、変な臭いがしたり、カビが生えたり、芽が出たりしてしまい、米の品質が悪くなる。例えば水分を22%含んでいる籾は、23 ℃で保管するとたった3日しか品質が保てない。そのため、刈り取った稲は早いうちに稲架掛けをして、籾の水分量を減らす必要がある。稲架掛けの利点としては、1.ゆっくり乾燥するので割れ粒発生や味の低下が少ない、2.穂の形が残ったままで乾燥するので、後熟(刈り取ったあとでも米の実りが進むこと)が進む、3.省エネルギー乾燥である、ということで最近見直されている面もあるのだという。

 

田圃に1本の棒を立てその棒に交互に稲を掛けて積み重ねていく、みのむしのような形の天日干しの様子(岐阜市上城田寺地内で)。この地方ではあまり見られないが、東北地方では一般的な干し方で「ほにょ」「ほんにょ」というらしい。漢字で書くと「穂仁王」。

 

上記の稲架掛け天日干し(左)と穂仁王掛け天日干し(右)のアップ画像。

 

コンバインによる収穫作業が主流となった現在では、稲刈り後の田圃 には何もない状態が普通になった。かつては手作業で稲刈りをし、稲架掛けをして天日で乾燥させ、脱穀後は稲藁を家畜の飼料、茣蓙、筵、畳、縄、俵などに使うため、藁束をこのように三角錐状に伏せたり、縛って横に寝かせて乾燥させている光景が極普通に見られた。(本巣市文殊地内で)

 

 

店頭には早くも28年産早生品種の特別栽培米が並んでいる。特別栽培米とは農水省のガイドラインに基づいて育てられた銘柄で、生産地で通常使用される農薬、化学肥料の5割以上を減らしたもので、安全安心で美味しく自然環境にも優しい米だという(店頭の説明書きによる)。ともあれ、炊き上がりの透明感、光沢、香りとともに粘りが強く弾力性に富んだ新米のふっくらご飯は、秋の味覚の王者である。