特定の子供に自宅を相続させたい時に起こり得る例を見てまいりましょう。

 

 家族構成は、母と姉、妹です。

父親はすでに亡くなり、母親と姉夫婦が、母親名義のマンションに住んでいます。

 

 相続財産は、自宅マンションが2000万円、現金が200万円で、合計2200万円です。

 

 母親としては、姉が自分の面倒を見てくれているし、今後介護でも世話になるだろうから、姉に自宅を相続させたいと思っています。

 

 母親が亡くなった場合、法定相続人は姉と妹の2人で、財産を半分ずつ分けようとしますと、1100万円ずつとなります。

 

 何の準備もしないでいると、相続する時に、妹から法定相続分の1100万円を請求されることになるかもしれません。

 それは姉にとって払える金額ではありません。

自宅マンションを売らざるを得なくなりましょう。

 

 だからといって、自宅マンション2000万円は姉に、現金200万円は妹に、という遺言書を残されたら、妹は到底納得できないでしょう。

 

 このケースでは、どのような準備をすれば、モメずにすむでしょうか。

 この場合ですと、「代償分割」という方法をつかうと、うまく財産を分けることができます。

 これは、法定相続分以上を相続する相続人が、他の相続人に代償金を支払うという方法です。

 

 この方法を使うと、自宅マンション2000万円を姉が相続し、姉が代償金を妹に支払うことになります。

 すなわち、ここでの提案は、遺留分に相当する金額を支払うということです。

 遺留分は法定相続分の二分の一なので、550万円となります。

 

 このように代償分割にしますと、姉が自宅マンションを含めたすべての財産を相続し、姉は妹に遺留分の550万円を支払うことになります。

 

 

     平 成 30 年 6 月 23 日

          行政書士  平   野   達   夫