――前半では、現在取り組まれている舞台「吾輩は漱石である」についての話をさせていただきましたが、後半は平埜さんご自身の話に移っていきたいと思います。

 

お手柔らかにお願いします。

 

――己次第だと思いますが・・・

 

はい?笑

 

――(咳払い)では、来年の2月で30歳を迎えるということですが、今の心境をお聞かせください!

 

お、そういう感じで進んでいくんですね!

 

ぼくは早生まれだから来年が30歳だけど、同級生は今年で30歳なんですよね。だから「もう自分は30歳だ」と思ってますよ!笑

 

――どういうことでしょうか?

 

別に大したことじゃないんですけど、仕事現場とかで「何歳ですか?」と聞かれたら「30歳です」って答えてます。笑

 

――それは、早く30歳になりたいということでしょうか?

 

別になんとも思ってないです。笑

早生まれって、色々面倒なんですよ。

学年がどうとかの説明になっちゃうから。

だから、分かりやすくするためにも「30歳です」って。笑

 

――確かに不思議な文化ですよね。早生まれって。

 

そうしたら、言ってるうちに、自分の中でも「30歳になった感」が生まれてきちゃって。笑

 

――あらら。

 

年が変わったら年を取る、くらいの方が分かりやすいですよねえ!

 

――では、平埜さんは、来年31歳ということですか?

 

そうそう! 

そんな気分です!

 

・・・えっと、この質問、なんですか?笑

 

――正直、こちらも特に聞きたいことがあるわけでもないので。

 

失礼なっ!!!笑

 

――えーっと・・・、では、30代に突入ということで、改めて20代を振り返った時に、心境に変化などはありましたか?

 

ありまくりでしたよー!

20代中盤くらいが、一番悩んだんじゃないかな。

 

――なにを、どう悩んだのでしょうか?

 

やっぱり、一番は仕事についてですかね。

このまま俳優を続けていくのだろうか、とか。

ぼくのやりたいことってなんだろう、とか。

そういう、内面的な葛藤があったと思います。

 

――どうしてですか?

 

え、考えなかったですか?

 

――確かに考えましたね。

 

特に20代中盤って、社会人2~3年目だし。

仕事が自分の体に馴染んできたからこそ、考えてしまう。

 

――そうかもしれませんね。ターニングポイントというか。総務省の労働力調査を見ても、転職者の最も多い年齢は、25歳~34歳だとありました。

 

でしょでしょー!

 

――考え始める年頃なんでしょうね。

 

20代って、なんでも挑戦できる年齢のはずなのに、ぼく、夢とか希望がなかったんですよ。もちろん、お芝居は好きだったんですけど、それも「本当に好きなのか?」みたいなことを考えてしまって。

 

――「本当に好きなのか?」とは?

 

「お芝居が好きなんだ!」と思い込もうとしてるだけなのではないか、と考えてしまったんですね。“好きを疑う”というか。まあ、それは今でもあるんですけど!笑

 

――なにかキッカケはあったのでしょうか?

 

ないんですけど、同世代の俳優の活躍とかが如実な世界ですからね。自分と比べてしまうことは多かったと思います。

 

――たしかに平埜さん世代の俳優さんは、才能の宝庫ですもんね。

 

グサっ!!!

 

――応援してますよ!

 

いやん!

好きっ!

 

――へっ、チョロいな。

 

・・・ん?

 

――では、どのようにして、そんな葛藤をくぐり抜けたのでしょうか?

 

これは、ハッキリとしてて。読書です!

 

――ほう、読書?

 

ぼく、20代中盤から本を読むようになったんですよ。

それで、人生が変わったというか。

世界の見え方に変化がありました。

 

――それまでは読書の習慣はなかったのでしょうか?

 

情けない話なんですけど、ありませんでした。

読んだとしても、一年に4冊くらいかな。

 

――日本人の年間平均読書本数が10冊~20冊といわれてますね。

 

そっかあ。

やっぱりぼく、少ないよなあ。

恥ずかしながら、台本を読む仕事をしているのに、ぼく活字アレルギーだったんですよ。笑

 

――幼少期からですか?

 

はい。

読書感想文は、典型的な「あらすじを丸写しする子」でした。笑

漫画は好きで沢山読んでいたのですが、本はまったく。

むしろ、嫌いでした!笑

 

――それが、またどうして読書を?

 

ずっとコンプレックス意識はあったんです。

ウチの親が読書をする人だったので、家は本の山でしたし。

そして、親からも、ずーーーっと「本を読め!」って言われてきたし。

でも、反発心もあり、読まない。

 

――あるあるかもしれませんね!

 

だから、

本は身近にあるのに、読まない子でした。

さっきも言いましたが、むしろ嫌悪感を抱いていた。

 

――それが、大人になってから突然、読書に目覚めた?

 

そうなんですよー!

自分でも驚いてます!

 

ーー今はどのくらい読まれているんですか?

 

年々、増えてるんですよ!笑

最初は月に4冊くらいだったんですけど、今年はすでに100冊突破しましたねえ。

 

ーーえ!? 年間4冊だったのに!?

 

ね!笑

読書記録をつけてるんですけど、自分でもびっくり!

 

――そんなことって、あるんですか?

 

あるんですよねえ!笑

例えが正しいか分かりませんが、ぼくはヘレン・ケラーの《WATER》現象と呼んでます!笑

 

――ヘレン・ケラーが初めて言葉を手に入れた瞬間の話ですね?

 

はい、ぼくの中にあるなにかが、突然目覚めたんでしょうね。

ヘレンが、水のことをWATERだと認識して、世界には名前があることを理解したみたいに。本と出会って、ぼくの見てきた景色がパーンって、変わったんです。

 

――興味深いですね。キッカケとなった本があるのですか?

 

岩手県にある「さわや書店 フェザン店」という書店で買った、高田大介さんの小説「図書館の魔女」と、清水潔さんが書かれたノンフィクション「殺人犯はそこにいる」を読んで、世界がガラッと変わっちゃいました。

 

――なかなか具体的ですね。どう変わったのでしょうか?

 

まず「図書館の魔女」は全4巻のシリーズものなんですけど、スラスラと読めて、全部読みきったことの達成感がすごかったんです。小学生みたいな感想かもしれないですけど、成功体験というか。笑

 

――確かに大作だと尚更感じるかもしれませんね。

 

しかも、めちゃめちゃ面白いんですよ!

詳しくは調べて欲しいんですけど、「言葉の力って、すごい!」ってなった。

 

 

 

 

――ほうほう。

 

で、この作品はメフィスト賞受賞作品だったこともあり、そこから他のメフィスト賞受賞小説を読むようになりました。とにかく「図書館の魔女」シリーズは、ぼくの読書に対するハードルを低くしてくれた作品ですね!

 

――いい話ですね。では「殺人犯はそこにいる」は?

 

ノンフィクションって、こんなに胸をギュッと掴まれるんだと思いました。それまで本といえば「小説」という印象が強かったのですが、価値観が壊れて、この時からノンフィクションを読みまくるようになったんです。

 

 

 

 

 

――例えば?

 

当時は、事件ものばかり読んでいましたね。凄惨な事件を題材にしたノンフィクション。胸が痛くなるし、読んでて怒りも湧いてくるんです。でも、ノンフィクション作品を読むことで、社会に目が向くようになったんですよ。日本社会に、ちゃんと参加するようになったというか。

 

――それは素敵なことですね。

 

本当に。人生変わったんです。

そして、当時、ぼくは障がい者移動支援のアルバイトもしていたので、社会福祉に関する書籍なども読むようになりました。

 

――すごい変化。

 

ね!

人生、わからんもんですな!

だから、今は読書してこなかった人生を激しく悔いてますねえ。

親の言うことをちゃんと聞けばよかった。笑

 

――今からたくさん読めばいいんですよ!

 

ほんとに、それ!

だから、本を読むようになってから、心も落ち着くようになったし、今、すごく楽しいです。

 

――楽しい30代を過ごせそうじゃないですか!

 

それはそうかも!

同時に責任感とかも生まれてきますけど、夢も見つかって、自分の進みたい方向がハッキリしてきました!

 

――それは、どんな夢か、聞いてもいいですか?

 

ええええ、恥ずかしいなあ!

 

――教えてよー!

 

いいよー!

 

――それはズバリ!

 

はい。

 

「子どもたちが夢を追いかけるキッカケを作る!」です。

 

 

――おおお、素敵じゃないですか!

 

照れる。

あと、最近思ってるのが

「人間とはなんなのかを知りたい」ってことかなあ。

 

――これまた深い!

 

俳優って、いろいろな役を演じられるから、いろいろな勉強をしなければいけないんですよね。今だったら、こまつ座さんの舞台「吾輩は漱石である」という作品に向き合っているので、「夏目漱石」や「井上ひさし」について勉強する。

 

――確かに、そうかもしれませんね。

 

ぼくはね、「もしかしたら、この舞台を見て、小説家を目指す人が現れるかもしれない」とか、「俳優を目指す人が現れるかもしれない」とか、「舞台芸術に携わる人が増えるかもしれない」って、心のどこかで、ずっと思ってるんですよ。

 

――あら、なんかいいですね!

 

そんな気持ちを、カッコつけた言葉にしてみたら、

「子どもたち(若い人たち)が夢を追いかけるキッカケを作る」だったんです。

 

――カッコつけてますねえ!

 

でしょ!笑 

いいでしょ!笑

 

――いいと思います!

 

以前、出会った人で

「キナリさんの舞台を見て、ダンスを始めたんです」って言われたことがあったんです。

 

ぼくは最初、意味が分からなかったんですよ!笑

「え、ぼく、役者業やってたはずなんだけどなあ」って。笑

 

――ダンサーではないですからね。

 

でも、話を聞いてみたら、

ぼくが昔、舞台でダンスを踊ったことがあって。

その舞台を観て、感動してダンスを始めたんだって!

 

――おおお! そういうことですか! 素敵な話!

 

でしょ?

それを聞いて、めちゃくちゃ嬉しくなったんです!

そうして世界が開いたというか。

で、その時、思ったんです!

 

「俳優という仕事は、誰かが夢を追いかけるキッカケを作れる仕事なのではないか!?」って。笑 

 

・・・単純すぎますよねえ。笑

 

――いや、でも、そうかもしれませんよ? 私は「ハンドク!!!」というドラマが好きで、本気で医者を目指したこともありましたから。

 

ああ! まさにそういうこと!

自分は懸命に役を演じてるだけなんですけど、予期せぬ影響力を持っている仕事だなと思って!

 

――素敵な職業ですね!

 

もちろん「きっかけを作るんだ!」なんてことを意気込みながら演じることはないですけど。笑

 

“自分が迷った時の指針”としていいなと思ったんです!

「子ども(若い人)たちが夢を追いかけるキッカケを作る」って。

 

――なるほど、なるほど!

 

はい。そう思えるようになってから、20代の悩みがふっと無くなったというかね。最近は、若い俳優さんたち、学生さんたちを対象にしたWSを開催してみたりもして。

 

――それは、大きな変化ですね!

 

今はハラスメント問題なんかもありますからね。

先日は「ハラスメント防止/リスペクト研修」というものも受けたりして、試行錯誤しながら考えています!

 

――そんなことまでされているんですか!?

 

それもこれも読書のおかげですよ!

 

――そして、そこに辿り着くんですか!!!

 

うん。

だって、本当に読書しない人だったから。笑

でも、だからこそ説得力あるでしょ? 

 

――た、たしかに、すごい変化ですもんね。

 

ていうか、インタビュー、長すぎない?

 

――だって、あなたが勝手に語るから!!!

 

な、な!?

勝手に、だって!?

 

――おっと、失礼しました。では、たっぷり語って頂けましたので、そろそろ最後の質問を!

 

よーし!

がんばるぞー!!!

 

ーー「今、おすすめの本」を紹介してください!

 

ここで、また本の紹介すんのかいっ!!!

 

――恒例質問ですから!

 

そんなコーナーなかったよ!

 

ーーまあまあ!

 

もう疲れちゃったよ!

 

――聞き手と、受け手の二役だもんね。

 

ほんとよ!

文字数、間も無く、4000字だからね!

 

――4000字くらいで、根を上げるのかい?

 

ぐぬぬ。

 

――「今、おすすめの本」は?

 

よおおおし!!!

じゃあ、今年発売された本にするね!

ぼく、今年発売の本、そこまで読めてないから、決めやすそう!

 

――読んでない本が多すぎますもんね!

 

そうなのよ!

過去の名作とか、面白い本がありすぎてビビってます。

 

――では、今年発売された本の中でも、おすすめは?

 

 

「はじめての」

 

 

 

 

「わたしたちが27歳だったころ」

 

 

 

 

 

 

「歴史思考」

 

 

 

 

 

 

――以上の3冊ですか?

 

はい。もう、説明が大変なんだけど。笑

 

「はじめての」は、4名の超豪華作家さんたちによる短編作品集なのですが、YOASOBIさんとのコラボ企画になっていて。

後日、各作品をテーマにした楽曲が作られるんですよ! 

 

 

「ミスター」

原作:島本理生「私だけの所有者」

 

 

 

 

「好きだ」

原作:森絵都「ヒカリノタネ」

 

 

 

 

 

 

↑こんな感じで!

 

すごくない!?!?

 

小説を読んでから、楽曲を聴く。

楽曲を聴いてから、小説を読む。

 

何度も何度も味わえる、新しいエンタメの形だなと思って!

あまりにも贅沢な作品に、きなり、感動です。

超おすすめ!!!

 

 

――おおお、いいですねえ、そして?

 

「わたしたちが27歳だったころ」は、

今年一番、元気をもらった本です!

これは間違いない!

 

こちらは、あらゆる業界で活躍される女性たち25人の「27歳だったころ」を振り返った、エッセイ集? ですね。応援メッセージとも言えるかも!

 

これから27歳を迎える人。

そして、かつて27歳だった方には、ぜひ読んでもらいたい!

つまりは全員なんだけど。笑

 

「ぼくも同じだあ!」と思うことが多くて。

救われましたね! 本当に元気になります!

 

友達にも、おすすめしまくった本です!!!

なにより、悩んでいた自分に贈りたい!!!

 

――熱いですねえ、で、最後は?

 

「歴史思考」は、

とても読みやすいのに、

めちゃんこ勉強になります!!

そして、歴史に興味が湧き、好きになります!

 

歴史思考とは、歴史を学ぶことで自分を客観視(メタ認知)することをいうのですが。俳優の思考とも、どこか似てる気がして。

 

まだ、うまく言語化はできないんですけど。深く共感したんです。役を追求することで、新たな自分の視点と出会う、というか・・・ね。

 

この本、親に勧めたら、どハマりしてくれて、なんか感謝されました!笑

 

ぼくも、すっごい感化されちゃって、古典を勉強しないとなあ、と思い、今は哲学書とかを読み出してます!笑

 

――また新たな世界に飛び込んだのですね!

 

知らない世界だらけだよ!

本当に自分は空っぽなんだな、って思う。

楽しいですね!

毎日が勉強!

 

ーーいやあ、バラエティに富んだ本をチョイスしてくださり、ありがとうございました!

 

疲れたー!

でも、自分の話をすることも少ないので、ありがたかったです!

 

――こちらこそ、お忙しい中、ロングインタビュー、ありがとうございました!

 

明日から舞台本番だからね!

 

――いつこれ、書いてるの?

 

朝だよ! 朝!

数日かけて、少しずつ!

 

――台本読みなよ!

 

読んでるよ!!!

ダメ出しいっぱいだったよ!!!

 

――でも、こういうの、好きなんですね!

 

そうなんだよねえええ!

 

――   一人二役、お疲れ様でした!

 

いえいえ、そちらこそ!

自作自演は、大変だね!

 

――また、どこかで、お願いします!

 

今回と、気持ちが180度変わってるかもしれないよ!

 

――それがいいんじゃない! その変化が!

 

人間だものね。

 

――ええ。

 

舞台の宣伝してもいい?

 

――どうぞ!

 

明日から

こまつ座「吾輩は漱石である」 が開幕します。

タイミングが合ったら、ぜひ、見にきてね!

チケット販売中です! 新宿でやってまーす!

 

 

 

 

――タイミングがあったらね!

 

そうそう! 

タイミング! 

タイミング!

人生は「素敵なタイミング♪」だから!

 

――坂本九の歌で終わるんだ・・・。

 

 

 

 

おわり。