年末のとある昼、次の予定まで1時間半ほど時間が空き、マックに身を寄せたときのこと...。
場所はセーヌ川沿い、大きなショッピングモールのある通り。クリスマス前のせいか、平日なのに人でごった返している。
タッチパネルで一番安い5€のセットを注文。なんとか席を見つけ、テーブルの上に番号札を立てる。ハンバーガーは店員さんが席まで持ってきてくれるシステムだ。パソコンを開いて作曲の浄書作業開始。
10分後...
混んでいるせいか、注文が届く気配が全くない。特にお腹が減っているわけでもなかったので、まあええかと作業を進める。隣の若いカップルが無料でもらった風船でぶっ叩き合いながらイチャイチャしている。勘弁してくれ。
30分後...
いくらお腹が空いていないとはいえ、これはどうだ。明らかに私より後に来た客が先に食べ始めている。そろそろ店員に言わなければ。辺りをキョロキョロ見回す。
それから少しすると、どっか別の国から来たのであろう濃い顔立ちの店員のにーちゃんが笑顔でやってきた。トレーの上にはハッピーセットにバーガーにラップに...明らかに3、4人分の量がのっている。
これ私のじゃないよ!と言うと、もにゃもにゃ言いながらレシートを確認し、また戻ってくる!と笑顔で言い残し去っていった。フランス語は怪しそうだ。しかし笑顔は良かった。笑顔のいい人間は善人に違いない。信じて少し待ってみる。
10分経過...
にーちゃんが戻ってくる気配が全くない。そりゃそうだ。どれだけ笑顔が良くてもフランス語が怪しい人間が信頼できるわけがない!
通りすがったアフリカ系のちっちゃい小太りの店員のおばちゃんに、「30以上分前から待ってるのに注文が来ない!」と訴えると、はぁ〜っという顔をされ、「みんな待ってんの!わかるでしょ!」と言われた。埒が明かない。
なんやかんやで店を出なければいけない時間が迫ってきた。とりあえず作業できる場所がほしかっただけ。目的は達成できた。たかが5€、セレブなら場所代と思ってそのまま店を出るのかもしれない。しかし、されど5€!私は5€が惜しい!!!
カバンに荷物をぶち込み、まともそうな店員を探す。ウロウロしていると、戻ってくると言ったきり戻ってこなかったにーちゃん発見。
「ずっと待ってるのに注文が来ない!」と伝えるが、返事がなんだかよく分からない。とにかく笑顔はいい。あ、分かった!みたいな顔で何やら言っているが何も分からない。なんでこんな人の多い中心地のマックでフランス語が話せないやつが働けているんだ!!!!!雇用はどうなっているんだ!!!!!
もういいっす!と話をきり上げ、話が通じそうな店員を探す。見つけた若いねーちゃんの店員に「もうあと20分で出なきゃいけないんだ!間に合わなそうなら返金してくれ!」と頼むと、本当に申し訳ないと平謝りしてくれて3分でハンバーガーを持ってきてくれた。ねーちゃんサンキュー。
さして美味くもないパサパサのハンバーガーを口に突っ込みながら思った。
さっきのフランス語が通じなかった笑顔のにーちゃん。私にもたくさんあった、そんなこと。なんとか応えたくて、一生懸命話すんだけど通じなくて、もういいっすの顔で去られる。なんて意地悪なんだって思ってた。悲しかった。
時が経つのは恐ろしい。あれだけぐじぐじ恨み言を言った相手と同じことをした自分。にーちゃん今頃悲しんでるだろうか。
心底自分に失望し、この話を友人にすると「みんなも同じこと思ってたんだよ!」と言われた。なるほど、もういいっす!と私から去っていったあの人もこの人も、どうしようもなくて困った結果。何の悪気もなかったのかもしれない。
悲しみを知り、フランス語頑張ろう!と奮起し、今度は誰かに試練を与える。こうやって世界は回っていくのだ。にーちゃん、フランス語頑張ってな。とりあえずわろとけ!の精神、よくわかるよ。
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