姓名 | ごまめの歯ぎしり

昔は姓と名の分け方を間違ってゐることが良くあった。


枕草子の作者は「清少・納言」だと思ってゐた。
少納言は官職名であるが本人ではなく父親などの親族の官職だったやうである。
では清が姓だったのかと云ふと、さうでもないやうで中々難しい。

「ドンキホーテ」はセルバンテスの小説 Don Quixoteの主人公であるが、ずっとドンキ・ホーテだとばかり思ってゐた。
同名のディスカウントショップは通常「ドンキ」と略称されてゐるので、同様に思ってゐる人は多いに違ひない。

星の王子さまの作者は「サンテグジュベリ」で、これ全体が姓に当たるやうだが、この姓がだう分割されるのかは大いに迷ふ。
「サンテ・グジュベリ」ではだうも語呂が悪い。「サン・テグジュベリ」が正しいのだが、この「サン」はSaintで、称号らしいがだうも良く理解できない。

「ゴッホ」と呼ばれるオランダの画家の姓に当たる部分は「van Gogh」(ファン・ゴッホ)で、英語ではヴァン・ゴーと呼ばれるが、日本ではゴッホが定着してゐる。
しかし同じオランダの画家「ヴァン・ダイク」(van Dyck)は単にダイクと棟梁みたいな名で呼ばれることはない。何とも不統一だ。

外国人の名前を正確に日本語で書き表すことは不可能なるが故におかしな事も起きる。
大森貝塚発見者として名高い「モース」と電信符号の発明者「モールス」は「Edward S. Morse」と「Samuel Morse」でどちらも同じ米国人の姓である。
ヘボン式ローマ字の発案者「ヘボン」と女優「ヘップバーン」は「James Hepburn」と「Audry Hepburn」でどちらも英語圏の人物であるが日本語の表記は異なる。
両者は遠縁関係にあると聞いたこともある。

まあ日本でも「小山」さんは「こやま」とも「おやま」とも読むからそんなに突っ込むこともないか。

ところで今東京都知事選で話題の蓮舫は姓名が蓮・舫ではなく、本名は齋藤 蓮舫さんなのだそうだ。