[相続の放棄]とは、自己のために開始した相続の効力を消滅させる「意思表示」とも云えます。
地方の農村では、家を守るために、長男など、特定の相続人に単独相続させる目的から、他の相続人からの相続の放棄がとられます。
都会などでは、特定の相続人に遺産を集中させる目的から、相続放棄があります。
また、最近は、債務超過の相続を免れるために、相続放棄を考えます。
この相続の放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から、3ヶ月以内に、被相続人の住所地の家庭裁判所へ申述する方法がとられます。
なお、契約による相続放棄は、無効とされています。
「法定相続分」の算定に当たっては、、放棄者を除く他の相続人について、民法900条に従がい各人の相続分を計算することになります。
例えば、夫が死亡して相続が開始した場合を考えます。
被相続人の夫に、夫婦間のみならず、他にも子がなく、妻と夫の両親、両親を同じくする夫の兄弟があるときを考えてみます。
この場合の相続は、第一順位の相続人である妻と、第二順位の夫の両親によって開始されます。
この相続分は、妻が3分の2、直系尊属の両親が3分の1となります。
両親が相続放棄すると、相続は、妻と第3順位の夫の兄弟によって、相続が開始します。
この場合の相続分は、妻が4分の3、兄弟が合わせて4分の1です。
また、半血の兄弟は、全血の兄弟の半分となります。
ただ、相続を放棄した者の子は、相続人とはなれません。
すなわち、相続を放棄した場合は、その者の子には、「代襲相続」が発生しません。
行政書士 平 野 達 夫