善悪の判断できぬ官僚増殖中 | 平野幸夫のブログ

平野幸夫のブログ

ギリシャ語を語源とする「クロニクル」という
言葉があります。年代記、編年史とも訳されま
す。2014年からの独自の編年記として綴りま
す。


権力という名の厚い岩盤の下から
腐りきった病巣が見えてきた。森
友学園との国有地取引決済文書の
290カ所もの改ざんは、「やっ
てはならない」という善悪の判断
さえできぬ財務官僚らが想像以上
に増殖している実態を見せつけた
。文書の原本に右翼団体「日本会
議」と連携する国会議員懇談会副
会長に、自ら安倍晋三首相と共に
名を連ねていた麻生太郎財務相。

それでも改ざん公表1日前に初め

て知ったとうそぶく。謝罪会見で、
頭も下げず、記者を見下すその姿
は「驕り」と「醜さ」そのもので
ある。以前からナチス・ドイツの
手法を賛美したり、教育に戦前の
価値観を盛り込む政権トップ二人
の名が官僚を威圧させ改ざんに走
らせた。この国の最大の危機は、
国家の中枢で思考を失った官僚ら
が政治家の「悪だくみ」に方々で
加担し、いとも簡単に犯罪に手を
染めていることである。


政権トップによる「国家の私物化
」の疑いが強いとこのブログで書
いてはや1年余が過ぎた。その深
刻な事態を何とか止めようとした
朝日新聞を中心とするジャーナリ
ズムの意地と覚悟によって、よう
やく隠蔽の策謀が発覚した。麻生
財務相に「理財局の一部がやった
」と責任転嫁されても、野党共同
ヒアリングで否定も出来ず説明す
る理財局次長ら幹部。しかし、こ
んな大がかりな公文書改ざんが理
財局の一部職員の判断だけででき
るはずもない。何でも下のせいに
して逃げ回る麻生財務相の浅まし
さが際立つ。そして従う理財局幹
部の保身ぶりに暗然としてしまう


同じくらい驚いたのは会計検査院
がこの改ざんを知っていたことだ
。国交省から改ざん前の文書を示
されていたのだが、ろくに精査も
せず改ざん後の書類に基づき検査
を終了していたのである。強い調
査権限を持ちながら、底深い不正
に踏み込めなかっただらしなさと
唯々諾々と従った国交省の担当職
員たち。霞ケ関の方々から使命感
を放棄した官僚が跋扈する空恐ろ
しい景色が見えてくる。


ふと、既視感を覚えてしまった。
第二次世界大戦下、ナチス・ドイ
ツによるホロコーストの現場将校
だったアイヒマンは「自発的に行
ったことは何もない。善悪を問わ
ず、自分の意志は介在しない。命
令に従っただけでだけだ」と裁判
で弁明した。今回、290カ所も
森友学園決済文書を改ざんした財
務省理財局職員らとアイヒマンが
重なってみえる。理財局職員もア
イヒマンと同じ言い訳をするだろ
う。「上の指示に従っただけ」と


このアイヒマン裁判を傍聴したド
イツ人の女性哲学者、ハンナ・ア
ーレントの警鐘が胸に響く。


「人間であることを拒否したアイ
ヒマンは、人間の大事な質を放棄
しました。それは思考する能力で
す。思考ができなくなると、残虐
な行為に走るのです。『思考の嵐
』がもたらすものは、知識ではな
く善悪を区別する能力であり、美
醜を見分ける力です」


飛びぬけた秀才らが集まったはず
の財務省の稀に見る不祥事。何が
アーレントの指摘した「善悪を区
別する能力」を失わせたのか。刑
事罰に問われるような行動にさえ
手を染めさせたのは、「出世の甘
い蜜」か保身か。どちらにせよ、
倫理観を喪失、考え抜くことを怠
った結末としか言いようがない。


出先の近畿財務局で真面目に職務
にあたっていた担当職員が不幸に
も自死した。キャリアが集まる理
財局でまさか今回のような大掛か
りな改ざんが行われるとは夢にも
思わなかっただろう。親しい人に
「汚い仕事をやらされた」「常識
が壊れた」と語っていたという。
不当な払い下げを強いた悲しい犠
牲者といえるだろう。本来なら、
このことだけでも、安倍首相と麻
生財務相は政治責任をとって、辞
任すべきである。


今回の改ざんの全容解明を急ぐ必
要がある。そのためには安倍昭恵
夫人、佐川前局長、売買時の迫田
英典元理財局長、谷査恵子・イタ
リア大使館1等書記官の国会への
証人喚問は不可欠だ。野党は遅ま
きながらようやく1年前のこのブ
ログで提案していた「国会での特
別調査委員会設置」を主張し始め
た。本来究明すべきは8億円もの
過剰な値引きがなぜ見過ごされた
かを突き止めることである。


安倍政権による「国家の私物化」
はまだ未解明部分が多い。加計学
園認可をめぐっては、国家戦略特
区適用4条件がクリアされておら
ず、首相官邸を訪れた加計学園の
幹部の入館・面会記録も隠された
ままである。こちらも森友学園の
疑惑をはるかに上回る補助金詐欺
の疑いが出ている。一切釈明しよ
うとしない「首相の腹心の友」で
ある加計孝太郎理事長の国会喚問
も急がれる。さらに、「スパコン
疑惑」ではわずか、1週間たらず
で、数十億円もの補助金が安倍首
相と親しい元TBS記者の共同法
人代表に出された……。レイプで
逮捕状が出されたその記者は逮捕
もされず官邸の北村滋内閣情報官

に相談していた……。


安倍政権の闇は深く、果てしなく
広がっている。


         【2018・3・14】