昔からよく道を聞かれる。フランスに来てからは輪をかけてよく聞かれる。
今日もメトロの乗り換えをしていると、血相を変えた中国人のおばちゃんから呼び止められた。
中国人のおばちゃんからゴリゴリに中国語で話しかけられるのはよくあることで、中国語わかりまへんと答えると一瞬残念そうな顔になるけど、あっちも切羽詰まっているので、そのまま私のひどい英語、自称ゴミングリッシュでの道案内が開始される。
残念ながら私、方向音痴で景色も覚えられず来た道を戻れないタイプの人間。一生懸命説明したけど、果たしておばちゃんは無事目的地にたどり着けたのか..。
一番最初に人に道を聞かれたのは中学生の時だった。通学中に、地元のとある高校の場所をロードバイクに乗ったおっちゃんに聞かれたのだ。
その高校の隣にはスポーツセンターがあり、何度も行ったことのある場所だった。私は一言こう答えた。
「あの山の向こうです!」
おっちゃんは白い歯を見せてハハッと笑っていた。なんともひどい道案内である。
高校生の頃、とある大雪の日、塾の先生に授業の後家まで車で送ってもらった時には、どこを曲がればいいのか一切答えられず、「お前は自分の家の帰り方もわからんのかっ!」と呆れられたこともある。
過去一番ひどかった道案内は新宿駅だ。
一時期単発の派遣アルバイトに精を出しており、その日は青いウィンドブレーカーに短パンを履き、でっかい看板を持って数時間突っ立っておくお仕事だった。
私の持ち場は新宿駅西口の交差点、ルミネ1の入口前。人通りが多く、外国人観光客に道を聞かれまくる。
「トチョーどこ?」「グリーンラインの電車どこ?」
いつも地図をたよりに歩くだけで行き方なんて一切覚えていない。仕方がないので全員近くの宝くじ売り場のおばちゃんにパスした。おばちゃんは鮮やかに道案内をしてのけていた。
哀れな犠牲者はその日最後に私に道を聞いていたおばあちゃんだった。目的地は京王百貨店。
京王百貨店は新宿駅に隣接していて、私が立っていた場所からは目と鼻の先だ。私も入ったことがあるのに、何を思ったか辺りを見回し、少し遠くにあった「KEIO」の看板を掲げるでっかいビルを指差して「あそこです!」と自信満々に答える。
おばあちゃんに感謝され、風に吹かれてサム〜イと思いながら立ち続けること数十分。向こうから先程のおばあちゃんが険しい表情で戻って来る。
はて?と見ていたら、目の前までやってきて一言、「違ったじゃないのよっ!!」。実は私が指さした「KEIO」はただのオフィスビルだったらしい。今はキレイになって一階にはIKEAが入っているみたいだけど、当時は何もなかったことだろう。いやはや、大変申し訳無いことをしてしまった
ろくな道案内ができないんだから「わかりません!」と言えばいいものを、聞かれるとどうにか答えたくなってしまう。
今まで私が道案内をしてきた数々の人々、みんな大丈夫だったか、どうだったのか..。
「聞く相手には気をつけて..!」
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