「ようやく桜が満開になったので
、来ませんか」。長く親しくさせ
てもらっている飛騨・高山市の知
人から花見に誘われて、神戸から
「バス旅」で出かけた。もう5月
も近いというのに、木々の芽吹き
もまだだったが、花々はちょうど
満開の季節を迎え、「遅い春」の
青空に映えていた。桜は名桜だけ
でなく無名の桜の姿にも情趣があ
り、目に刻んだ。今年は高山祭り
の祭り屋台がほかの「山・鉾・屋
台」32件と共にユネスコの無形文
化遺産に指定されたのにあわせて
、今月末の29、30日に23台が集結
する総曳きの大イベントがあり、
町は祝祭気分にあふれていた。
飛騨の桜と言えば、飛騨一宮の「
臥竜桜」が最も知られる。十数年
前、初めて見た時、竜の姿のよう
に周りを圧する枝ぶりに驚嘆した
。一時、樹勢が衰えたと心配され
ていた名桜は枝ぶりがしっかりし
てよみがえったようだった。樹齢
約1100年前の江戸彼岸桜2本
が高さ20㍍、南北30㍍に広がり、
文字通り竜が地に臥す姿に似る。
ちょうど満開だったが、まだしば
らくは楽しめそうだ。
高山は朝市のある宮川沿いの桜が
観光客に人気がある。20年以上前
から高山を訪れているが、今外国
人の多さに驚く。中韓、台湾だけ
でなく白人の多さも目につく。桜
にシャッターを合わせるどの顔も
うれしそうだ。そんな人々の多い
上三之町周辺の喧騒を離れて、支
流の江名子川沿いの枝垂れ桜をめ
でた。高山らしく骨董店も多い。
無人の店に黄瀬戸の椀が置かれて
いたので、気に入って手に取ると
、形がよくコインを投げ入れて手
に入れた。さっそくあすから使い
たい。
旅の目的だった花見の宴は友人が
何日もかけて用意してくれた。場
所はソメイヨシノの古木が咲き揃
う高台の隠れ里。緋毛氈がひかれ
、千成瓢箪を模した五段重ねの弁
当には市内の名料亭の料理がぎっ
しり詰められていた。刺身、煮物
すべておいしかったが、菜の花と
ホタルイカが口の中で一番春を印
象付けてくれた。
夜は町屋風のイタリアンの名店「
オステリア・ラ・フォルケッタ」
で、シェフの土井正行さんからイ
タリアでの修行時代の話を聞きな
がら、かの地の家庭風料理に舌鼓
をうった。
夜の締めはやはり「高山ラーメン
」だ。ちじれ麺と素朴なしょう油
味がほどよく調和した「飛騨天狗
」の戸を開いた。昨秋、新しくで
きた「でこなる横丁」の一角にあ
る小さい店で、客は自分ひとり。
ほどなくして中華そばがおかれた
。スープをすすると、初めて四国
の中華料理店で中華そばを食した
時の「昭和の味」が口中に広がっ
た。肥満気味の体に「毒」なのは
よく分かっているが、止められな
い。また中断したダイエットは明
日からやり直しだ。
月末に春秋の23台もの総曳きが行
われる高山の祭り屋台は「動く陽
明門」とも称され、豪華絢爛ぶり
で知られる。彫刻、金具、織物な
どに飛騨の匠の技が施され、見ど
ころたっぷりという。できれば、
再訪したいが、残念ながら難しそ
うだ。時間に余裕がある方には「
ぜひに」とお薦めしたい。
(写真は宮川沿いにのソメイヨシ
ノ、一宮の臥竜桜、江名子川沿い
の枝垂れ桜、陣屋朝市前の紅桜、
千成瓢箪の弁当が並ぶ花見の宴
、「オステリア・ラ・フォルケッタ」の
外観、夜の「でこなる横丁」、「飛騨
天狗」の中華そば、高山祭り屋台
総曳きイベントのポスター)
【2017・4・26】








