遺言の方式は、いずれも法律で定められています。
普通の場合の方式には、「自筆証書遺言」、「秘密証書遺言」、及び「公正証書遺言」の3つがあります。
その他に、特別の方式として、「危急時の遺言」と「隔絶時の遺言」があります。
「自筆証書遺言」
遺言者自身が、遺言する内容を全て自筆します。
最後に日付、氏名を自署した上で、押印します。
遺言書の加除、訂正についても、厳格に定められています。
間違えた部分を二重線で消し、その脇に正しい文字を書きます。
訂正した箇所に、署名の際に押したと同じ印鑑で、押印します。
更に、余白に、どの部分を訂正・加除したかを付記し署名します。
証書の形式には、制限がありません。
遺言者の手紙の形式でもよく、用語の制限もありません。
ただ、鉛筆の使用は、不可です。
また、遺言者が口述して、他人に筆記させることは、「遺言者の自書」に該当しません。
パソコンで作成したもの、コピー等の複写、録音テープ等も、不可です。
「氏名の自書」は、本人の自書なら、戸籍の氏名に限らず、通称、雅号、ペンネーム、芸名、屋号でもよいとしています。
日付は、「年、月、日」までの記載を要するとありますが、「還暦の日」、「80歳の誕生日」は、歴日が特定されていますので、有効とされます。
押印は、実印が好ましいですが、認印でもよいとします。
また、本人が直接押印しなくてもよいとします。
なお、遺言者が成年被後見人で、事理弁識能力を一時回復した時にする遺言には、医師2名以上の立会いのうえ、その旨を付記するなどの特別の規定があります。
「自筆証書遺言」は、遺言者が自身で自筆するという点では意味がありますが、遺言書の紛失等のおそれがあります。
すなわち、方式の不備によって、無効となってしまうことが、しばしば出てまいります。
遺言書の保管者や発見者は、遺言者の死亡を知った後、遅滞なく、家庭裁判所に遺言書を提出して、その「検認」の手続を受けなければなりません。
遺言書の提出を怠ったり、封印のある遺言書を勝手に開封することは、もちろん、禁じられます。
過料の制裁を受け、処罰を受けることにもなります。
行政書士 平 野 達 夫