311 認知症フェア | プレ介護アドバイザーはまじゅんのおしゃべりサロン

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部下たちと花見の飲み会をした翌週、健太は

まだ母親のいない生活に、慣れない自分が

自分でおかしかった。

 

「俺って、こんなにもおふくろに

甘えてたんだな」

 

認知症の母親を支えていたつもりが、本当は

自分の方が母親に支えられていたのだと、

つくづく感じていた。

 

木曜日の夜、高橋さんから電話が入った。

 

「健太さん、残業中ですか?」

 

「いや、もう今は、そんなに忙しくないです

から、残業はしてないんですよ」

 

「それなら良かった」

 

高橋さんの話では、中央包括の早川さんから

連絡が入って、急で申し訳ないけれど、明日

の夜6時から、認知症フェアの打ち合わせが

したいということだった。

 

何でも、パネルディスカッションの司会を

お願いする、「男の介護の会」の世話人代表

の佐々木先生が、この日しか時間が取れない

という事だった。

 

「もちろん、大丈夫ですよ」

 

「健太さん、打ち合わせの後で、

少し飲みに行きましょう」

 

高橋さんから飲みに誘われたのは

初めてだった。

 

健太が一人で寂しさを持て余しているだろう

と、高橋さんは気が付いていた。

 

翌日の夜6時、中央包括の会議室で、早川

さんと包括の代表者、佐々木先生と高橋さん、

健太で打ち合わせが始まった。

 

認知症フェアの日程は、昨年と同じ5月4日、

午前中にホールで講演会を行う。

 

高橋さんが30分、健太が30分、それぞれ

の立場で介護経験を話してもらって、15分

の休憩中に会場の人達から、質問を回収する。

 

休憩後、佐々木先生が司会をして、高橋さん

と健太が質問に答えるコーナーを30分する。

 

もし、質問が少なければ、佐々木先生がよく

「男の介護の会」で相談される内容を質問

する。

 

講演会はそこまでで終わって、午後からは、

会議室で「男の介護の会」を例年通り開催

することになった。

 

例年の講演会は、医療関係者や大学の教授

などの話が多かったので、今回は認知症を

より身近に感じられる内容にしたいと、

早川さんは張り切っていた。

 

打ち合わせが終わると、健太は高橋さんの

家に車を停めて、二人で飲みに出かけた。

 

「健太さん、寂しさに少しは慣れましたか」

 

グラスを傾けながら、高橋さんに言われて、

健太ははにかみながら笑った。

 

「高橋さんには、全部お見通しですね」

 

健太!  本当にそうだね!

 

TO BE CONTINUED・・