暴挙、独裁極まれり……。同じ意味の言葉をどれだ
け重ねても、怒りは収まらない。政府は1日、ついに集
団的自衛権行使を容認する閣議決定をする。「簡単に
行使できないように歯止めを二重、三重にかけている」
という釈明をどれだけに人が信じているだろうか。わず
か数カ月前「政府が勝手に決めてはいけない」「解釈
変更は国民に何も聞かないで一方的にやることでは
ない」と言っていた公明党の山口代表らの豹変ぶり
をみれば、行きつく先は明らかだろう。
それにつけてもチェック機能を果たすべき野党のだ
らしなさと主要メディアの表層的な論調が際立つ。特
に政権与党の広報機関に成り下がったように追認し
がちな政治報道には「本来の使命を忘れて恥ずかし
くないのか」と問いかけたくなる。
政府の憲法解釈の変更は憲法65条の「行政権は内
閣に属す」の一節を根拠にしているが、これは明らか
に海外の武力行使を禁じた憲法9条と同99条の閣僚
、国会議員らの憲法尊重擁護義務に違反する。
ところが、比較的右寄りでない主要紙の政治コラムは
、この最重要論点を真正面から突くことなく「説明責任
を果たせていない」「前のめりの首相」(A紙、H編集委
員)という型通りの批判や「平和憲法を守らんの精神
は尊いが、平和は、自国の手続きのみによって定ま
るものではない」(B紙、Y氏)と憲法順守を単に「手続
き」とみなす驚くべき論調さえ見受ける。
かつて作家の辺見庸氏は自省なき権力を「クソ」に
例え、それに十分に批判もせず群がる記者らを「クソ
バエ」に例えた。品が良い言葉でなく、あまり使いたく
ないが、指摘にはうなずきたくなる。
安倍首相がパネルを使って、集団的自衛権行使の
正当性を強調した5月15日の記者会見直後の夜、Y
氏を含む新聞社、放送会社の論説、編集委員らが安
倍首相と有名すし店で高級料理を共にしたという翌日
の朝刊には、あ然とさせられた。
7割近くの国民が憲法解釈による海外での武力行使
容認に反対もしくは疑問視していることなど眼中にな
いような節操のない振る舞いである。世論の大勢を察
し、止めさせる記者がいなかったというメディア劣化の
根深さに暗然とさせられる。
【2014・7・1】