止まらぬ「国家の私物化」 | 平野幸夫のブログ

平野幸夫のブログ

ギリシャ語を語源とする「クロニクル」という
言葉があります。年代記、編年史とも訳されま
す。2014年からの独自の編年記として綴りま
す。


安倍内閣の支持率が大きく落ち込
んできた。新聞各社の世論調査で
は、それでもまだ30%を割り込ん
ではいない。国家の骨格を揺るが
せる大疑獄の様相を一段と強めて
いるのに、まだこの数字を維持し
ていることにかえって驚く。改め
て安倍政権下の5年間で、著しく
劣化した有権者の政治意識の低下
を感じる。他にも、教育現場への
国のかつてない干渉に続き、NH
Kや国家公安委員への「アベ友」
の相次ぐ起用など電波、治安面へ
のあからさまな介入が止まらない
。週明けの国会では、森友学園疑
惑について佐川宣寿・前国税庁長
官の証人喚問ばかりに目を奪われ
ているが、「国家の私物化」の全
体像を俯瞰しておかなければなら
ない。


安倍政権の政治手法の特徴は、安
倍首相と同じ国家主義的価値観を
持つ有識者を各分野の審議会など
に起用し、一見公正さを装って出
された意見や政策を実施すること
だ。国民の意見が大きく分かれた
安保法制をめぐる有識者懇談会や
国家戦略特区の委員会などの結論
は最終的に首相の意に沿うように
提出され、政策が実行された。


そんな「安倍人事」で起用された
人には批判も強い。安保法制に賛
成意見を述べて、同志社大学の学
内から激しい批判を浴びて、学長
選挙で落選、学長の座を追われた
村田晃嗣氏が今月1日付けでNH
K経営委員に就いた。安倍首相に
その極右思想が好まれて同じNH
K経営委員だった作家、百田尚樹
氏らに代わって、「政府お目付け
役」として送り込まれたのである
。公共放送をコントロール下にお
くという首相の意思が露骨に見え
る。


また、警察行政を仕切る国家公安
委員に読売新聞論説主幹の小田尚
氏が今月5日付けで抜擢された。
俸給年2300万円という厚遇ぶ
りで、昨春、「安倍改憲」の内容
を紙面で全面的に紹介した「ご褒
美」という批判がわき起こってい
る。小田氏は時事通信の田崎史郎
氏や朝日新聞の曽我豪氏ら共に、
安倍首相とひんぱんに高級料理店
で食事をする「アベ友」の一人。
あきれるばかりの「お友達人事」
ラッシュだ。


それでも支持率の急落で「安倍政
権のひずみ」が方々から噴出し始
めた。前川喜平氏の学校での講演
にクレームをつけるような文科省
の問い合わせが発覚したのは、教
育現場の悲鳴が発せられたとみる
べきだろう。教育へのこんな異常
な介入は聞いたことがない。公正
さをわきまえない問い合わせは、
自民党議員の注文があったためと
報じられた。その議員名も明らか
にされるべきだ。


国会では近く行われるはずの「佐
川氏の証人喚問」だけで、不当な
国有地不当払い下げの全容を解明
できるはずはない。最低限、安倍
昭恵夫人、迫田英典元・財務省理
財局長、谷査恵子・イタリア大使
館1等書記官の証人喚問は不可欠
である。それだけでなく、現在進
行形の補助金詐欺の疑いで刑事告
訴されている加計学園疑惑も同時
進行で究明されなければならない


大阪地検や東京地検がまだ強制捜
査に着手しないのが理解し難い。
財務省は改ざん前原本を「地検に
渡し、ない」と国会で虚偽答弁を
していたのはっきりした。証拠隠
滅の恐れがあるのは、籠池夫妻よ
り財務省であり、首相官邸である
。改ざん前原本も国会で示したの
がすべてかどうか疑わしい。谷佐
恵子氏と財務省理財局の担当者と
直接やりとりしたファックスの原
本とメールが出されていない。早
急に捜索で押収すべきだ。「まだ
隠している」部分に疑惑の核心が
つづられているはずだ。今後の捜
査や調査報道はこの一点だけに焦
点をあて、証言と物証をつかめば
、全面展開の道が開けるのは間違
いない。


一方、2015年4月2日、国家
戦略特区選定依頼のため首相官邸
を訪れた今治市企画課課長、同課
長補佐、加計学園事務局長の3人
が柳瀬唯夫首相補佐官に会ったこ
とが今治市の文書で裏付けられた
。内閣府はその文書を改ざんする
よう隠ぺい工作までしていた。こ
の点も国会で追及されなければな
らない。


国会の予算員会だけで一連の疑獄
を解明するのは物理的に無理であ
る。何度も求めたいが、早く特別
委員会を設置し、衆参院挙げて究
明してほしい。



   【2018・3・19】