被相続人の父親が亡くなりました。

早速、信託銀行が遺言の執行に入ります。

被相続人が作成した「遺言書」どおりの、「遺産分割」を行おうとしました。


 しかし、被相続人の遺族は、猛反対します。

被相続人が「遺言信託」していたことすら、遺族は知りませんでした。


 そもそも、その「遺言書」の内容と、遺族の合意していた内容とに、大きな隔たりがあったのです。


 被相続人には、4人の子供がいました。

近隣に住む長男・次男と、遠くに嫁いだ長女・次女です。


 財産総額から見て、かなりの相続税もかかります。

幸い、長男も次男も仕事が順調で、ある程度のお金はあります。


 また、長女や次女は、長年、被相続人の近くに住む長男や次男が多めに相続することには、納得していました。


 そもそも、遠くに嫁いでいる長女や次女にとっては、実家の近くの不動産をもらっても、逆に困ります。


 そこで相続人である4人の子供たちは、「不動産は、すべて、長男と次男で相続する」、「長女と次女で、現金を相続する」、 さらに、「その代償交付金として、長男と次男から相当の金額を、長女と次女に渡す」というかたちでの合意がなされていました。


 ところが、相続が発生し信託銀行が行おうとしたこと、すなわち、被相続人の「遺言書」に記載してあったことは、「自宅は長男、近隣のマンションは次男、駐車場は長女・・・・」というように、不動産を4人の子供に分ける内容でした。


 被相続人である父親は、「4人がなるべく平等に」ということしか考えていなかったのです。


 それが、被相続人である父親が、「公平で紛糾しない」分け方と考えていました。


 信託銀行から紹介された税理士の先生が行った試算を基に、「4等分に近い」分割案を考えました。

それをそのまま、「遺言書」に記載しただけだったのです。


 信託銀行は、遺言を執行するのが仕事です。

遺族がそれに異を唱えたことで、信託銀行とは、弁護士を立てるほどの争いとなってしまいました。


 最終的には、なんとか話し合って、この「遺産分割」は、4人の遺族の合意どおりに行うことで落ち着いたようです。


 ただ、弁護士先生への報酬は、被相続人の4人の遺族が負担します。

また、信託銀行から紹介された司法書士の先生には、「不動産の名義変更、預貯金の名義変更」をしてもらい、ここでも、報酬が発生しました。


 さらに、信託銀行には、「遺言執行報酬」を、規定どおりに支払うことになりました。

「相続財産の1%」という規定があります。

大変なことです!


 被相続人の遺産総額は相当な額であったことから、この「遺言執行報酬」は、かなりの額になってしまいました。

信託銀行は、それはそれは、しっかりと収めてしまいます。


 このように、この「遺言信託」が、後に、大きなトラブルのもとになりました。

時間を浪費させただけなのに、これだけの報酬を払うということは、どうにも納得いかないところでしょう。


 いかがでしょうか。

あなたは、納得できますか・・・・。



      行政書士 平 野 達 夫


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