このブログは18歳の時に開設した。

 今から12年も前の話だ。

 ぼくは高校三年生だった。

 

 

 

 大げさかもしれないが、ここには、ぼくの人生の軌跡が残されている。節目では必ずブログを更新してきた。最近はサボってしまうことが増えていたのだが、久しぶりの更新ということもあり、自分のブログを読み返してみた……。

 

 

 

 若さとは恐ろしいもので、初期のブログは自撮りに次ぐ、自撮りが続く。カッコつけた顔に、可愛こぶった顔。かお、かお、かお、のオンパレードだ。自信があったんだろうなあ、と思わず目を細めてしまうような記事が大量にアップされている。

 

 

 

 それが年齢とともに落ち着いていく。写真が減り、文章にも背伸びをした表現が現れるようになっていった。キナリが大人になっていくのだ。読み返すとゾクゾクしてしまうが、おもしろいくらい変化していく自分が興味深い。

 

 

 

 身をもって「人は変わる」ことを証明しているブログだと思った。おすすめはしないが、実験でもする感覚で読み返してみて欲しい。スマホを壁にぶつけたくなるはずだ。

 

 

 

 どの時点から大人になるのかは分からない。自然の流れ、というしかないのだろう。だが、ぼくは自分のブログを眺めながら、「なにかキッカケはなかったのだろうか?」と考えてみた。すると、一つ、身についた習慣があったことに気が付いた。

 

 

 

 それは、読書だ。

 

 

 

 1ミリも威張ることではないが、ぼくは子ども時代に読書をした記憶がない。活字を見るたびに目を回している子どもだった。

 もちろん読書感想文は、あらすじを書き写すだけ。だから選ぶ本が重要になってくるのだが、ぼくは二つのポイントで選んでいた。

 

 

 

 1、強そうな名前の作者であること。

 2、カッコいい題名であること。

 

 

 

 今となれば、この発想は決して悪いものではないと思う。新たな出会いの香りがプンプンするし、凝り固まった思考を和らげてくれそうな選書方法だ。しかし、読書経験もなく、本嫌いだったぼくには、少し危険な手法だったのかもしれない。

 

 

 

 今でも忘れないが、ぼくは小学校4年生の夏、読書感想文にウィリアム・ゴールディングの「蠅の王」という作品を選んでいた。文庫版で348ページ。ノーベル文学賞作家のデビュー小説だ。

 

 

 

 新潮文庫の「蠅の王」の裏表紙には、こんな一文が書かれている。

 

 

 

〈少年漂流物語の形式をとりながら、人間のあり方を鋭く追究した問題作〉

 

 

 

 問題作を選ぶべきではなかったと思う。しかも、わけもわからず書き写すもんだから、自然と大人びた文章が出来上がってしまい、案の定、先生に呼び出しをくらう。そして、怒られたもんだから、余計に本から離れるようになり……、という悪循環におちいった。

 

 

 

 そんな少年時代をすごしたが、仕事がら台本を読むことも影響したのだろう。大人になるにつれ、徐々に読書をするようになったのだ。小説、エッセイ、新書、ルポルタージュなどなど。最初は年に数冊だった読書が、年々数を増していった。

 

 

 

 本を読むたびに自分の世界が広がり、言葉が蓄積されていく。それが「自然の流れ」を生み出し、思考や文章を変えていった。

 

 

 

 読書がぼくを変えた、といってもいいかもしれない。

 

 

 

 とはいえ、変化には色々な側面もある。面白い文章を読むにつれ、ぼくは自分の言葉に違和感をおぼえるようになっていった。旅から帰ってくると日常の輪郭がクッキリ見えてしまうことと似ているかもしれない。

 

 

 

 自分の言葉がやけに客観的に映るようになり、なんだかイヤになってしまったのだ。自意識過剰もいいところだが、次第に書くことから遠ざかり、ブログ更新は滞り、他のSNSでの発信も激減していった。前回のブログ更新は4ヶ月も前になる。

 

 

 

 さて。先日、衣替えついでに部屋の掃除をしていたら、こんなものが見つかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの「蠅の王」だ。本を枕に、よだれを垂らしていた少年時代がフラッシュバックする。ぼくは片付けを中断し、ページをめくってみた。

 

 

 

 金髪の少年とメガネのぽっちゃりした少年が孤島をさまようシーンから物語は始まった。どうやら周りに大人はいないらしい。二人の少年は、拾ったほら貝を使って仲間を集めていくのだが……。

 

 

 

 次のページ。次のページ。次のページ!

 

 

 

 ホコリが舞う中、ぼくは夢中になって本を読んでいた。少年文学というジャンルに属するそうだが、とんでもない!

 

 

 

 孤島に取り残された純真無垢な子どもたちが、社会性を身につけていくと同時に「悪」に染まる瞬間が生々しく描かれていくではないか。そして、倫理観がないからこそ引き起こしてしまう凄惨な事件の数々に背筋が凍った。

 

 

 

 どこが少年文学なんだ!

 これは、哲学書じゃないかっ!

 これはブログに書きたい、書きたいぞ!

 

 

 

 そんな気持ちが自然と湧いていた。【縁】を感じずにはいられなかったのだ。ガチャン、ガガガガ。自分の中で、錆びた歯車が動き出した気がした。

 

 

 

 ぼくは生まれてこのかた「読書感想文」というものを書いたことがない。でも、もしかしたら、この本は、ぼくに感想文を書かせるために現れたのかもしれない!

 

 

 

 だから、ブログで読書感想文を書いてみようと思う。恥ずかしい気持ちはあるが、これもご縁だ。次回は「蠅の王」について書いてみる。思い切って、「読書感想文ブログ」とかにしてもいいかもしれない。

 

 

 

 本との再会が、ブログを再開させるキッカケとなった。

 

 

 

 よし。たのしんでいこうっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 30歳の梅雨。