昨今、雇用や景気の先行きが、全く不透明であり、ますます国民は懸念するところであります。

世の社会では、将来に対しの漠然とした不安感のみが、より広がってきているようにも思われます。


そうした中で、相続財産にこだわる人たちが増えてきているのは、ある意味では当然とも言えることかも知れません。


相続開始の際、「権利」を強引にも主張することによって、少しでも財産が多く得られるとすれば、他の相続人への思いやりより、財産に対する「執着心」の方が優るという受けとめが、自然と出てまいります。


「少しでも多く」とは、実に厄介な捉え方と言えます。

親族の中でも、案外このような受けとめ方をする人も、多いのではないでしょうか。


また、急速な少子・高齢化の進行に伴い、最近では高齢者の独立志向が高まっているとも言えます。


すなわち、高齢者の単独世帯や、夫婦のみの世帯が増加してきております。

この結果、高齢者の財産に対する意識にも変化が表れています。


従来、圧倒的に多かった「子孫のために残す」という考え方は、明らかに減少しています。

反対に、「自分自身の老後のために活用したい」という考え方をする人が、増えてきているのも事実です。


今後、団塊の世代が60代後半を進むにつれて、この傾向は、より鮮明になることが予想されます。

これが相続のあり方にどう作用するかは、未だはっきりしません。


「財産を残さない親」の老後の面倒を、一体誰が看るのでしょうか。

相続人達の心は、大きく揺れ動くことになりましょう。


     行政書士  平 野 達 夫