カフーとは、沖縄で幸せという意味だそうだが、この作品の中では舞台となった島の方言として「グッドニュース」という意味を持たせている。

 

「カフーを待ちわびて」という題名をつけた作者の意図が私は最後にわかり、読み終わったあと、書かれていないその先の物語をこうなって欲しいという希望とともに、

主人公の二人と私に共通する1つの問題を考えた。

 

 私がこの作品を読んで学んだことは、お互いを理解するためには、まずは自分のことをさらけ出さないといけないということ、そして、言いづらいことも聞いてはダメなのかと思うことも、言葉を選びつつも機会をうかがいつつも、話していくべきなんだろうということだった。簡単に言うとコミュニケーションの大切さである。

 

 沖縄の離島で小さな雑貨店を営み淡々と生活する明青と、素性がわからないままそこに住みついた幸を中心に物語は進んでいくが、幸は島に来た経緯を明青に言わない。明青も幸に素性を深く聞かなかった。

 

 長い時間一緒にいたのにその類の話を全くしなかったことが、あとで悲劇を招く。

 

 明青は、何か聞いてしまったら幸がいなくなってしまうような気がして聞けなかったのだろう。いつか話してくれる時が来るまでこちらからは何も聞かない、という思いやりはよくあることだ。

 

 しかし、その結果、明青は本当は思ってもないことを幸に言って、別れを切り出すということになるのだ。一緒にいた時間はかなりあったのだから、どのようないきさつで明青の元に来たのかを少しでも聞いていたら、友人の許しがたいイタヅラに惑わされることなく、辛い別れにはなっていなかっただろう。

 

 おばあが言う。「何もかも打ち明けて、幸せになれ」

幸せはいくら待っていてもやってこない。自分から出かけて行かなくちゃ見つけられない。だから打ち明けろと。

 

 この作品では、多分他の人はもっと別の感想を持ったのではないかと思うが、私は始めに書いたように「大切な人とのコミュニケーションの重要さ」を学んだ。

 

 明青や幸が、自分のこともお互いのことも深く話さなかったのは、お互いを思いやってこそだというのはわかるのだけど、お互いを大切な人だと認識した時点で、自分の考えを話すべきかなと私は感じた。

 

 幸には、何度か自分の生い立ちを明青に話す機会があったと私は思っている。お盆のご先祖様のお迎えの時に「私のあの子も?」と明青に言ったときや防風林を知っていたことを明青にびっくりされたとき。

 

 明青には、幸に直接聞いてよかった場面があった。幸がお盆に涙したとき、どうして泣いたのか、その言葉にどんな意味があるのか。明青は気の利いた言葉を一言、幸に言っただけだった。

 

 聞くに聞けない、言うに言えない、というのは多かれ少なかれあるものだ。でも、そういうことが積もり積もって、信頼度が下がったり不安な気持ちにさせられたりしたら、結果的に望んでいない方向に行ってしまうものなのだ。

 

 私は、自分が必要とする人、大切な人との間には、深いコミュニケーションが重要だということをこの作品から感じたけれど、それは、この「大切な人とのコミュニケーションの重要さ」が、自分に「足りてないもの」「懸念材料」と無意識のうちに思っていることなのかもしれないと思った。

 

 自分を振り返ってみると、やはり相手に言いたいことが言えないときや、「どうせわかってもらえない」と相手が知りたがっていることでも言わないことがあり、相手に不信感を持たせたことがある。

 

 これは、言えば「嫌われるかも」「自分の元を去ってしまうかも」という不安があるからだ。

 

 主人公の二人にも、そういう思いが大いにあったわけで、それはとても理解できる。だから、別れることになったのはコミュニケーションが不足していたからだという一言で片付けるのはかなり乱暴だとは思う。

 

 それでもやはり、何か機会を見つけて、言葉を選んで、話をしていくことが大切なんだろうと思うのだ。

 

 あの時、明青が聞いていれば、あの時、幸が話していれば、とどうしても思ってしまうのだ。

 

 今回、主人公の二人を追っていく中で、私が無意識に思っていることを自分で認識し、改善していかなくてはいけないことなのだと考えさせられたことが、この作品を読んでの収穫である。

 

 大切な人が心配に思ってくれていることなら、ちゃんと話そう。どうせわかってもらえない、どうせ否定されるだけ、そう思わずにちゃんと向き合おう。時間がかかっても、もしかしたら喧嘩になっても、でも思いを言葉で伝えよう。

 

 お互いを大切な人だと思っているなら、きっと分かり合える着地点が見つかるはず。相手を思いやったからこその話なのだと理解できるはず。

 

 悲しい過去を持つ二人は、相手を思いやるが故にお互いの思いを伝えられず離れ離れになった。

 

 幸は手紙を書いて全てを打ち明け、それを読んだ明青は、幸のことを手放してはいけない大切な人なのだと再確認する。

 

 一度は離れてしまった二人だけど、必ず一緒に島に戻ってくる、ということを予感させるラストは、友人や愛犬と一緒にあの波止場で、私もまさにカフー(グッドニュース)を待ちわびる気持ちにさせてくれるものだった。