記念式出席に最不適の副総理 | 平野幸夫のブログ

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ギリシャ語を語源とする「クロニクル」という
言葉があります。年代記、編年史とも訳されま
す。2014年からの独自の編年記として綴りま
す。


「古い悪魔が再度目覚めつつあ

る」


フランスのマクロン大統領が高ま
るナショナリズムの兆候に声を強
めて警鐘を鳴らした。パリの凱旋
門前で11日開いた第一次世界大戦
終結100年記念式典で、各国首
脳を前に演説した。安倍晋三首相
に代わって日本から出席した麻生
太郎・副総理に最も聞かせたい言
葉だった。かつて「ナチスの手口
に学んだらどうか」という暴言を
吐いた人物にはマクロン演説は上
の空だったのではないか。



黒いコートに身を包んだマクロン
大統領は初冬の寒さだけでなく、
迫りくるナショナリズムの高まり
に身構えるように気迫ある口調だ
った。まるで目前に居並ぶトラン
プ大統領やプーチンロシア大統領
ら70人の各国首脳に聞かせるかの
ようでもあった。世界で1000
万人以上が戦死した第一次大戦の
後も第二次大戦を引き起こした歴
史の教訓を人類全体が共有すべき
と述べた。中距離核軍縮合意を無
にしようとする米ロ両首脳の眼前
で、遠慮なく「悪魔の再来」と批
判した勇気ある名演説だった。


「大戦後に誰もが平和を誓ったが
、ナショナリズムや全体主義の高
まりが二度目の大戦を生んでしま
った。歴史は繰り返す時がある。
愛国主義はナショナリズムと正反
対の位置にあるものだ」



よほど耳が痛かったのか、トラン
プ大統領はこの後開かれた「平和
フォーラム」に出席しなかったが
、ドイツのメルケル首相が演壇に
立ち危機感を共有してこう演説し
た。


「国際的な協力が疑問視されよう
になり、国家主義的な視野の狭い
考え方が再び広がっている」


逆風が吹く欧州の二人のリーダー
が共に同じ考えで、世界に拡散す
る自国第一主義と全体主義的風潮
を戒めたことに強くうなずいた。
それにしても、こんな現代史の節
目となる国際的な行事に、ことも
あろうに、「ナチス発言」を反省
もせず、差別的発言を繰り返す人
物が出席することがふさわしいか
自問も出来ない。そして日本とい
う国がどうみられるか想像もでき
ない政権の体質が改めてさらけで
た。麻生氏はどんな顔をしてマク
ロン演説をきいていたのか、のぞ
きたくなった。通訳があっても、
意味が分からなかったかもしれな
い。



こんな誤った政治判断だけでなく
安倍首相自らまた失態を見せつけ
た。米国議会中間選挙後、いち早
く勝利宣言をしたトランプ大統領
と電話会談して祝意を伝えた。上
院では共和党が過半数を維持した
が。下院の過半数は民主党に奪還
された。今後の展開次第では、ロ
シア疑惑による「トランプ弾劾」
や予算案審議の審議中断などが想
定され、強がっても「勝利」とい
えるものでなく、トランプ政権の
敗北という見方も多い。外交上の
常識は、相手国の内政にふれない
のが慣行とされるのに、今回の祝
意伝達はまさに「ポチ外交」の面
目躍如である。この国の有権者と
して誠に恥ずかしい。



最後に、マクロン演説は世界の人
々の胸に響いたが、それを一歩超
え、愛国主義という言葉とも離別
、地球市民の一人でいたい。


「人類から愛国心を叩きださなけ
れば、けっして平穏な世界は訪れ
ない」


こう警告した英国の作家、バーナ
ード・ショーの言葉を改めてかみ
しめている。


    【2018・11・12】