296 入所に向けて | プレ介護アドバイザーはまじゅんのおしゃべりサロン

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「健太、おばさん、繰り上げ当選だって」

 

みどりの言葉を、健太はにわかには信じられ

ない。

 

「みどり、明日になったらまた、落選でした

とか言うんじゃないだろうな」

 

「健太、今日は何時ごろに帰れる?

国道沿いのハンバーグレストランのお持ち

帰り弁当、買っていくから、詳しい話は

その時にするね」

 

「わかったよ。あと30分ぐらいで帰るから」

 

健太が自宅に着くと、みどりは駐車場で

待っていた。手には、ハンバーグ弁当の

入った袋を持っている。

 

家の中に入ると、勝手知ったる人の家と

ばかりに、みどりはさっさとお茶を入れて、

台所に弁当を広げた。

 

「それで、どう言う事なんだ?」

 

健太が言いかけると、みどりは手で制する。

 

「せっかくのお弁当が冷めちゃうじゃない。

まずは腹ごしらえしてからね」

 

健太は仕方なく、ハンバーグを頬張る。

以前は家族で良く出かけていたレストラン

のハンバーグ。しばらく、コンビニ弁当

ばかり食べていた健太は、美味しさが

お腹に沁みわたる気がした。

 

弁当を食べ終わり、みどりがコーヒーを

入れて座ったところで、話が始まった。

 

「新設のグループホームの管理者さんが

言うにはね。

 

哲也の法人のグループホームと特養の両方に

入所申し込みを出していた人が

いたんですって。

 

先にグループホームの方から話が有って、

入所希望を返事したら、その後に特養からも

話が有って、要介護4の人だから、特養の方

が費用も安く済むし、グループホームとして

も、重度の人を受け入れるのは負担が大きい

でしょう。

 

それで、特養の管理者さんと家族と話し

合って、特養の入所に決まったんですって。

おばさん、本当に運が良いわよね」

 

嬉しそうな顔で一気にしゃべるみどりを

見ながら、健太は心の中で父親とご先祖様に

手を合わせる。

 

「それで、入所の準備が色々いるから、

早速説明に来たって訳」

 

「そうか、みどりありがとう。

みんながおふくろの事を思ってくれる

想いが通じたんだな。本当に嬉しいよ」

 

健太は、素直にみどりにお礼を言った。

 

「そこでなんだけど。契約書の説明とか、

持ち込む家具の準備とか、結構忙しく

なるわよ」

 

みどりが言うには、入所の決まったグループ

ホーム「耀き」は、自室に各自が洋服ダンス

などの家具を持ち込むことになっていた。

 

なるべく、自宅で使っていた物を持ち込んで、

リラックスした気持ちで過ごして欲しいと

言う配慮からだった。

 

寝具もパジャマも自分たちで持ち込むが、

全てに名前を縫い付けないといけないとか、

細かい決まりごとがあった。

 

また、契約書や重要事項説明署の説明も

聞きに行かなくてはならないが、

出来れば平日にお願いしたいと言う事だった。

 

入所日は、4月1日の土曜日、午前中に

荷物を運んで、午後から順次入所してもらう

という事だった。

 

「入所日は、土曜日だから健太、大丈夫よね」

 

「ああ、個人住宅の引き渡しは、全部3月末

までに終わるから、大丈夫だ」

 

「契約関係は、銀行の引き落とし手続きも

あるから、なるべく早い方が良いんだけど」

 

「姉貴と相談しないと、何とも言えないな。

姉貴も、月末は決算時期で忙しいって

言ってたからな」

 

「楓先輩には、繰り上げ当選の件、

まだ連絡してないの。良い知らせは、

健太の口から伝えたいだろうと思って」

 

健太は、みどりのそんな心遣いが嬉しかった。

 

「じゃあ、今から電話して、

日程調整するからな」

 

健太は、早速姉の楓に電話する。

 

「健太、そうなの?本当なのね。良かった。

ありがとうね、健太」

 

「俺は何にもしてないよ。

みんなの想いが通じたんだよ」

 

楓の嬉しそうな声に、健太の顔に

笑みがこぼれる。

 

通話をスピーカーにして、みどりも交えて

3人で、今後の準備の日程調整をする。

3人とも、声が弾んでいた。

 

「みどりちゃん、もし出来たら入所する前に

一度、お母さんを自宅で一泊させられ

ないかな。

 

ぽかぽかさんからそのまま入所するのは、

ちょっと寂しい気がして・・・」

 

楓の提案にみどりもうなずく。

 

「楓先輩、いつならこちらに来られます。

それによって、山崎さんと調整しますよ」

 

3人は相談して、13日月曜日に楓が

契約関係の話に来ること、25日26日

の週末に君江を外泊させること等を決めた。

 

「俺は、まだ月末の週末は仕事が入る可能性

があるから、姉貴、よろしくお願いします」

 

「ドーンと私に任せなさい。みどりちゃん、

入所に必要な物、後でLINEグループに

書いてくれる?

渡辺さんと相談して準備するから」

 

こうして、君江のグループホーム輝きへの

入所準備は、着々と進むことになった。

 

健太! これで安心だね!

 

TO BE CONTINUED・・