有志連合とは違う道探ろう | 平野幸夫のブログ

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ギリシャ語を語源とする「クロニクル」という
言葉があります。年代記、編年史とも訳されま
す。2014年からの独自の編年記として綴りま
す。

 「その罪を償わせるため、国際社会
と連携していく」。後藤健二さん殺害
と見られる動画が流され、人質事件は
最悪の結末になった。直後の閣僚会議
で安倍晋三首相は強い調子でこう語っ
た。しかし、イスラム国に事件への口
実を与え、ほとんど無為な対応しかで
きなかった自らの政治責任については
口をつぐんでいる。今後警戒すべきは
、安倍政権が米国主導の有志連合に積
極的に加わり、日本が攻撃の標的にさ
れるリスクを高めることだ。安易に有
志連合に加わることは、際限のない憎
悪と暴力の連鎖が続く渦中に国民が放
り込まれることである。


 後藤さん殺害の報が流れる前から安
倍首相は国会答弁で、「海外で邦人が
危害にあった時、現在自衛隊が持てる
能力を十分に生かせない」と新たな自
衛隊海外派兵法整備の必要性を訴えて
いた。


 現憲法では自衛隊員以外の邦人が攻
撃された場合以外は武器に使用を禁じ
ている。安倍首相はよく「何もしなく
ていいのか」と言いながら武器使用の
基準拡大させる意向を述べているが、
人質救出など容易ではない。むしろ、

安易に自衛隊員をその場に送り込むこ
とは、相手に日本全体が敵になったと
明らかにすることにつながり、その標
的は拡大してしまう。強硬姿勢をとれ
ばとるほど、国内での危険性が高まる
ことになる。


  米国オバマ政権はイスラム国と戦う
有志連合を60カ国に拡大、日本も昨年
末の閣僚級会談に参加したが、幸い1
月のロンドンでの閣僚級会談には参加
していない。まだ引き戻すことができ
る。ここで感情的になって報復の意志
を示せば、さらなる攻撃を生む危険を
呼び込むことを自覚すべきである。


 今後、イスラム国に武力で報復する
ようなことになれば、相手が消滅する
までその行使国はターゲットになり続
ける。今、選択すべき道は、安倍首相
が人質事件直前にエジプト・カイロで
人道支援策を発表しながら、挑発して
しまって無用の口実を与えたようなこ
とではなく、狙われるリスクを極力低

減させることだ。


 狂信的なイスラム国はなぜ生まれて
しまったのか。その背景の分析、検証
が不可欠である。まず思考の前提にな
るのが米国によるイラク戦争でイラク
とシリアなど周辺国の治安が悪化した

点だ。


 米国が国連決議もないまま大義名分
なき戦争に踏み込み、数十万人もの無

辜の一般市民を犠牲にした罪は深い。
憎悪がさらなる憎悪を生んでいる。今
の最悪の状態はアメリカと有志連合が
もたらした写し鏡である。しかし、彼
らからその自覚も反省もうかがえない


 憎悪の連鎖を断ち切るためには、戦

後ずっと海外で武力行使をしないでき
たという平和国家像を強調し、発信す
るすることであろう。イラク戦争に自
衛隊が支援活動した以前に戻すことこ
そ、これ以上国民を不毛な戦いのに巻
き込ませない最善の選択である。一人
の不慮の死が悪しき歴史の分岐点にな
らないことを切に願う。


        【2015・2・1】