179 介護費用の負担 | プレ介護アドバイザーはまじゅんのおしゃべりサロン

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「ところで健太、おばさんのデイサービスの

費用って、今までどうしていたの?」

 

同級生のケアマネジャーのみどりに聞かれて、

健太は答える。

 

「俺が払っていたよ」

 

「それは、良くないわ。これからは、

おばさんの預金から払うようにしてね」

 

「何でだよ。俺が払っちゃいけないのか」

 

健太は、自分の今までの行動を否定された

気がして、ムッとした。

 

「あのね、健太。介護費用は本人の年金や

預金で負担するのが基本なの」

 

みどりは、むくれた顔をしている健太に

丁寧に説明する。

 

将来、おばさんが特別養護老人ホームに入所

する時、たくさんの預金があると、色々な

軽減措置を受けられない可能性があること。

 

おばさんの財産をおばさんの為に使うことで、

万が一お亡くなりになった時に、相続財産が

減らせるので相続税の対象になりにくい事。

 

健太が、立替払いした分を、遺産分割の時に

考慮してもらえない可能性が高いこと。

 

「相続税の対象って、うちはそんなに

金持ちじゃないぞ」

 

健太が言うと、みどりは右手の人差し指を

横に振って、「違う」という動作をした。

 

「健太、相続税の基礎控除って聞いたこと

ある?

その金額よりも、相続財産が少なければ、

相続税の申告も納税も必要ないけれど、

その金額を超えた人は、相続税の申告や

納税をしないといけないの」

 

急に、みどりが聞きなれない言葉を連発

し始めたので、健太は混乱した。

 

みどりは、カバンから1枚、紙を出して

書きながら話す。

 

「相続税の詳しい話は、税理士さんに

聞いたほうが良いけれど、基本的な話

だけするわね」

 

みどりは、紙の真ん中あたりに横に1本、

水平に線を引いた。

 

 

「この線が、相続税の基礎控除の額と

するでしょう。

これよりも、相続財産が多い人は、

相続税の申告が必要なの」

 

みどりは、水平の線より上の部分に、

右上から左下向きの斜線をたくさん引いて、

影のように表す。

 

「でもね、申告した人が、全員相続税を

払わないといけない訳じゃないの。

相続税には、色々な軽減措置があるから、

それを利用することで、申告は必要だけど、

納税は必要ない人が多いの」

 

みどりは、斜線を引いた部分の真ん中

辺りに、もう1本、水平な横線を引いた。

そして、その横線よりも上の部分に、今度は

左上から右下向きの斜線を引いた。

その部分は、斜線がクロスしているので、

より影が濃いように見える。

 

「つまり、この色が濃く見える部分の人

だけが、実際に相続税を払う人たちだから、

だいたい亡くなった人の10%以下

なんですって」

 

「それで、この基礎控除額っていうのは、

いったい何円なんだ?」

 

健太は、相続税について、何となく

イメージ出来たが、実際自分の家は

どうなるのかが知りたい。

 

「これがね、相続人の人数によって変わる

から、ややこしいのよ。計算式としてはね、

相続人の人数に600万円を掛けて、

それに3000万円を足すの。

健太の家で言うと、相続人は楓先輩と健太

の二人だから、

2人×600万円+3000万円で、

4200万円になるわね」

 

「意外と低いんだな。

何だか心配になって来た」

 

健太は、母親の預金が結構な額だったので、

少し不安になった。

 

「この家と土地もおばさんの名義でしょう。

土地や家の計算方法は、難しいから、一度

税理士さんに試算してもらった方が良いと

思うわ。

 

私の知り合いの税理士さん、紹介しようか?

無料で試算をしてくれるサービスを

しているから」

 

「みどり、随分顔が広いんだな」

 

「ケアマネジャーの仕事って、高齢者の

よろず何でも相談所みたいな事だからね。

浅く広く何でも知ってないといけないのよ」

 

健太は、みどりの知り合いの税理士さんを

紹介してもらうことにした。

 

「遺産分割がどうのって、さっき言ってた

のはどういう事なんだ?」

 

健太は、さっきのみどりの話が

気になっていた。

 

「それはね、健太。自分が親の介護費用を

立て替えていて、いざ相続になった時に、

その分、遺産をたくさんもらえると思って

いた人がいたんだけど、遺産分割協議って、

相続人の話し合いで遺産の分け方を決める

ことなのね。

 

その時になって、他の兄弟たちが、そんな

のは、お前が勝手に費用を払っていたん

だから、自分たちは知らない。

 

とか、同居している者が支払うのは扶養義務

で当然だから、遺産分割には関係ない。

 

とか言われて、立て替えた分を貰えなかった、

って話。あちこちでよく聞く話なの。

 

だから、介護費用の負担は、基本は本人の

年金や預金で支払うこと。

どうしても足りない時は、子供達全員で

話し合って、納得した上でそれぞれが負担

すること。

 

これをきちんと守っていないと、結局後で

もめるのよ。

 

一生懸命介護した人が報われなかったり、

親が亡くなった後、子供たちがもめて、

それ以降、顔も合わせなくなって音信不通に

なるケースもあるの。そんなの嫌でしょう」

 

健太は、介護費用の負担のことを軽く考えて

いたことを反省した。

 

みどりの経験からくる助言は、

いつも重みがある。

 

健太は、みどりに相談して、

本当に良かったと思った。

 

健太!  みどりは偉大だね!

 

TO BE CONTINUED・・