テナセリム地方 9

(テナセリム大型錫銭 ナーガ 追加1)

 
最近入手したテナセリム大型錫銭・ナーガのモチーフの新たなタイプです。
 
表は既存のタイプと同じですが、裏面の文字が角ばった字体であることが異なる点です。
 

Large tin unit, 57.01g/69.6mm, ref. VC (Kris Van den Cruyce)-101 var.
 
表 右向きの ナーガ。ナーガの下にシンボルやドットはない。
裏 三行にわたるビルマ文字銘
 
 
すでに保有しているタイプとの比較です。
 

 
(過去に紹介した個体ですが、VCの図録に従ってリアレンジ・補足しています。)
 
 
① 83.09g/70mm、ref. VC-100
 
表:右向きのナーガ。長い舌が口から下に垂れ下がっている。ナーガの胴体の下に6葉のロゼット(かなり摩耗している)。
裏:3行にわたるビルマ文字銘。文字は伝形で、右下3文字が右から761。




この数字がビルマ暦761年(西暦1399/1400年)を表すのであれば、当時起こった重要なイベントを記念したものと考えられる。この当時のテナセリム地域の重要イベントとして考えられるのは、①Weidi(現在のDawei/Tavoy近郊)の建設(1390年頃)、②スコタイ王国のマーハータンマラーチャーII世の逝去(1399年)、③同マーハータンマラーチャーIII世の即位(1400年)のいずれかで、スコタイ王国との関連という事であれば、当時のスコタイ領であったWeidi又はテナセリムの発行と考えられる(Kris Van den Cruyce)。

 
 
② 72.07g/68mm、ref. VC-101var.
 
このタイプのナーガはVC-100と同じスタイルであるが、ナーガの下にロゼットは無く、いくつかのパターンのドットがあるものや、何のシンボルもないもの等いくつかバラエティーがある。尚、裏面の銘はVC-100とは異なる。
 
表:右向きのナーガ。その下に4個のドット。
裏:3行にわたるビルマ文字銘。中段の真ん中の文字の形が個体によってバラエティーがある。下に示す図録の101.aと101.bの中間タイプのように思われる。

この個体は図録収載の4個体より重い。
 
 


③ 57.01g/69.6mm, ref. VC -101 var.
 
今回入手個体。裏面の銘は同じであるが、文字のスタイルが丸っこくなく角張っている。テナセリウム大型錫銭の文字銘は通常丸っこいスタイルであるが、稀に角型のスタイルも用いられている。図録未収載。
 
 
④ 67.09g/64mm、ref. VC-102
 
表:右向きのナーガ。ナーガの舌は短く、後頭部にヘルメットのような線が描かれている。
裏:不明瞭な3行にわたるビルマ文字銘。
 
VC-101と比較して作りが粗い。VC-102とVC-103は民鋳の可能性がある。
 
 
⑤ 81.69g/67mm、ref. VC-103
 
VC-102より更に作りが粗い。裏面は文字銘がない、又は殆ど判別できない。重量がVC-102より重い。
 
 
⑥ 70.67g/67mm、ref. VC-110
 
表:左向きのナーガ。
裏:不明文字銘。マレー文字(ジャウィ)に似ているが判別できない。
 
 
参考資料:
 
 
The Large Tin and Lead Coins of Lower Burma (including the Tenasserim Region) from the 14th to the 19th Century, Kris Van den Cruyce, 2023
 
 
 
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