ーーだいぶ久しぶりの登場になってしまいましたね。
どうも、どうも。今日はありがとうございます!
――お元気でしたか?
これが「馬鹿は風邪ひかない」とは、よく言ったもので、風邪すら引いてません!!!
――それはそれは! いいことじゃないですか! 体調管理をしっかりされてるということですもんね!
ああ確かに!
時代の変化のおかげで!
ポジティブになった!笑
――お仕事の方は順調でしょうか?
仕事が順調かどうかって、なんか難しい質問ですね!笑
――いやいや、そこまで深く考えずに! ここのところ、舞台作品が続いているようで?
あ、そうですね。夏には「VAMP SHOW」というコメディ作品をやらせてもらって、今は「吾輩は漱石である」という作品の稽古中です。下半期は舞台の一年、って感じです!笑
――充実されているようで、なによりです。では、本日は久しぶりのインタビューということもあり、前半は現在お稽古中の舞台の話を。そして、後半では最近の平埜さんの日常の話を聞けたらなと思います。最後には定番の、「今、おすすめの本」の話なんかも聞けたらなと思います!
最後の定番って、ありましたっけ?
――あったということにしましょう!
うまく話せるか・・・、緊張しちゃう!
――はいはい。
急に冷たっ!
――では、まずは舞台「吾輩は漱石である」の話から。いよいよ11月12日から開幕ということで、お稽古はいかがでしょうか?
とっても楽しいです!
想像以上に稽古の進行速度が早くて、あっという間に通し稽古になりました。もう稽古場で何回通し稽古をやったんだろう? って感じです。
――通し稽古というのは、最初から最後までをやる、本番同様に稽古を進めるということですね?
あ、すみません! そうですそうです!
衣装やメイクはしませんが、本番同様、音楽や道具を使いながら、冒頭から最後まで流れを止めずに進める稽古のことです。
――こういう説明もしておかないとね!
失礼しました!
――では、稽古もたくさん出来ているということで、本番が待ち遠しい?
はい!
お客さんがどんな反応なのか、ものすごく気になります!
――というと?
今回は、夏目漱石を題材とした作品なので、漱石作品のキャラクターやエピソードが沢山出て来るんですよ!
それを笑いにしているというか。なので、「どこまで伝わるんだろうなあ?」とか、「どう受け取ってもらえるのか」というところに興味があるんです!
――劇作家の井上ひさしさんといえば、喜劇をお書きになる印象が強いのですが。
はい! 確かに、どれだけ重厚な作品でも必ず笑える箇所が入ってきますよね!
――今回は少し違う?
笑いの部分はいっぱいありますよ!
でも、今回は少しひねった笑いかもしれません。
例えば、ぼくの台詞に「それから?」と相手に聞く箇所があるんですけど。これは、漱石作品の『それから』を意識している。あえて、役に「それから?」と言わせていたりするんですよね!
――ひねった笑い、とはそういうことですか。なるほどなるほど! それから?
あはは。そんな感じです!
あとは、漱石作品に出てくる登場人物たちの「それから」が描かれている。
――もう「それから」が、混線していますね。どういうことでしょうか?
『坊ちゃん』のその後の人生や、『三四郎』のその後の人生も描かれているんですよ。しかも、そのエピソードを聞いていくうちに、『それから』とか『門』とか、作品を飛び越えたエピソードが混ざってくるので、想像力が爆発しちゃうと思うんです。
あれ、あれれ? その話って、色々混ざっちゃってない? っていう感じ!笑
――ほうほう。ちょうど今、私は『行人』を読み始めているのですが、『行人』の話も?
おおお! いいですね!
ぜひ探してみてください!
ぼくも今、稽古をしながらも探しています!
――なんだか、こちらの読書のモチベーションも上がりますね! 楽しみにしています!
観れるといいですね!
――・・・えっと?
(咳払い)失礼しました!
――では、話は変わり、演出の鵜山仁さんとは、今回二度目のお仕事となると思うんですが、いかがでしょうか?
大っっっ好きです!
――あら、素敵ですね!
説明が難しいのですが、ぼくはシンプルに鵜山さんの話が面白くてたまらないんです。思考回路をのぞくのが好きというか。だからダメ出しが一番楽しい!
――ダメ出しが楽しい?
ダメ出しって、学校でいうところの“採点”みたいな時間になりがちなんですよ。自分のお芝居を演出家さんにジャッジしてもらうというか。
――はああ・・・、そうなんですか。厳しい世界ですねえ。
まあ、でも、それがクリエイティブですからね!
だから、自分が出来ていないことを痛感して、そうして悩むんです。改善点を洗い出すというか。
だから、ダメ出し時間って、ちょっと空気がピリッとするんですね。
――でも、そんな時間が楽しいと?
はい! 正直、鵜山さんに限らず、ぼくは基本的にダメ出し時間が好きなんですけどね!笑
――こう言ったらなんですが・・・、ドMですね。私だったら心が折れちゃうそう。
ああ、確かに。心は強くなるかもですね! 俳優って。
――では、鵜山さんは、どう楽しいのでしょうか?
えーっとね。なんだろうね。
鵜山さんは、ダメ出しというか、言葉のイメージが膨らむような話をしてくださるんです!
――ほうほう!
例えば「校長先生!」と先生へ抗議する台詞があるんですけど、鵜山さんは「ただの“校長”というイメージより、その校長は夏目漱石でもあり、井上ひさしでもあると思うんです」と仰る。
――えーっと・・・?
あとはあとは!
「先生は僕等の生命そのものなのです」って台詞があって。その時に鵜山さんは「本心はどうなんでしょうか? これらの言葉も漱石の物語の一つという感覚があって、ボクは“作中人物”という言葉がチラチラするんですけど・・・」なんてことを仰るんですよ!
――すみません、文脈が分からなくて・・・
そうですよね、すみません。
ぼくも鵜山さんの言葉の真意を理解できているかは分かりません。笑
でも、聞いていて楽しいんですYO!
――ああ、好きそうですねぇ。
うん! そうそう!
ぼくのこと、よく分かってるじゃん!
――まあ、長い付き合いですからねえ。
もうすぐ、30年だよ。
――話、戻してもいいですか?
お願いします!!!
――確かに話を伺っている限り、“ダメ出し”という印象とは違う感じがしますね!
はい。どんどんイメージが膨らんでいって、考える幅が広がっていく。だからこそ、とんでもなく難しいんですけど。楽しいです! たまに宇宙の話とか、量子力学の話にも発展していったりもして!笑
――え、え、え?
本当に素敵な方なんですよお!
ちょー楽しいです!!!
――なんだかよく分かりませんが、楽しそうなのは、なによりです。きっと舞台も楽しくなるんでしょうね!
がんばります!
ぜひ、漱石作品を読んでから、観にきて欲しいです!
――先ほどのお話にもありましたが、漱石作品を読んでいたら、さらに舞台に奥行きを感じられそうですね!
さすが!
ぼくもそう思います!
――今回の舞台、見どころはありますか?
ぼく、この作品、かなり好きなんですよ!
こまつ座さんの作る舞台の中でも、実在した人物に焦点を当てて描く評伝劇に出るのが夢だったので!
――ひょうでんげき?
井上ひさしさんが、対称の人物について、年譜的史実を徹底的に調べ上げて、学者や専門の先生にも調べのついていない空白部分を、空想力と想像力でがばと押し広げて劇にする、という。
井上さんが作り上げた創作スタイルというか。形式というか。
――面白そうですね!
はい、ぼくは、こまつ座の評伝劇ファンなんです!笑
だから、やっぱり見どころは、「夏目漱石」になってくる。
――たしかに、そう言われると、そうなりますね!
今回は「修善寺の大患」にフォーカスが当てられているんです。
――夏目漱石が大吐血をして、一時、危篤状態になったと言われる事件のことですね?
ありがとうございます!
漱石は「30分間死んでいた」と後に語っていますが、今作は、そんな30分間の死に、《漱石はどんな夢を見ていたのか》という内容になっているんです。
――ほう、なんだか想像と違いました!
ぼくも戯曲を読んで「新しいっ!」と思いました!
――確かに、夢の中の話は資料になりませんものね!
漱石本人にしか、分からない。
いや、本人ですら、分かっていないかもしれない。
――そんな夢の世界を、井上ひさしさんが、創造したと。
面白そうでしょう?
まさに、そこが見どころですかね!
――平埜さんが演じる「金成賢吉」は、どんな役なのでしょう?
今日、なんか、長めのインタビューですね!
――久々なので、たっぷりとね!
あ、はい。がんばります!
――で、役どころは?
夢の中の舞台は、「育英館開化中学」という学校なのですが、そこに現れる“新入生”です!
人とコミュニケーションを取るのが苦手で、授業の前には早退けばかりしているという役ですかね!
――身近に感じられるキャラクターですね。
だから、いつもひょっとこのお面をつけているんですよ!笑
――ひょっとこ!?
で、この学校に来て、人生に絶望した先生方に出会って、少しずつ変化していくというか。
――先生方は人生に絶望しているんですか?
そうなんですよ!笑
みーんな人間関係などに疲れて、人生を絶望しているんです。
――これまた変わった中学校で。
ね!笑
――賢吉くんは、そんな先生方に出会って、どう変わっていくのでしょうか?
まあ、それは見てからのお楽しみということで!笑
――そうですね! たくさん、聞かせていただき、ありがとうございました!
一人二役は大変ですね!
――なんの話ですか? 舞台の話ですか?
いやいや、(咳払い)なんでもないです!
――では、舞台の話はこの辺にして、後半は平埜さん自身の話について伺っていこうと思います!
ヒョエエえ、長いインタビューだなあ!
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つづく・・・?