今回の登山は、秩父の矢岳。
知る人ぞ知る、かなりマニアックな山です。
この山は、私が学生で山岳部に入部した年、
当時の記録を見ると、昭和59年とあります。
随分古い話ですが
この矢岳に登る山行が組まれていて、
途中まで向かったのですが、
その時の都合で、コースが変更になり、
矢岳への登頂は叶いませんでした。
次に矢岳への山行が組まれていた時は
直前に私が急に体調を崩してしまい、
その山行に参加できませんでした。
いつか登ろうと思っていたのですが
結局その後も今に至るまで
矢岳に登ることは叶いませんでした。
登頂が叶わなかった矢岳。
登山地図を見ると、
迷いマーク、危険マークがいくつもある
魔境の奥にあるような山です。
いつか登ろう…
と、思い続けて、それから30数年、
ネットで何度も矢岳の情報を収集して、
様々な登山コースの
シュミレーションをしていました。
そして、
今度こそ登る!
と思い、今回計画を立てました。
矢岳に登るには、いくつかコースがありますが、
私は長沢背稜からの稜線を歩いてみたい。
それには酉谷山の避難小屋に泊まるのがベストです。
酉谷小屋は、私がこの地に初めて訪れた時に
強烈な印象を残した小屋で、その出来事を
以前、このブログのどこかで書いた記憶があります。
話が長くなり過ぎるので、
その衝撃的な話は割愛します。
その酉谷山に登るには、
通常コースの三ツドッケ経由。
メジャーなバリルート(?)の
タワ尾根経由があります。
どちらのコースも以前歩いています。
私は、なるべく以前歩いたコースと
同じコースを歩くのは避けたいです。
登山詳細図の地図をよく見ると、
タワ尾根には、通常の末端から登るコースの他に
孫惣谷林道経由のオロセ尾根ルートがあります。
このコースもバリルートです。
面白そうですね。
今回はそのオロセ尾根コースに決定です。
出発の前日にスーパーに立ち寄り、
食料品を買います。
帰宅後、私が登山の準備をしている時、
私が目を離した隙に
ザックの上にちょこんと座っている
我が家の愛猫のケイタ。13歳。
いつもさりげなく側に寄ってくる
かわいい奴です。
私にとって登山は、出発準備をしている時から
始まっていて、
下山後、使用した道具の手入れをして
片付けるまでが登山です。
5月2日の早朝、自宅を出発して、
いつもの始発電車に乗ります。
先週もこの電車を利用しました。
電車で八王子、立川、青梅で乗り換え、
奥多摩からバスに乗り、
やってきたのは東日原。
久しぶりの公共の交通機関で来た奥多摩、
だいぶ遠く感じました。
私は奥多摩は数ある山の中でも
この日原近辺の山が1番好きです。
日原は、険しい山奥にある集落です。
2年前の台風で、途中の道路が崩壊して
一時は楽の孤島になったようですが、
現在は復旧してバスも通っています。
昔はよく見かけた看板です。
田舎来ると、たまに見かけます。
日原のシンボル、稲村岩です。
稲村岩から鷹ノ巣山に登るコースも
先年の台風で登山道が崩壊して
現在も通行止めです。
橋を渡り
今回は八丁橋方面に向かうので、左側に進みます。
日原林道も台風の影響で長らく通行止めでしたが、
最近通過可能になりました。
今回このコースを選んだ理由は、それもあります。
八丁橋には、すでに車が沢山駐まっていました。
釣りの方か、或いは雲取山か、天祖山か。
ここからゲートを潜り、孫惣谷林道に入ります。
孫惣谷林道は3年前に歩きました。
その時は林道から中尾根に取り付いて
水松山に登ったのですが、
中尾根に取り付く前の石灰採石場の迂回ルートが
難路でした。
孫惣谷林道を歩きます。
登山者でここを歩く人は、
かなりマニアックですね。
振り返ると、八丁山方面。
孫惣谷林道を少し歩いた
ここがオロセ尾根ルートの入口ですが、
前回、ここを通った時は、
石垣を越える足場がありました。
今回は無くなっています。
これは過去の写真です。
私の以前の記録を見ると、
当時はこの足場がありました。
石垣の上は、作業道が続いていますが。
足場の残骸がありました。
なんとかここはよじ登るしかありません。
高さがおよそ150cm。
食料品を満載した重たいザックを背負って登るのは
試みてみましたが、かなり難しいです。
ザックを石垣の上に置いて、空身で登りました。
無事になんとかここをクリアしました。
ここから山道になります。
正規の登山道ではなく、作業道ですが、
道は明瞭で歩きやすいです。
最初は植林の杉林でしたが、
途中から広葉樹林が現れます。
新緑の登山道は気持ちいいですね。
何の足跡だろうか?
鹿であろうか?
この辺り、熊の目撃情報も多いので、
今回、それが1番重要ですね。
ここから作業道を離れて、不明瞭な道になります。
写真中央にヘリが飛んでいます。
この付近で遭難があったのだろうか。
この日、こんなマイナーな
オロセ尾根ルートを登るのは
私だけかも知れません。
登山道と言うよりも
不明瞭な斜面を強引によじ登ります。
タワ尾根に乗りました。
オロセ尾根は、誰にも会いませんでした。
少し登ると、手製の標識があります。
ここからは4年前に歩いたコースになりなります。
ここで登山者が1人すれ違いました。
やはりタワ尾根はメジャーなバリルートですね。
篤坂ノ丸。
見覚えある標識です。
この標識は、4年前には無かったですね。
なかなかセンスがある標識です。
これから向かうウトウの頭が見えます。
天祖山の採掘現場が見えます。
バリルートでは、こうした標識も貴重です。
ウトウの頭の辺りは、
タワ尾根ルートの核心部で
険しい登りがあります。
岩に生えた岩。
これも見覚えあります。
険しい道を上り詰めると、小さな山頂が。
木々に囲まれて展望はありませんが、
ここがタワ尾根名物、ウトウの頭です。
このプレートが有名です。
このプレートが見たくて
ここに登る登山者もいるとか。
なかなか味わい深いものがありますね。
三角点も撮影。
ウトウの頭を過ぎて、しばらく歩くと
東側に開けた場所が。
酉谷山(左)と日向沢ノ頭(右)。
その鞍部に酉谷小屋が見えます。
本日の目的地です。
ウトウの頭を過ぎて、岩場を左側から巻きます。
この辺り、数年前に転落事故も
起きているようですので、
慎重に通過します。
こんな小さな苔も見逃しません。
ここにも岩に生えた木。
モノレールが合流します。
モノレール沿いの小ピークに標識があります。
大京谷ノ峰です。
ここが林道の終点です。
写真ですとわかりづらいですが、
稜線の東側に雲取山荘が見えます。
長沢背稜の縦走路に合流します。
そのまま稜線を直登すると
滝谷ノ峰に行けますが、
前回登ったこともあり、
今回は割愛して、酉谷小屋を目指します。
ザックが重いと、つい楽な方を選択します。
ここからは、ほぼ水平の歩きやすい道となります。
なかなか素敵なところです。
北側の木々の間からは特徴のある山容の百名山、
両神山が見えます。
ここで分岐点、
稜線伝いに酉谷山に直登するコース、
酉谷山を巻いて、酉谷小屋に行くコース、
私はこの巻道を歩いたことは無いので
今回は巻道を行きます。
頭上の木の枝に生えたキノコ。
長沢背稜の稜線が見えます。
酉谷小屋に到着です。
窓から小屋の中を覗くと、
既に小屋の板の間は満室のようです。
土間ならば寝れなくもないかも知れませんが、
そこまでするなら、テントを張った方がいいですね。
小屋の宿泊は諦めて、テント泊にします。
稜線に上がると、
既に別の方がテントを張っていました。
なるほど、ここならばテントを張れます。
私は他のテントを張れそうな場所に
ザックを置いて、
とりあえず酉谷山の山頂に行くことにします。
酉谷山の山頂に到着。
私は4度目の酉谷山の山頂です。
三角点の北側には、熊倉山方面の道が続いています。
この先のピークの小黒は、
昔、猛烈な藪漕ぎで難儀した記憶があります。
私が初めて藪漕ぎのつらさを味わったのがそこです。
今は笹藪は枯れて藪漕ぎはないようですが、
ひと頃、道迷いによる遭難が多発して、
今は道迷い防止にルートに
ロープが張ってあるようです。
酉谷山の山頂からは、富士山が見えました。
富士山の上の部分は雲に隠れていました。
どこから見ても一目でわかる大岳山。
写真中央の黒い稜線が先程歩いてきたタワ尾根、
奥に見えるのが、丹沢のようです。
左側から大山、丹沢三峰、
丹沢山から蛭ヶ岳に続く稜線。
酉谷山山頂を後にします。
まだ時間に余裕があるので、
明日歩く予定の矢岳の分岐点まで
偵察に行こうと思います。
酉谷峠から少し日向沢ノ頭方面に向かうと、
二重山稜になっていて、
先程ザックを置いた場所よりも
こちらの方が風も弱く、
テントを張るのに適しています。
後でここにテントを張ることにします。
急なバリルートの登りも、空身だと楽ちんです。
登りきったところが日向沢ノ頭と思われます。
標識は無く、木にテープがあるだけでした。
更に進むとテープがあり、
ここが矢岳の分岐点です。
長沢背稜の稜線のすぐ下に縦走路があり、
このテープが縦走路から矢岳方面への目印です。
以前、この辺りに矢岳方面と書かれた
手製の標識があったのを記憶していますが
今回は発見できませんでした。
分岐点を確認したので、戻ることにします。
蜀の桟道のような道を歩きます。
ザックを移動して、ここにテントを張ります。
下が枯れ葉でフカフカで居心地が良かったです。
この日、ここでテントは私を含めて3張りでした。
愛用の歴戦のダンロップテントです。
夕食を作ります。
コッフェルに肉、野菜、ウインナー、豆腐、竹輪
その他の具材を入れて煮込みます。
おかわりして、〆のうどんも作ります。
翌朝も味を変えて作れるように
大量に具材を持ってきました。
真夏では無い近場の一泊程度の山行ならば、
重たい食材も遠慮なく持って来れます。
生モノは重く、初日の行程はキツかったですけどね。
今回の酒は焼酎です。
水、お茶で割って、少し温めます。
1人鍋パーティーです。
山登りで、これが1番楽しい時間ですね。
山の中でまったりと過ごす時間は
素晴らしいですね。
これがテント泊の醍醐味ですね。
気がついたら全部呑んでしまいました。
いい具合に出来上がった頃、
日が暮れてきました。
小屋の前の水場で、翌日に使う水を汲んでおきます。
酒も尽きたところで
明日に備えて早めに寝ることにします。
翌日に続く。