後藤象二郎との会談、亀山社中から海援隊へ、いろは丸事件、船中八策。
時勢を論ではなく、利で動かす。経済が時代の底を動かし、政治がそれについてゆくという原理を竜馬は理解していた。
ただ、下関での戦争を終えて長崎に戻った竜馬には亀山社中の窮迫という課題に直面。
そんな時に薩長に近づきたい土佐藩が竜馬に接近し、竜馬もこれを利用して亀山社中の窮迫を打開する糸口をみつけようとする。
僕はこの土佐藩側の後藤象二郎と竜馬の会談シーンがとても好きなのです。
双方に露骨には口に出せない目的があって、後藤は竜馬を利用しようとするし、竜馬も後藤を利用する。
後藤は竜馬の海援隊を土佐藩の支配下に置きたいし、竜馬は土佐藩と対等同格の形で提携したい。
その利害が一致する点を現代の言葉ではwin-winの関係と表現するけど、竜馬の言葉は
「饅頭の形はどうでもいい。双方、舌を出して餡が舐められればいいのだ」
というもので、現代のビジネス感覚で時代を動かしてゆく竜馬には驚愕するばかりです。
竜馬は海援隊だけでなく、陸援隊も構想し、その創設を中岡慎太郎に依頼する。
その話し合いの最後で
「お前とおれが手をつないで日本の長い夜を明けさせよう。命がいくつあっても足らぬ仕事だ」
という竜馬の言葉のスケールの大きさ、カッコいいです、何度感動させてくれるのでしょうかという思いです。
いろは丸事件、海援隊のいろは丸が紀州藩の明光丸と衝突事故を起こした際、竜馬の行動がおそろしく的確適切で機敏になるのですが、ここでの一文が竜馬の気質をよく表していて、ずっと印象に残っているのです。
「なにもかもだめだ。とは竜馬は思わなかった。この男の不思議さは、背骨が弾機でできているらしい。絶望するよりも次へ跳躍するほうが早かった。」
そしてかの有名な船中八策。
その第一策が大政奉還。
これは著者をして、竜馬が歴史にむかって書いた最大の文字というべきであろう、と言わしめています。
大政奉還は日本を革命の戦火から救う唯一の手段。
だが、将軍が自ら将軍でなくなることを自分でやるのか、そして幕府を武力討伐して新政権を樹立しようとしている薩長の立つ瀬が無くなるといった障壁が多く、実現は誰のみから見ても困難を極める。
それでも竜馬は
「薩長は気の毒なことになる。しかしおれは薩長の新政権をつくるために働いてきたわけではない。
日本人のためさ」
と言ってのけ、大政奉還案を後藤を通じて土佐の山内容堂に献策する。