ヘイト増長させる大甘処分 | 平野幸夫のブログ

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ギリシャ語を語源とする「クロニクル」という
言葉があります。年代記、編年史とも訳されま
す。2014年からの独自の編年記として綴りま
す。


公の立場をわきまえない言動が後
を絶たない。韓国・ソウルの空港
で「韓国は嫌いだ」と言って暴れ
た厚生労働省の賃金課長。日本年
金機構の世田谷年金事務所所長は
韓国人について「属国根性のひき
ょうな民族」とネット投稿した。
理性に欠けた差別発言が世界に拡
散され、この国の劣化ぶりに改め
て目を覆いたくなる。こんなヘイ
ト行動を増長させているのは、大
甘処分だろう。本来なら、懲戒か
諭旨免職に相当するが、いずれも
「官房付」や「人事部付」だけの
緩い処分に抑えた。そこからは偏
狭なナショナリズムを高揚し続け
る政権がはびこらせた政治風土が
見えてくる。


ソウルの空港で空港職員に殴りか
かったり、足蹴にした厚労省前賃
金課長は入国直後にもトラブルを
起こし、飛行機への搭乗も拒否さ
れていたといい、けっして一過性
のヘイト行動でなかったことが分
かった。この前課長は海外渡航届
も出しておらず、綱紀の乱れが想
像以上に広がっていることをうか
がわせる。


「統計不正」の究明が焦点になっ
ている今国会は野党の緩い追及に
よって依然、官邸中枢による賃金
偽装工作の全容が未解明だ。賃金
が上がらず、国民の生活水準が年
々ダウンしているのにそれを隠す
アベノミクスの偽装に一番痛打に
なるのが、実質賃金の公表だ。偽
装を見破られる失態を覆い隠すた
め厚労省は拒否し続けている。前
賃金課長はその統計作業の重要な
役割を担っていたはずだ。そんな
キーマンが私用とは言いながら、
渡航先で暴れ回ったことに、言葉
を失う。もしかしたら、野党の要
求をかわすために、海外に逃がし
たのかと、邪推したくもなる。


前年金事務所長の差別投稿は同じ
くらい深刻だ。韓国人に対し他に
も「在日一掃 新規入国拒否」な
どと投稿。精神科医の香山リカさ
んを「さすが金梨花さん」と無関
係な名前をあげて非難していたと
いい、野党議員を「いるだけで金
をもらえるタカリ集団」と罵倒し
ていた。こんな議会制民主主義の
意味も理解していない言葉遣いは
、昨年の国会で「モリカケ疑獄」
の追及が始まった頃、安倍首相を
支持するネット投稿と酷似する。
香山さんが「自分が診断した障害
者年金の申請者に不利益な扱いを
していないか心配」と述べたのも
、よく理解できる。


国会はいつの間にか、統計不正の
追及が止み、メディアは新元号や
統一地方選と参院選の動向ばかり
を伝える。野党も浮足立ち、正す
べき課題に上の空にみえる。連日
1面記事になる元号報道は各方面
で行き詰まった安倍政権の政策を
覆い隠すには格好のテーマだ。4
月1日の新元号決定から5月の10
連休までの狂騒ぶりが今から容易
に想像できる。それにほくそ笑む
安倍晋三首相の顔が頭に浮かぶほ
どだ。


過度な元号報道は政権の思惑に沿
うことになる。有識者会議と称す
るメンバーは相変わらず、御用学
者やメディア経営者らが中心だ。
危険なのは皇国史観が国民の政治
意識に刷り込まれることである。


「この国だけが特別優れているわ
けでない」と言うだけで「反日」
とされる不幸な時代である。皇国
史観に染まり、自国の「内なる矛
盾」に目が向かない役人らのヘイ
ト行動をもっと厳しく指弾し、そ
の背景に目を凝らすべきだろう。


     【2019・3・28】