皆さんこんにちは!

 

今回は、『アスリートに発症する疲労骨折 シリーズ⑤ 骨盤部 』 〜恥骨下枝疲労骨折〜 についてお伝えします。

 
恥骨とは、骨盤を構成する一部分です。その中でも恥骨下枝とは下の図のような部分となります。
 

『恥骨下枝疲労骨折』は非常に稀な疲労骨折であります。

 

発症年齢は幅広く、アスリートが受傷する割合が多いのですが、ごく稀に妊婦にも発症します。

受傷しているアスリートを競技別で見ると、主に陸上競技の長距離選手やバスケットボールをしているアスリートで見られます。

症状は、主に運動中の鼠蹊部(そけいぶ)痛ですが、臀部痛や大腿内側部痛など股関節周囲の痛みを訴えます。

加えて、『恥骨下枝疲労骨折』には特徴的な3徴候があります。

①ランニング障害になるような鼠蹊部(そけいぶ)痛 ②恥骨下枝の圧痛 ③Positive Standing Sign(患側での片脚立位前屈時痛)※下図

これら3徴候に該当していると受傷している可能性が高いと言われています。

「骨盤部疲労骨折  仁賀 定雄ら」より引用・改変

 

診断は画像診断が有用とされています。

レントゲン画像では、受傷後2〜4週間後に初めて骨折を疑う像が見られるため早期診断には有用ではないと言われています。

 

早期診断に一番有用なのはMRI検査になります。

「成長期の股関節・骨盤スポーツ外傷・障害   柿崎 潤ら」より引用・改変

 

上図のように、MRI画像では受傷初期の段階から高輝度変化(骨折像)がみられます。

 

治癒に関しては、MRI画像だけで判断するのは再受傷、偽関節(骨がくっつかない)、遷延治癒の危険性があり、「3徴候」の消失やCT画像やが適切であると言われている。

 

受傷原因を1つ紹介します。

 

1つ目は、「股関節周囲筋力の不均衡」です。

上図のように坐骨、恥骨には多くの筋肉が付着しています。

坐骨・恥骨に付着している股関節の内転 ・屈曲作用を有する内転筋群と股関節の内転、伸展作用を有するハムストリングの拮抗作用によって生じる力学的不均衡が原因と言われています。

最後に予後と治療に関してです。

基本的には保存療法で予後は良好です。

ほとんどが、受傷から4週間程度で症状が消失し、約5週間後より徐々にスポーツ再開していきます。

しかし、症状が消失するまでにスポーツ中止ができなかったり、原因である股関節周囲の機能を改善せず、スポーツ復帰すると偽関節(骨がくっつかない)や遷延治癒(骨が治るのが遅い)になってしまいます。

我々は、1人1人の原因となる要素を見つけ出し、再発防止も含めて早期スポーツ復帰に向け治療を行います。

 

 

当院での治療を紹介します。

 

①徒手療法・運動、姿勢指導・トレーニング

当院では「Joint by Joint Theory」を基に原因と考えられる筋肉や関節に対して治療を行います。

「Joint by Joint Theory」については下記のブログで紹介しています。

 

先程、受傷原因として、「股関節周囲筋力の不均衡」と紹介しました。

今回は、股関節周囲の筋力トレーニングとして「アウフバウトレーニング」の1部を紹介します。

②超音波骨折治療

当院では、下図のような「オステオトロン」を使用します。

 

『恥骨下枝疲労骨折』は稀な疲労骨折です。

アスリートで鼠蹊部の痛みを訴えていたら発症している可能性があります。

大きな合併症や後遺症はないとされていますが、診断がつかず継続していると症状の遷延(長期間の継続)・悪化につながります。発症した原因を突き止め疲労骨折に準じた治療を行うことが早期スポーツ復帰には必要です。

以上が『アスリートに発症する疲労骨折 シリーズ⑤ 骨盤部 』 〜恥骨下枝疲労骨折〜でした!!