特定の子供に家を相続させたい場合、他の子どもには何をあげるか、そして、どうそれを納得してもらうかまでを考えておくことが必要でしょう。

 

 今は同居はしていないが、長男や長女など特定の子供に、引き継いで欲しいと思う場合は、まずは長男や長女本人が、本当のところ、「どうしたい」のかを、確認しておく必要がありましょう。

 

 もし「おやじがそう言うなら、引き継がせてもらうよ」ということになれば、そこで他の子どもたちに、どうやってそれを納得してもらうかを考えます。

最悪なのは、何もせずに勝手に決めておくことです。

 

 兄弟たちで揉めないように、長男には自宅を、次男には現金を相続させることに決めて、それを遺言書に書いて置いたとします。

 

 親の相続が開始し、いざ遺言書を開封します。

長男「え、何で俺が家なんだ!今のマンションが気に入っているんだ。家なんかいらないよ」

次男「俺は現金でいいよ!おやじがそう言ってんだから」

長男「そりゃないよ。俺だって、現金がいいよ!」

 

 せっかく遺言書を書いても、兄弟たちが独断で、分割方法を決めてしまうことになったら、何の意味がありません。

 

 親の意志が遺言書で表明されていたとしても、結局のところ争いが起きます。

不動産をどうするかについては、特に親子間のコミュニケーションが必要です。

 

 「せっかく手に入れた不動産なのだから、売らないで誰かに相続して欲しい。」

これは、一見、親の意志を示しているように見えるかも知れませんが、もはや子供に丸投げしているのと同じです。

 「売って欲しくないから、誰かに引き継いで欲しい」は、揉めることを前提にしているようなものです。

 

 このようなことを遺言書に書く方もいるようですが、最終的にどうするかは、子供たちで決めなければなりません。

 

 誰に引き継ぐかで散々揉めた結果、最終的に売ることになるケースも多いようです。

 

 子どもたちの中には、「親の希望を叶えてあげられなかった」という思いが残り、後味の悪い相続になってしまいます。

 

 本当に、自宅を売らずに残したいという気持ちがあるなら、事前に子供たちと良く相談して準備をしておかなければなりません。

 

 「誰に家を相続させるのか」「その他の子供には、何を相続させるのか」決めておくことができれば、揉めることなく自宅を引き継いでもらうこともできるでしょう。

 

 

    平 成 30 年 4 月 17 日 

         行政書士  平   野   達   夫