投げかけたい「兵は死地なり」 | 平野幸夫のブログ

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ギリシャ語を語源とする「クロニクル」という
言葉があります。年代記、編年史とも訳されま
す。2014年からの独自の編年記として綴りま
す。


  「兵は死地なり」。戦争というもの
は国家や民にとっても死生存亡の命運
にかかる大事であるという意味で、中
国の賢人、趙奢の言葉である。軽々し
く兵法を語るわが子、括をこの言葉で
戒めた。今の日本で国会の合意もない
まま、政府は日米新防衛協力指針(ガ
イドライン)を18年ぶりに改定すると
いうニュースに、戦争の足音が聞こえ
てくるような慄然とした思いにかられ
る。憲法無視の防衛政策を次々立案す
る安倍政権の防衛政策責任者らに、趙
奢の言葉を投げかけたくなる。


 日米の防衛・外務の局長級スタッフ
は昨日、テレビ会議で自衛隊の米軍支
援を拡大するための指針改定を話し合
ったという。元々、この指針は日本が
他国に武力攻撃された時の米軍の役割
を定めた文書だが、今回の改定は、自
衛隊の活動範囲を中東のホルムズ海峡
までに拡大し、米軍と一体となるのを
可能にする目的に作業が進んでいる。



 テレビ画面で、もしかしたら自衛隊
の血が流れ、多くの犠牲者が出るかも
しれないようなことを決めている場面
を想像するだけで悪寒が走る。政府に
誰がそんな交渉権限を与えたのか。法
的根拠は何もないはずだ。


 憲法9条で海外での武力行使は禁じ
られているのに、政府は後方支援名目
で米軍と一体となった軍事行動を展開
できることになる。停戦後という制約
もなくし、範囲も地球の裏側でも出動
できることになる。


 この指針に法的根拠を与えるための
安全保障関連法案が連休明けの国会に
一括提出される。審議時間を短縮する
ための姑息なやり方で、野党からは一
括ではなく1本ずつの慎重審議を求め
る声も強い。


 社民党の福島瑞穂元代表は一連の法
案を「戦争法案」として国会でただし
たが、自民党は「戦争法案」が妥当で
ないと削除要求にはあきれてしまった
。正確にいうなら「戦争準備法案」で
、本質は変わらない。削除など認めれ
ば、国会の質問さえ意味なくなり、民
主主義国家の根幹を否定することにつ
ながる。


 まるで、アジア太平洋戦争の開戦前
の帝国議会で、軍部や軍部に擦り寄る
政治家を批判する「粛軍演説」をした
斎藤隆雄の議員を思わせ、今回も野党
から削除に反発する声が上がったのは
当然である。目に余る政権の暴走ぶり
だ。


 法案審議の動向によっては国の針路
が「戦争する国」に大きく変わる。戦
後最大の転機と言ってよく、国民がこ
のまま無関心のまま見過ごせば、もう
取り返しのできない事態になる。そん
な危機感を抱き、注視し続けたい。


       【2015・4・24】